#81「感動の再会です」
タニブ公園で話し合っていたカオリとスダチ。もうすっかり打ち解けて誰が見ても親子だ。
そのうちお腹が空腹を訴えるのだった。
お互い顔を見合わせ、笑い声を上げた。二人はベンチから立ち上がる。
「あはは、夕飯にしようか。帰ろう、カオリ」
「うん。ポラリス先生にコテンパンにされて腹ペコだよ」
公園の出入り口まで2人は歩き出した。
「それに、お友達も待たせてるし」
「そうね。帰ろうみんな〜!」
スダチは生垣の方に目をやる。カオリも生垣に隠れたぐらたんたちに目を向け、声をかけるのだった。
ひょっこり頭を出したぐらたんたちには涙が浮かんでおり、カオリはビクッとする。
「みんな〜、そんなとこに隠れて気を使わなくても」
「だって、カオリちゃん・・・」「良かったギャン! ホントに」
カオリはみんなの所へ駆けていくのをスダチは微笑みながら見守るのだった。
しかし、
「カオリッ、危ないっ!」
スダチは血相を変え、目にも止まらぬ速さでカオリを突き飛ばした。
暗闇の中から真紅の三日月が鈍く閃いたのをみんなは見逃さなかった。しかし、一瞬の出来事で見ていることしかできなかった。
「がはっ」
「お父さんっ!」
赤い刃はカオリを庇ったスダチの背中を斬り裂く。彼はそのままうつ伏せに倒れた。
「お父さんっっ! そんなっ! しっかりして!!」
すぐさまカオリは倒れた父の元に駆け寄り、肩を揺するが彼は全く反応しない。
涙が溢れて視界が歪む。彼の背中を見ると右肩からから左腰にかけてバッサリと斬られているが分かる。
しかし、これは刃傷ではない。
「なんなの、これ・・・」
刃傷の様なものは、何か渦巻く様に蠢いている。そしてその傷口から白いモヤの様なものが浮かび上がると傷は閉じていってしまった。
ぐらたん達がカオリの傍に駆けつけたものの、ぐらたんはカオリの様子に動揺して動けずにいた。ネビロスは動き回る白い火の玉を目で追う。
「魂!? ま、まさか・・・」
彼には誰の仕業か察していた。
魂の動きが止まり、その場で漂いだしたところをネビロスが回収に向かったが、再び赤い三日月が閃いたことで魂の回収は阻害された。
赤い三日月の正体はもちろん死神を象徴する大鎌だ。しかし使い物にならないくらい赤錆で覆われている。
不気味に浮かぶ大鎌の後ろから、ぼんやりと深紅の装束で身を包んだ死神が現れた。
「おやおや、いけませんね〜。これは予想外の事故です」
真紅の死神はフードを深く被って素性が見えない。特徴的なのは三角耳が隠れているようにフードから二つ盛り上がりがある。
そして脚はないのか、赤い外套が浮遊している様に見える。
死神は左手でスダチの魂を捕まえていた。
その姿をよく知っていたカオリは体と声を震わせる。
「あなたは、まさか、まさかそんな・・・ルビィー・ホーン! どうして!? あの時、私が・・・」
幼い頃、初めてイヌガミカンに変身して彼女と戦った時の記憶がカオリの頭の中でフラッシュバックする。
あの時、確かにカオリはこの手でルビィー・ホーンという死神を倒したのだ。
倒したはずの死神が目の前に現れたことで、カオリは目を見開いて取り乱す。
「ルビィー・ホーンだとっ!?」
彼女が口ずさんだ名にネビロスは驚愕する。
名を呼ばれた死神は不気味に笑い声を上げた。
「クククッ、覚えてくれて嬉しいですよ、カオリ。感動の再会です。貴方に付けられた傷が忘れられません。見てくださいよ」
ギザギザの歯がのぞく真っ赤で大きな口を吊り上げながら、外套を大きく広げる。中にベストが露わになるが、その上には左肩から右脇腹にかけて大きな刀傷があった。
腰から下は赤黒い炎が蛇の尾の様に揺らめいている。
