10 不穏
「ねぇ、本当にこれで良いの?」
開口一番、エリカがエリに対し発した言葉は疑問口調の言葉だった。その言葉はまるで戸惑いながらも犯罪の共犯を行った人物のように思えた。目の前のエリはそんな彼女に対し、顔の目の前で手を振った。
「良いのよ。あいつを──光昭を殺すことが出来れば」
被害者のことを憎たらしいと思うような口調でエリは話す。
だが、エリカは何か不満げに頬を少し膨らませた。
「なんだ、何か不満でもあるの?」
と咥えていた煙草を手に取った。
「なんだって……。確かに、あの人を葬ったことでお姉さんは満足かもしれないけど……私としてはあの人と恋人関係だったのよ。お姉さんが葬ったところで……」
「で、それが?」
「何かって言われても……」
口籠もるエリカを横目で見ながら、エリは口元の煙草に火を付けた。小さく息を吐いた後、エリは「……そりゃそうだけど」と呟いた。
「だけどね、そのうちあんたも私みたいな末路を辿るかも知れないのよ。だったら今のうちに始末した方が良いじゃない」
「始末……始末か……」
自ら貶むかのようにエリカは笑みを浮かべていると、その様相を見ていたエリはその場を立ち上がった。彼女のすぐ傍に立ち、耳打ちをするかのように小声で言った。
「あと一つ言っておくけど──私たち、本当の家族じゃないからね?」
その言葉に──エリカは目を大きく見開き、握り拳を右手に作った。