表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女ぐらたん  作者: Yorimi2
2.レインボーバブル編
41/76

#40「ネネ・・・おかえり」

目の前の娘。

トトネは信じがたい出来事を目の当たりにして言葉が出なかったが、ようやく口を開いた。


「ネネ・・・」


「え!? でっかいネネちゃん? もう何が何だか・・・」


ミントは長身の少女をただ見つめる。


「!!? そんなバカな!! ありえない! ボクが・・・ネネなんだあーーー!」


頭部が再生したビーストはネネに襲いかかる。

鋭い前脚を繰り出し、蜘蛛糸(くもいと)を吐くが、

ネネはその場から跳躍(ちょうやく)してビーストの攻撃をかわした。


「え!?」


ビーストが気づいた時には、前脚が切断されて目の前に落ちていた。そして次第にビーストの体が縦半分にゆっくりずれ落ちる。

ビーストの後方にはすでにネネが振り下ろした大剣を再び背中に背負う姿があった。


「悪いが、私はそんな人間離れした姿じゃない」


真っ二つに割れるビーストを背後に、右手で背負った大剣に手をかけたままネネは振り向く。

その様子を見ていたミカンは両手を合わせて感激していた。


「か、かっこいい!」


しかし、真っ二つになったビーストは再生して間も無く起き上がりネネに振り向く。


「おのれ~!!」


「ちっ・・・やはり、私では倒せないか・・・キミたちに任せる!」


ネネは両手から蜘蛛糸(くもいと)を出して、ビーストの脚部を絡めとり動きを封じた。


「ミカン! お願い!」


「オッケー! 任された! イヌガミック・ドライブ!」


ミカンは神通力(じんずうりき)を集中させ、ビーストの上に飛び上がった。


「シトラスカット・ストライク!」


勢い良くブレイドをビーストに一閃すると、ビーストから激しい光が迸る。


「・・・。心が落ち着く・・・・・・トトネ、娘にやっと会えたんだね・・・・・・願いは叶えたよ・・・」


穏やかな表情になって、ビーストは浄化された。

呆然とトトネはビーストを浄化されていくのを見ていた。

放心する母親の前に、ネネが歩み寄る。


「母さん・・・30年振りだね」


優しく声をかけると、トトネは娘に抱きついた。


「ネネ・・・おかえり。ごめんなさい、私は・・・・・・ただ・・・」


「もう済んだことだよ・・・私の部下たちは現に無事だ」


横で嬉しそうな船虫(ふなむし)が見ているのにネネは気づいた。


「ひひひひ・・・ネネ。大きくなったなあー」


船虫(ふなむし)は彼女を見上げると、ネネは船虫(ふなむし)を抱きしめた。


「ふーねーちゃん!!」


「ぐえ・・・!! ネネ。 やめろって!」


船虫(ふなむし)は照れくさそうに頬を指で掻く。

その様子を見守る中、


「30年!! そんなに!?」


ミントはブランクを聞いて驚愕(きょうがく)する。ネネが大きくなっているのは納得出来た。ネネがまだ若く見えるのは、彼女もまた女郎蜘蛛(じょろうぐも)の妖魔であることだろう。


「えへへ。でも、本当によかったねえ! 女将さん」


ミカンは横でじんわりと涙を浮かべていた。

旅館を巻き込んだアクムーンによる事件は幕を閉じるのであった。



☆☆☆

「そうか・・・・・・そんなことが」


「我々がいい夢を見ている時そんなことが!!」


「不覚だギャン・・・」


ロビーカウンターの上で雁字搦(がんじがら)めにされていたネビロスは無事救出された。

アギャンとウンギャンも無事に解毒(げどく)されたようだ。

女将や船虫、ネネのことや、ことの顛末を聞いた。


「神々と魔族との大きな戦争があったのは知ってるわよね。30年前、既に天魔戦争は終結したけど、世界ではまだ続いていたわ。疲弊(ひへい)した神々は神威(しんい)を取り戻すために、魔女狩りならぬ残党狩りを始めた。干支十二国に近いワタノは地獄だった——」


