14 事件の真相・中・回想後
「つまり、君は光昭という男性に惚れていて──庇おうとしているわけか」
と先程までエリカが話していた内容を一纏めにした後、一言で一蹴した。庇おうとした、と言う言葉にエリカはなつを睨み付け、大きく舌打ちを鳴らした。
「うん? 何か文句でも」
と言うと、エリカは「大ありよ」と間髪入れずに話した。
「あの人に惚れたからなんだっての? 別に私が誰を好きになるかなんて自由じゃないの」
「ああそうだ。自由だ」
「ほらやっぱり。どうせ彼のことを悪者扱いにする証拠なんて……」
「いや、それがあるんですよ。エリカさん」
と、なつは落ち着いた声で目の前の女性に話しかけた。エリカは彼女に鋭い目つきで一瞥して、「……ある?」と苛立ちを込めて言葉を吐いた。
「ありますとも。──美桜」
そう言うと、「はいはい、言わなくても出しますよ」と言わんばかりの態度で美桜はテーブルの上に一枚の写真を置いた。そこに写っていたのはどこかの家族写真らしく、そこには両親と一人の子どもが写っていた。その子どもの姿に波岩や夕海はどこか見覚えがあるらしく、首を傾げていた。
「その写真……私の家族写真じゃない。どうしてこんなところにあるのよ」
「それは今から説明することに必要だからだ。──入ってきて良いぞ」
となつはドアの方向へ声をかける。まるでその場にスローモーションがかかったかのようにドアがゆっくりと開き始めると、そこから顔を出したのは波岩にとって見覚えのある女性だった。
「……エリさん⁉」
と声を挙げる。
「知り合い……なんですか?」
と夕海が波岩に尋ねると、彼は「ええ」と頷いた。
「僕たちの依頼人です。彼女が最初に依頼してきたことで、この事件に関わるようになったんです。……ですが、なんでこんなところに?」
と波岩はなつに尋ねる。が、彼女は「少しぐらい考えろよ」と乱暴に言葉を吐いた。その悪態に思わず苛ついてしまった波岩だったが、出かかっていた悪口を引っ込めて「……入れ替わりですか」と言った。
「ああ。私たちに依頼してきた人こそが、〝エリカ〟という女性で、今私たちの目の前に座っている人間こそが──〝エリ〟という女性だからな」