「貴方に斬られた霊体が元通りになりません!」
痛ましい姿に成り果てた亡霊を目にし、カオリは恐怖で縮こまる。
自分でやったのが信じられないくらいだが、どうして無事なのか理解出来ない。
「どうして・・・」
外套を閉じ、ルビィーは話を続ける。
「おや、お忘れですか? 私の霊体を傷つけたのは貴方が初めてです。あの時の借りを返したくて熱烈な挨拶をしたのですが、彼に邪魔されて無駄になってしまいました。実に残念です。とんだ誤算でしたよ。これは愛と言うべきなのでしょう。彼には敬意を払います」
カオリによって膝の上で仰向けに寝かされた彼を一瞥した後、掴んだ魂を見せびらかす様に掲げた。
「スダチさんの魂をどうする気だ!?」
睨みながら問いかけたネビロスに、ルビィーは反応してフードから赤い眼光を覗かせる。
「おや? 貴方が蘇った罪深き魂ですね。お会いできて光栄です。貴方を狩りたいくらいに・・・。残念ながらクライアントからは殺さず連れてこいと言われてるのでね」
そして彼女は掲げた魂を見つめる。
「無駄に刈り取ってしまった彼が可哀想なので・・・そうだ! 取引しましょうッ! 彼の魂を返す代わりに、ぬいぐるみ少年を頂きましょう!」
「何だとっ!?」
彼の魂を奪った挙句、交換に持ち出す卑劣な行為。ぐらたんから一気に熱い感情が吹き出す。
「ふざけたことをっ! 誰がネビロス様をキサマなんかにっ! 命を弄ぶなっ!!」
ぐらたんは吠える様に声を上げると、イヌガミギアを取り出した。続いてアギャンもイヌガミギアを手に身構える。
「ふふふっ、貴方などには聞いていません。・・・カオリ、どうしますか?」
カオリは俯いたまま、肩を振るわせ返事をする。
「・・・ワケないよ。出来るワケないよ。ネビロス君も・・・大切な友達なんだから」
彼女の回答に残念そうな表情を浮かべ、首を横に振る深紅の死神。
「おやおや、欲張りですね。非常に残念です。でも、私は気が長いのでね、考える猶予を与えましょう! この公園の森の奥にワタノの人たちが建てた誰かの神社があります。もう使われてないでしょうが・・・。そこで待ちますので気が変わりましたら、カオリだけでその少年を連れて来てください。彼の魂と交換です♪ もし、条件に合わなければ彼の魂はあの世に行くことになりますよ。クククッ」
死神の体が崩れ、赤い炎となって消えていく。
「ま、待てっ!!」
「おっと、このまま立ち去るのも、失礼なので・・・」
ルビィーは大鎌を背中に背負い、懐から紫色の結晶体を取り出した。
「お出でなさい、アクムーンビースト!」
結晶から赤黒い炎が激しく渦巻くと、猫の様な巨大な四足獣が形作られて行く。
燃えて揺らめく巨体が、ぐらたん達に立ち塞がった。
「クククッ、良いご決断を期待してますよ。私はこれにて・・・あははははははっ!!」
笑い声を残し、ルビィーはこの場から姿を消した。
「くっ、邪魔だっ!」
ぐらたんは怒りを顕にし、目の前のビーストを睨みつける。
「イヤ・・・お父さん・・・目を開けて! お願い・・・」
倒れたスダチを見れば、カオリは泣きじゃくりながら彼に声をかけ続けている。
血が滲み出るかも知れないくらい、歯を強く噛み締めるぐらたん。
今のカオリちゃんでは・・・無理も、ない。
「アギャン! 私たちだけでもスダチさんの魂を取り返すよ!! ネビロス様達はスダチさんをお願い!」
「承知!」 「分かった、任せろ」
「「イヌガミライズ! マジカル」」
「イヌガミント!」「イヌガミルク!」
変身した2人は、燃え盛る猫のビーストに飛びかかって行った。
カオリ達に近づけさせないため、ミントエスカッションでビーストが放つ火柱を防ぎつつ、ミルクがブラスターで牽制して距離を離す。