30年前、天界連邦軍と魔界帝国軍との第7次パンデモネア海海戦を最後に天魔戦争は終戦を迎えたが、人間界では取り残された旧魔界連合時代の残党軍との小競り合いは続いていた。それはワタノ島でも例外ではない。


ワタノで宿を経営していた女将トトネは、疲れ果てた人々に()(へだ)てなく宿を提供し料理をふるまったが、客の中に魔族が潜伏(せんぷく)しているということで残党狩りが押し寄せてきた。隠れていたのが本当のことだと分かり、魔族を幇助(ほうじょ)したということで暴動に巻き込まれてしまった。トトネの家族はバラバラに。娘ネネともそこで生き別れてしまった。

残党狩りに追われる中、船虫(ふなむし)と共にレインボーバブル大陸に逃げて来た。

落ち着いてきた頃にこの地で経営を再開したが上手くいかず、たまたま拾ったアクムーン結晶体が娘に化けた。そのアクムーンがトトネの願いを叶えるために悪さをしていたが・・・・・・生き別れた娘は実は生きていたという。


「——ゴメンなさい・・・アナタたちを(だま)して、巻き込んでしまって・・・」


泊まっていた客も無事解毒され、ロビーに集まっていた。驚くことにほとんどが討伐以来を受けたハンターギルド、ネネの部下たちだった。全て、やどりんが解毒処置(げどくしょち)を施したのだ。


トトネはハンターたちに深く頭を下げた。

彼らはざわつく中、


「・・・。頭を上げてください、トトネさん! オレたちは毒でアナタのことを好きになったのではありません! アナタが作ってくださった手料理。この綺麗(きれい)な旅館。全て覚えています。それにアナタ自身、お美しいのは変わりありません! たとえ、隊長の母君だとしても」


前に出て来たハンターの青年は膝をつき、彼女の手とった。トトネは意外な行動に戸惑う。

周りは笑顔で声を上げる。


「私も!」「オレも!」「ワシも!」「僕も!」


目の前の青年は口を開く。


「みんなが・・・アナタ自身に心奪われているのです! おつらい過去、お察しします。みんな一人で頑張ってきたアナタを支えたい! だから、オレと付き合ってください!」


「ええ!!? ど、どうしましょう・・・」


トトネは頬を赤らめて戸惑う。


「きゃあ~! 告白だあ!」


カオリは口を押さえてテンションが上がっていた。

しかし、真っ先に告白した青年の後ろは黙っていなかった。


「何~!! 貴様ずるいぞ!!」「許さね~!」


「うおっ!」


トトネの前にいた青年は引きずり出されて、我先へと次々に別のハンターが彼女の前に(おど)り出てはまた引きずり出されて、次第に乱闘になってしまった。


「あ、あちゃー・・・。 でもモテモテだね、女将さん」


ロマンティックな展開を予測していたが外れてしまい、苦笑いでカオリは見守る。ネネは不機嫌な顔で前に出てきた。


「貴様ら~!! 私の母に手を出すんじゃない! 父はまだ生きているし・・・・・・それに、貴様らは分かっておきながら、こぞって任務を忘れて遊んでいたのか!! このていたらく・・・帰ったら始末書だ。覚悟しておけ!」


