11 事件の真相・前
「話って何でしょう」
エリカは四人──なつ、波岩、夕海、美桜と対面するように椅子に腰掛け、少し首を傾げて話し出した。「この人から直接話したいことがあるんですよ」と波岩は左隣に座っていた黒い服に纏われた女性──羽賀野なつを横目で一瞥した。
今から二時間前のこと。
事務所を後にしたなつと波岩、そして夕海の三人はエリカが勤務しているというひめゆり園に向かった。道中、夕海の運転する車の助手席に美桜が乗り込む形となり、結果的に四人でひめゆり園に向かうことになった。
が、美桜の発する質問──犯人は誰なのか、またはどうしてその人が犯人なのかという当たり前のような質問をなつに向けたものの、波岩の思う秘密主義者である、彼女の性格が表われ、自らの口から説明することがなかった。
しかしながら──波岩はなつがこれから話すことは大体予想していた。
まず、この事件は単純のようで単純ではないこと。このことについてはなつも指摘していたが、犯人が一つの動機を持って被害者を殺害したという単純であり──ありきたりな事件ではないことだ。彼女の言うヒントを辿れば──普通はそう思うはずである。
また、エリという女性がなぜ波岩やなつの元に訪れて依頼をしたなのかが不明である。恐らく実力を測るためだろうと──波岩は半分考えているが、もう半分はどうしてだろうと考えていた。
そんなことを考えているうちに、正面に居る端正で綺麗な女性が口を開いた。オッドアイの目をキョロキョロとさせており、落ち着かない様子だった。
「……私の姉のことですか」
「その通りだ」
低い声でなつが話す。胸の前で腕を組んでいた。
「……やっぱり」
「やっぱり?」
となつが首を傾げる。あたかも先を読まれている感覚だったのか──それともわざとだったのか、は分からないが、彼女は目をきょとんとさせて話の続きを促した。
「姉──もう知ってるかも知れませんけどエリという女性で──、その姉が被害者……私の恋人を殺したんでしょ? その件で話を訊きに来たんでしょ」
と少し目を血走らせてエリは話す。
「ああ。いかにもそうだが」
「……そうなんですね」
「まあ、それも重要だが──次に話すことがどっちかというと重要かな」
「へ?」
とエリカがきょとんとさせた。なつは一息つき、薄い唇を舌で舐めてから口を開いた。
「お前──入れ替わってるな?」