犬神少女の戦いが始まる中、ネビロスはスダチの首筋に触れる。ビーストが発する火の光に、彼の額に汗がちらつくものの、彼は異常なほど冷静だった。
「ネビロス君・・・」
「大丈夫だ、カオリ。まだスダチさんは死んでいない」
「でも魂が・・・」
「確かに奴に奪われてしまったが、魂と肉体ってのはそう簡単に切り離せるものではない。離れてはいても見えない糸で繋がっているんだ。幸いなことに致命的な外傷はない。魂は抜けてしまっても、肉体はまだ生きている状態・・・簡単に言うと幽体離脱してる状態だ」
ネビロスはカオリの手を取り、スダチの胸に手を当てさせた。
彼には体温が残っており、鼓動が伝わる。
「そ、それじゃあ、冥界に連れてかれてしまったら」
その時、流れ弾としてビーストが放った火柱が近くに立ち昇る。
一瞬怯むが、構わずネビロスは答えた。
「ッ・・・それこそ絶対阻止だ! だけど、彼女に限ってそれはあり得ない。元死神ルビィー・ホーンは冥界全体で指名手配されてる悪霊だ。彼女がスダチさんをあの世に送るのなら、あいつ自身御用になってしまうからな」
スダチの口元に耳を当てるネビロスは、すぐさま起き上がり深刻そうな顔する。
敵の赤い炎に照らされて分かり辛かったが、彼の顔は少し紫がかり始めていた。
「呼吸が止まってる!? マズい、肉体が死んでしまっては取り返しが付かなくなる」
「そんな・・・」「あ、あわわ・・・」
彼の容態が悪化したことで、カオリは更に動揺する。傍でウンギャンは心配そうに見守ることしかできなかった。
ネビロスはやどりんに呼びかける。
「やどりん!」
「あいよ、チョイっと失礼するぜ」
やどりんは速やかにスダチの左肩に飛びつくと、手足から伸ばした根っ子を彼の衣服の袖口や襟口に潜り込ませた。
「強引だが、無理矢理でも呼吸させないとな。今の所大丈夫だが長丁場も想定して、点滴の用意もしてある」
「流石やどりんだ」
「神経接続完了! これで呼吸出来るはず」
やどりんに合わせて、スダチは勝手に呼吸を開始し始める。
苦戦しているのか、ミントたちの戦闘は未だ継続している。
気づけば公園の数ヶ所で火の手が上がっていた。スダチが煙を吸わないか不安になりながらもやどりんは彼女達の戦いを見守るのであった。
☆☆☆
「ミルキーマグナム!」
ブラスターの光弾がビーストを射抜く。
しかし手応えがないかの様に、風穴はすぐさま閉じてしまう。
「こ、これはっ!?」
まるで実体がない。さっきから攻撃を当ててきたがダメージを負っている気さえしない。
ビーストが前足を叩き下ろすと、火柱が連なる様に地面を走りミルクへ駆け巡る。
「うわっ!?」
すぐさまサイドステップして、ブラスターを発砲するが手応えは同じだ。
覚えのある敵にミルクは後退してビーストの攻撃を避ける。
一方、ミントはすかさず炎の様に揺らめくビーストに立ち向かって行った。
「ミント!?」
相手の攻撃を掻い潜りミントスラッシュで斬りかかる。
「クソっ・・・邪魔をするな! どけろっ!!」
目の前にいるビーストを突破して、彼の魂を奪って行ったルビィーを追いかけたいが、切り裂いても切り裂いても不規則に変形して再び前に躍り出てくる。ダメージを与えれば敵は直ぐに再生するのは知っての通りだが、いつもと違い彼女の戦いは余りにも無謀であった。
「ミント、一旦退がるギャン! ただのアクムーンだけど、コイツは普通じゃないっ!」
「退がる? カオリちゃんのお父様がこの先にいるんだぞ!! 後ろにはカオリちゃんたちだって・・・、イヌガミック・ドライブ!」
ビーストの放った火柱を正面から受けたミント。その火炎を引き裂く様に光輝く竜巻が噴き出した。