「「「「「「「!!?」」」」」」」


男ども全員が固まった。


「そ、そんなあ・・・・・・」「(ヒド)いですよ隊長~」「それは毒のせいです・・・」


むくれているネネ。自身を差し置いての母の人気に焼いていたのかもしれない。


「コウイチも生きてる・・・?」


トトネはネネに聞いた。


「ええ。王都に・・・父にも会ってあげて。父の変わりようにビックリするかもしれないけど・・・」


「あー、コウイチはただの人間だったなー。今じゃもうハゲてんじゃね? ひひひひ」


横で船虫(ふなむし)は笑うと、ハンターの一人が近寄る。

トトネは下を向く。


「でも、私は・・・・・・出頭しようと思うの、討伐依頼の上がっていたアクムーンの魔物をけしかけたのは私自身なのだから・・・・・・しっかり罰は受けたいの」


「しかし、そこまでしなくとも我々は・・・」


ハンターたちは(ざわ)めく。その時船虫(ふなむし)は不適な笑顔で声を上げた。


「ひひひひ! 貴様ら~! 誰かを忘れちゃ困るなぁ!!」


彼女の声で、みんなが振り返る。


「たしか船虫(ふなむし)さん? トトネさんのお知り合いなら・・・・・・是非とも後でお食事にでも!」


「はあー!? ちげーよ!! ちょーし乗んなよ能天気ヤロー・・・・・・! まあ、バッタに改造されてジャンプキックができるようになったら考えてもいいぜ・・・ってそんなことはどーでもいいんだよ!!」


みんなが静まり返る。


()()いはもうお終いだぜ? アタシはナイトメアユニオンの船虫(ふなむし)! アクムーンを使ってこの旅館に仕組んだのは全てアタシだったんだー!!」


船虫は歯を()き出して笑う。


「・・・!? そんな・・・・・・アナタを捕らえて、ネビロス君のことを聞き出したのは私だし・・・私もアナタに(ひど)いことを・・・・・・」


ぐらたんは手を差し出して、トトネを止めた。


「・・・。悪いけど、トトネ。あの虫が言っていることは間違っていない。私たちはアイツらと戦ってきた。アイツは人々に絶望をもたらすナイトメアユニオン・・・!」


「そんな・・・」


ネネも驚愕(きょうがく)し、黙り込んでしまった。


「そうだぜ、ナスビ! さあ、アタシを捕まえな!! 捕まえれるもんならなあ!! アディオス!!」


船虫(ふなむし)は黒い残像を残して消え去ってしまった。空いたエントランスの扉が閉じていく。

トトネは思い詰めた(さび)しそうな表情で扉をただ見つめる。


「母さん・・・ふーねーちゃんは・・・・・・」


ネネは心配そうに顔を(うなず)くが、


「あの子ったら、またそうやって・・・」


ロビーが静まり返る中、再び、勢いよく扉が開くと、息を切らした船虫(ふなむし)が戻ってきた。


「ぜえ・・・・・・おっと、言い忘れてたぜえ・・・。タマモ様やレヴィアタンは、北のバニラホワイト地方、フローズンショコラマウンテンでお待ちかねだ! 飼い主の封印を解きたきゃ来な!! そこがキサマら犬神少女の墓場になるんだ・・・・・・!! アディオス!!」


すると再び船虫は目にも止まらぬ速さで走り去った。


フローズンショコラマウンテン・・・

そこに邪龍レヴィアタン・・・すみれが待っている。アイツといずれ決着をつけなければならないのか・・・


天魔戦争ってなんぞや:

魔界へ堕天してきたベリアルにより「共通の敵は天界」ということで、魔界内各国で争っていた魔族はまとめられ魔界連合軍が結成された。天界の足場を崩すために開始された人間界侵攻作戦によって天魔戦争の火蓋は切られた。(前期は人間界が最前線だったが、魔界の補給線が伸びに伸び切ってしまって孤立化してしまっていることから、中期からはスルーして魔界本土への攻撃に注力するようになった)

もちろん寄せ集めで練度の低い魔界連合の大敗となったが、ルシファーの離反によって一度占領した魔界は奪還され、魔界帝国が誕生することに。

天界は再び軍を派遣するが今度は魔界が圧勝。

戦いの果てに天界は遠征の失敗でかなり疲弊し、守り切った魔界は再建に注力するため

終戦を迎えた。


しかし、人間界では掃討しきれなかった旧魔界連合残党との小競り合いが続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