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魔法少女ぐらたん  作者: Yorimi2
2.レインボーバブル編
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#39「ああ? みりゃ分かんだろ! 助けろよーー!!」

部屋の外から押し迫る蜘蛛型(くもがた)のビーストの群れ。ミカンは順番にビーストを斬り倒していく。


「これで10体・・・。うわっ!」


斬ったビーストの残骸(ざんがい)の後ろから新たなビーストが顔を出し、糸を吐く。

投網のような蜘蛛糸(くもいと)がミカンを絡めとるが、

入口付近に開いた天井の穴から別のミカンが飛び降り、ビーストに下突きを繰り出す。


「残念でした! 11体」


捕らえた方はミカンの分身は葉に変わり、辺りにたくさん散らばる。

ビーストを倒したミカンは後ろへ跳んで距離をとった。


「くっ、キリがないよ~」


倒しても倒しても入口からビーストが集まってくる。


「待たせたな、ミカン!」


後ろの方でやどりんは両手を前に突き出すと、部屋の入口付近で大量の植物の根が雪崩(なだれ)のようにビーストに襲い掛かり、絡めとっていく。

最終的に入口がいっぱいに塞がるように根がはりめぐった。


「やどりん、やる~っ!! でも、閉じ込められちゃった」


「出口ならあるだろ? ほら行ってきな」


やどりんは窓を親指で指す。


「よ~し! イヌガミカン、参る!」


ミカンは窓の外、4階から飛び降りる。



☆☆☆

旅館の前までたどり着いたミント。

旅館に入ろうと飛び出すが、不意に後ろから声がした。


「よお、なすび犬!」


ミントは聞き覚えのある声に振り向く。


「キサマは・・・虫!!」


船虫(ふなむし)だ!!! ひひひ、よく来たなあ! あたしゃ、ツイてる!」


「キサマの仕業か・・・。蜘蛛(くも)のアクムーンを消しかけたのはキサマか!!? ・・・って、何やってるの?」


船虫(ふなむし)の姿をよく見ると、蜘蛛(くも)の糸でぐるぐるに(しば)られて樹木に吊るされていた。


「ああ? みりゃ分かんだろ! 助けろよーー!!」


彼女は身を(よじ)って、助けを求めて来た。ミントはジト目で見上げると何事もなかったように旅館へ向かおうとした。


「うおおおい! シカトすんな! 頼むぜえ~! なあ、お願い! お願いしやすうーーー!!」


ミントは船虫(ふなむし)の元へ戻る。彼女はパア~っと期待の眼差しで見つめる。


「ひひひ! マジ天使!」


その時空気を薙ぐ感じが肌を撫でた。咄嗟(とっさ)にミントはかがむ。

何か(きら)めいた線が、頭上を通過したと思うと船虫を吊るした大木が輪切りになって崩れる。


「うひゃあ!!? お! 糸が解けたぜ」


船虫(ふなむし)を縛る糸もバラバラに解けた。彼女はバラバラになった木と一緒に(しげ)みに落ちた。

一瞬でバラバラになった木に驚きながらもミントは後ろ、旅館の方を振り向く。

そこには、旅館の女将トトネが立っていた。

頭部には(きば)のような小さめの角と4つほどの単眼が赤く輝いていた。


「避けちゃダメじゃない・・・ふーちゃんが輪切りになっちゃうじゃない」


「っ・・・!! トトネ・・・! ネビロス様をどこにやった!?」


ミントはロッドを(かま)える。


「ロビーカウンターの上よ。 取り返せるものならね・・・!」


トトネは両手を振るう。何も無い空間で何か(きら)めいた。


「!?」


突然後ろから引っ張られ、バランスを崩したミントは(しげ)みに倒れる。

その拍子に、被っていたナースキャップや髪飾りの片方が裂けてズレ落ち、ミントロッドのヘッド部分が綺麗(きれい)に折れた。

ミントは(しげ)みにの中に埋もれ、姿が見えなくなった。


「ちっ」


トトネは手首を軽く(ひね)る。

茂みの中ひっくり返ったミントは折れたロッドの断面を見て目を丸くする。


「何なんださっきの攻撃!」


後ろから船虫(ふなむし)が小声で(ささや)く。


「きいつけろ。 ヤツの正体は女郎蜘蛛(じょろうぐも)の妖魔・・・。ヤツの指先にある蜘蛛糸(くもいと)に注意しろ! アタシが引っ張らなきゃミンチになってたぜえ?」


「ワイヤーカッターか・・・。どうしてそれを?」


「勘違いすんなよ? とろくさいヤツを見てるとイライラすんだよ。 トトネはアタシのダチだ。ヤツの目を覚まさせるのにテメーを利用させてもらう」


その瞬間に一気視界がクリアになった。トトネが振るった糸による攻撃だ。

バラバラに草木が舞う。


「みーつけた! ふーちゃんも、おとなしくしてね?」


「トトネ! オメーの娘はもういないんだ・・・・・・あれは娘じゃない!」


船虫(ふなむし)がトトネに呼びかけるが、彼女は肩を落として見下ろすのだった。


「だからさ・・・アクムーンが願いを叶えてくれる。ここに来てくれたのは幸いだった。あの坊やが娘を甦らせる方法を知っている・・・。貴方だってその力を欲しがっているんでしょう? 娘を甦らせるだけでいい! いいじゃない!!」