「ミント・リフレッシュ・トルネード!」
ビーストは竜巻に飲まれ一瞬にしてかき消された。
煙を上げながら煤で汚れたミントは膝をつく。
「はぁはぁ・・・手間を取らせやがって」
「ミント、大丈夫ギャン?」
ミルクはミントに駆け寄って肩を貸そうとしたが、その前に彼女は自力で立ち上がって前進し始める。
「大した事はない。所詮はただのアクムーンだ。先を急ごう」
「無茶な!」
「無茶でもっ!!」
止めようとするミルクに苛立ち怒鳴るが、強烈な炎が突如背後から襲いかかった。
それをミントエスカッションで咄嗟に防いだミント。
後ろには倒した筈のビーストが居たのだった。
「くっ、なんでっ!」
ミントとミルクは構えるが、ビーストは2人に目も暮れず、振り返って後ろへ走って行った。
「あっ!」「しまった!!」
その先にはカオリ達がいる。
急いで後を追いかけるが、走り去るビーストが尻尾で地面を打ち付けると炎の壁が噴き出し、追いかける2人を阻む。
「カオリちゃんっ!!」「カオリ〜っ!!」
距離を離したつもりが逆にこちらが離されてしまった。
今のミントにはそんな思考も出来ず無力な自分に怒りを感じては、涙が滲み出るだけだった。
燃え盛る四足獣のビーストはカオリ達の前に躍り出ると、前脚を振り上げる。
「くっ・・・」「やばっ」
なすすべなく、みんな覆い被さる様にスダチを守る。
「お父さん・・・!」
ビーストは容赦なく、前脚を振り下ろしてカオリ達を焼き尽くそうとしたその刹那——
「全く、このザマですか」
落ち着いた少女の声がハッキリと聞こえた。
そして同時に宙に舞い上がったのはビーストが振り下ろした前脚だった。
顔を天に向けたビーストに悲鳴の咆哮を上げさせる暇も与えず、何者かが飛び出して燃えて揺らめく顔に蹴りを入れるのだった。
巨体が嘘の様に吹き飛び地面を2、3回転がっていった。
「大人しくムショで寝ている暇もありませんね。今回だけですよ」
カオリ達の前に降り立った少女。
光の剣を手にした狐のシスターの後ろ姿に、真っ先に気づいたネビロスは頭を上げる。
「先生っ!!」
「ポラリス先生・・・、どうして?」
ネビロスに続き、目の前にシスターがいる事に信じられなかったカオリは思わず声を漏らした。やどりんも仰天して彼女に声をかける。
「・・・捕まったんじゃないのか?」
「助けに来たのにその反応は心外です。あんな檻如きで私を束縛する事は・・・」
再び襲いかかったビーストがポラリスに喰らいつこうとしたが、彼女はクルッとスピンしてビーストの顔を斬りつけた。
「出来ません」
「じゃあ、脱獄したってのか!?」
「まさか・・・更に騒ぎを起こしてどうするのです。ちゃんと然るべき方法で解決しましたよ・・・それは」
ビーストの形は崩れ、もがき苦しむ様に激しく燃え上がる炎を背後にポラリスは血を払う様に剣を振るった。
「お金の力です!」
ドヤ顔で言われてもと言わんほど呆れた顔でやどりんは黙り込む。
「どうせモースキーさんのお金でしょ・・・」
ネビロスは軽くため息をついた。
すると、
「まだ解決してません。保釈金なのですから、裁判は受けてもらいます」
虎の女警が駆けつけて来た。
「レナ巡査!?」
「また貴方達ですか? このボヤ騒ぎは」
いつの間にか、消防車とパトカーが公園の前に停まっていた。後から獣人の消防士達がホースを引きずり消化作業を開始した。
「離れてください! アクムーンがまだ」
詰め寄る巡査に説明する暇も無くネビロスは警官や消防隊に警告するが、前方に激しい炎が上がり、四足獣の形を成していく。
「あれが、アクムーンビーストかっ!?」
ビーストを目の当たりにした警官や消防隊達は身構える。
