#48「無闇に触らないでって言ったのにーーー!」
遺跡の入り口でやどりんはネネからの連絡を受け、犬神少女の力場からミントたちの行方を探っていた。
・・・しかし、ネビロスはどうやって探す!?
ネビロスへ通信を入れるが全くつながらない。
「ネビロス・・・無事でいてくれよ・・・」
「お嬢様のほうは?」
横でウンギャンが聞く。
ミントへ捜索対象を変え、ミントの神通力場を探るが・・・
「ん??」
一瞬だが神通力場を感知した。
「どうしたギャン?」
ミントのではない。初めて見る波形パターンを観測し、やどりんは目を疑った。
「いや、ただの誤作動か・・・。くそっ、ぐらたんのヤツ、変身解きやがった。これじゃあアイツを追えん!」
「では某も捜索に」
「やむを得んな。頼んだぜ」
MMMランチャを担いだウンギャンは遺跡に入ろうとするが、後ろで誰かの気配がしたため立ち止まる。
やどりんも反応して振り返る。
「何やつ!!」「誰だ!?」
誰かが茂みをかき分けこちらにやってくる。
ウンギャンはランチャーを構え、茂みの方を警戒した。
「牽制でいい。一発お見舞いしてやれ」
モノクルゲイザーで表示される生体反応。そして敵の接近を知らせる警告がうるさいほどに照準の下部で点滅する。
ウンギャンに緊張が走る。
☆☆☆
上を目指して薄暗い遺跡を進むぐらたんと船虫。
培養管が並んでいるばかりで似たようなフロアをなん度も通った気がする。
ぐらたんは変身を解いて魔力解放をしていた。
ミントギアが壊れてしまうのと、なぜかこの遺跡、いや、何かの施設がぐらたんの魔力に反応して動くからである。
扉に手をかざすと、自動的に扉が左右に開いていった。
「ひひひ! オメーがいてくれて助かったぜ。しかし、すげーな! 一体何の施設だったんだが・・・」
開いたフロアへ船虫はキョロキョロあたりを見回す。扉は一つだけの密室だ。ぐらたんも入ってきたところで自動的に扉が閉じた。
「見た感じ旧魔界連合が建てたものだと思う。あの魔獣が本当にキマイラだとすると、キマイラ研究所ということか」
「ふぅ~ん」
「しかし行き止まりか~・・・。戻ろう」
「へいへい・・・」
船虫は壁に手をかけて、再び扉に近づこうとしたその時、扉の上のランプが赤く点灯した。
「うおっ!? なんだ!?」
「今度は何!?」
ぐらたんは手を扉にかざすが開かない。扉はロックされてしまった。
船虫は首を傾げて答えるが、
「いや、何も・・・はっ!!?」
壁に触れた手を見つめて何か思い当たることがあったようだ。
「・・・。ヤベー・・・・・・何かしたかも」
さっき壁に触れた時、触れた部分が押し込まれた感じがしたのだった。
「えええーーーー!!?」
ぐらたんが叫び声を上げた瞬間アナウンスが流れた。
『耐久訓練プログラムを開始します。被験体以外は直ちに退避してください』
「ロックした後に!! 退避させる気ねーだろ!!」
船虫は扉を蹴りながらアナウンスにツッコミを入れる。それどころではない!
「もーー!! 無闇に触らないでって言ったのにーーー! 虫め!!」
『第一試験、耐寒テストを始めます。-70度』
「「何だって!!?」」
二人が喚く中、フロア内は急激に温度が下がっていく。猛烈なブリザードがフロアに吹き荒れぐらたんたちの体温を奪っていく。
「ひーーー!! 寒い寒い寒い、さぶいーーー!! あたしゃ寒いのはダメなんだ!!」
船虫は体を震わせ、ぐらたんにピッタリ抱きつく。
「わふあーーー!! やめろ! くっつくな! オマエのせいだろおーーー!! ブルブルブル・・・」
「いい~じゃねーか! こうしねーと凍え死ぬ!!」
「そうしてもこごえ死ぬ!!」
ぐらたんも震えながら船虫に抱きく。お互い密着するしかなかった。お互いの吐息が真っ白なる。
くっそーー!! せめてネビロス様だったら!!
このままじゃ・・・
「船虫! 異空間ゲートを開く札だ!」
「よし来た!」
船虫は懐を探るが・・・
「ない! ヤベー! あの時・・・流されちまったか!? アクムーンならあった・・・」
気まずい表情をしながら、船虫が取り出したのはアクムーンの結晶体だ。どうしようもない。
「えーーーー!!?」
だめだ・・・
視界がぼやけてきた。
力が抜けてぐったりして船虫に体重がかかる。
「おおおい! バカ! 寝るな!! 起きろ~起きろ~! 起きやがれ~!」
船虫は両手でぐらたんのほっぺたをサンドしてぷにぷにしたり、垂れ耳をふわふわと触り出しては、大声で呼びかける。
誰が・・・!!?
ぐらたんは意識が朦朧としながらも、両腕を上げる。ほっぺたをサンドされながらも、わずかに目を開いて天井を見る。
すると不思議なことが起こった。
次第にぐらたんと船虫の周りに半球の薄い膜が覆う。半球から外の景色は歪んだように見えた。
「!!? コイツは・・・?」
周りを囲む結界はブリザードを防ぐ。体感温度的にマシにはなったが、ここまで冷えては長くは持たない。
「・・・。インフェルノ!」
ぐらたんがかざす両手の上に光の線が幾何学的な模様を描く。天井一点に真紅の光が集まる。
フロア内に満ちた高濃度のマナ粒子が、ぐらたんの真上に加速して流れる。天井は一気に蒸発して爆発する。フロア一帯もプラズマ化した空気で灼熱地獄と化していた。
「そのまま掴まってろ!」
融解した天井が垂れてくる中、ぐらたんは船虫がしがみついたまま、空いた穴に向かって飛び上がる。
上の階に降り立つと周りを取り巻く空間の歪みが消えて、ぐらたんはぺたんと座り込む。
「わふあーー死ぬかと思った。今度は熱い」
そして探検帽子を脱いであおぎ始めた。翼もパタパタとさせて風を送る。
しばらくすると魔力が切れて人間の姿に戻ってしまった。
「・・・。なんつー出力だ。インプに毛が生えた程度って言われてるが、ヘルハウンドって、おっかねーぜ・・・」
呆気に取られた船虫はフードを脱いで、胸元を何度も引っ張ることで装束内に風を送った。
「へえ、へえ・・・。しかし、さっきの結界、似てるなあ・・・。 いや、なんでもねえ。ひでー目にあったぜ! じゃあ、こっからは互いに競争だな! おっ先~!!」
船虫は右手を軽く上げると、超スピードで走り去っていった。
「あ!! 待てーーー!!」
ぐらたんはすぐさま、後を追いかけていった。