ミントは口を挟む。


「ネネちゃんの霊に会った。こんなやり方でネネちゃんは喜ばない! アクムーンのいいように使われているだけだよ。 みんなを解放して!」


「っ・・・・・・だまれ!! そんなデタラメ・・・・・・ふゅぎゅ!!」


トトネが声を荒げた瞬間、頭上から何か落下して彼女は下敷(したじ)きになった。

突然の予測不可能な出来事に、ミントと船虫(ふなむし)が固まった。


「いたた・・・まさか真下に人がいるとは思わなかった・・・」


トトネの頭上から降って来たのは、イヌガミカン。


「ミカン!? 無事なの?」


ミントは声をかける。


「うん、やどりんが解毒(げどく)してくれたおかげで何とか・・・大変だよミント! この旅館にアクムーンが!!! って、今どういう状況?」


ミントと船虫(ふなむし)が一緒にいる光景にミカンは戸惑う。


「あ? ・・・ああ、カクカクしかじか・・・」


船虫(ふなむし)は呆然として声を()らした。


「大体分かったわ!」


ミカンはウインクした。彼女のお尻の下でトトネが顔を上げる。


「う・・・おのれ・・・」


「あ! 女将さん! 大丈夫ですか? 怪我はない? うわ!?」


トトネはミカンを押しのけて立ち上がる。


「毒が効かない奴がいたなんて・・・」


トトネの目の前には、ぼんやりと光るネネの姿が現れた。


「あ・・・・・・」


「お母さん? 私が見える?」


「ネネ・・・」


ネネの霊はぎゅっと母トトネに抱きつく。それをトトネは優しく抱きしめた。


「もう、いいんだよ! お母さん! あんな悪魔の言いなりなら無くても私はここにいるから!」


「ええ、もう貴方がいれば・・・・・・あなたさえいてくれれば・・・」


トトネから涙があふれる。ネネはもっと強く抱きついた。

周りにいるミントや船虫(ふなむし)、ミカンはその様子を見守る。


「何だか知らないけど良かったね」


ミカンは薄ら浮ぶ涙を(ぬぐ)った。横でミントは呆れた顔で突っ込む。


「結局分かってないんかい・・・! ネネちゃん無事だったんだ・・・良かった」


親子の再会に感動するが、ここら先ネネは再び冥界に帰らないといけないと思うと切なく感じる。

するとネネは抱きついたまま、(ささや)く。


「うん・・・ボクだけがいれば!!」


その時突然、ネネの背中から蜘蛛(くも)の脚が飛び出し、周りにいたミントとミカンを()ぎ払う!


「「!!?」」


2人は数メートル先の(しげ)みまで吹っ飛ばされた。


「ネネちゃん! どういうこと?」


ミントは体を起こして声を上げた。

ネネは不気味に笑い出す。


「ふふふ、あはははははは!! まんまと(だま)されたね!? 最初からボク1人。 おねーちゃんが会ったネネはボクが糸で作った分身さ! ハンターから逃げて(かく)れているところキミに見つかって、どうなることかと思ったけど・・・・・・毒が回るまで時間が(かせ)げて良かった。いい演技だったでしょ?」


「くっ・・・」


ミントは歯を()(しば)る。


「お母さん、ずっと一緒だよ。ボクの中で永遠に夢を見続けるんだ」


ネネは紫色の光に包まれると、巨大な蜘蛛(くも)の姿に変えわった。


「あくむーーーーん! いただきます♪」


「トトネ!!」


船虫(ふなむし)は手を伸ばして叫ぶ。

彼女の声は届かずトトネは放心状態で、蜘蛛(くも)の魔物を見上げる。

ビーストは大きな口を開けてトトネを食べようとしたその時、

微かに(きら)めく線が4本走った。


「ぎゃああああああああああああ!!」


ビーストの頭が裂けた。解放されたトトネはそのまま膝をつく。


蜘蛛(くも)の糸・・・まさか!!?」


ビーストを斬ったのは確かに蜘蛛(くも)の糸だ。


「き・・・きさまは・・・・・・!!? さっき、あの時、ボクを追いかけてきた・・・」


ビーストの目に映る人影・・・

戦闘服を着た長身で黒髪の少女。頭部にはトトネと同じように二つの赤い単眼が見える。右手は背中に背負った大剣の柄を握りしめ、左手を前に(かま)えていた。その左手から蜘蛛(くも)の糸が()っすら垂れ下がってる。


「あ! あなたは風呂場前であった!!?」


ミカンは思い出したように叫んだ。

そして、船虫(ふなむし)は突然現れた長身の少女を見て目を見開く。


「おいおいおい・・・! 嘘だろ・・・生きてたのか?」


長身の少女は黙ったまま鋭い赤い瞳でビーストを睨む。


「・・・ネネ!」


「「ええーーーっ!!?」」


船虫(ふなむし)が呼んだ名で、その場にいた全員が驚愕(きょうがく)したのだった。

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