しかし、放水に怖気付いたのかビーストは向かってくる事なく、森の奥へと消えて行った。
消火活動により火の手が収まって来ると、ミントとミルクの姿があった。2人とも無事だが揉めている様子。
「離せ、ミルク!」
「ダメです、お嬢様! 迂闊です!」
ミントはミルクの手を振り解いて単独で追いかけようとしたが、ポラリスが呼び止める。
「お待ちなさい、ぐらたん!」
「何を待つの!? 今直ぐ追いかけないと!! っ!?」
ポラリスが投擲した光の剣がミントのナースキャップに突き刺さる。
「いいから待つのです」
光の剣はナースキャップを串刺しにしたまま、後ろにあった木に刺さった。
流石に肝を冷やしたのか、大人しくその場で佇むミント。
「少しは頭を冷やしなさい! 相手のペースに飲まれているのが気づかないのですか? 冷静さを欠いては勝てる敵も勝てません」
彼女の説教に何も言い返せない。隣にいたミルクを見ると彼女は心配そうな顔をしており、周囲を見渡せば公園の広場は所々焦げ跡が残っていた。消火作業はほぼ済んでおり焦げ臭い煙が静かに立ち昇る。
広場の中心にはカオリ達と目覚めないままのスダチが目に入り、ミントは力なく俯いてやるせない気持ちになった。
無闇に追うのは彼女でもナンセンスだと気づき、ミルクと共にみんなの元へと戻ることにした。
ポラリスはカオリの方に向き直る。
「さて、カオリ。お辛い所ですが、しっかりしなさい。みんな彼の為に最善を尽くしているのですよ。貴方も彼の事が大切なら、やる事は決まってますよね?」
怖い・・・。
「怖いよ、私はもう・・・戦えない」
あの時ハルキを守るのに精一杯だった。
彼女のせいで傷ついた友達も沢山いた。彼女に憑りつかれた子を傷つけてしまった。騙し、騙され合い傷つけ合った。幽霊が怖い・・・怖い。
孤独だった・・・。耳と尻尾を隠す必要があった。ハッカタウンにはもう居られなかった。
「私が戦えば・・・誰かが傷つく、傷付けてしまう。相手はルビィー・ホーンなんだ! 関係ない人を利用して傷つけ合う! ぐらたんやみんな、先生だってきっと。幽霊が怖いよ・・・」
「カオリちゃん・・・」
感情を吐き出すように泣き崩れるカオリ。ミントやミルク、みんなが彼女のことを案じて静かに見守る。
ポラリスはかがみこむと、カオリを抱きしめ優しく声をかけ続ける。
「大丈夫ですよ。幽霊如きが私に敵うとでも? 例え同士討ちになっても誰も貴方を恨みません。あなたは一人じゃありません。それに貴方は一度あの死に損ないの下衆に勝っているのでしょう? 負ける気はしないです。貴方なら大丈夫。泣き虫ですが、決して諦めない強い根性があるのです。スダチに似て」
ポラリスはカオリから離れて立ち上がると優しく微笑み、手を差し出した。
カオリは眠るスダチの顔を見つめる。
父は魂が無い状態でも生き続けようとしている。みんな父を助ける為に頑張っている。私はどう?
誰かが傷つくのはもう見たくない。・・・だけど、このままじゃ誰かがまた傷つく。もう見たくないから、私は――。
もう逃げない、今度こそ過去に決着をつけるんだ!
彼女は答える様にポラリスの手を取って立ち上がった。
「はい、先生。みんなゴメン・・・ありがとう。 今度こそ、決着をつけたい! みんな力を貸して」
涙こそ流れるが、カオリのオレンジの瞳は燃える太陽。彼女の中に恐怖と悲しみは涙と共に蒸発し、闘志がプロミネンスの如く湧き上がるのだった。
「もちろんだよ、カオリちゃん!」
「援護は任せるギャン!」
ミントとミルクは微笑みながら頷いた。カオリは2人の目を合わせると、イヌガミギアを被った。
「イヌガミライズ! マジカル・イヌガミカン!!」




