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魔法少女ぐらたん  作者: Yorimi2
2.レインボーバブル編
39/76

#38「やばい宿に泊まってしまったようだ」

ここは? 冥界・・・死神庁黄泉(しにがみちょうよみ)(くに)支部局だ。

ここで、初めてネビロス様とあったところ。あの時、研修で粗相(そそう)を起こしてしまったが、彼のおかげで強制送還(きょうせいそうかん)されずに済んだ。

最初の第一印象は無愛想な彼だったが何かしら面倒見が良い。そんな時折見せる優しさに私は()かれていった。


支部局からネビロス様が出て来た。


「はあ~。やっと後始末が済んだ・・・」


「ごめん・・・。いろいろ迷惑かけちゃった。私はこれで・・・」


立ち去ろうとした時、ネビロス様は呼び止めた。


「どこへ行く!? どこへ!!」


「へ?」


「契約を済ませた。これでオマエは正式に僕の使い魔・・・。でもこっからまた忙しくなる」


ダルそうに彼は左手で後頭部をおさえる。

その時、私はどんな顔してただろう。


「そ、それじゃあ!!?」


「ああ。だけどハッカタウンに着いたら、除霊の仕事だけじゃないぞ? 分かってるな?」


「うん!!」


嬉しいさでいっぱいだったに違いない。

彼は私の手にビニールの小袋を置いた。


「ほら、とりあえず、なんだ? 契約の印だ」


小袋にはチーズタルトが入っていた。あの時食べたチーズタルトの味はハッキリ覚えている。ホロっとタルトが口の中で崩れて、それでもってクリームチーズが甘酸っぱい。ハチミツの香りが口いっぱいに広がったのを・・・・・・


あの時から私は彼のことが好きになったに違いない。今与えられている任務が無ければ彼に会えなかったと思うと歯痒(はがゆ)い。

私はずっと仮面を被り続け、(だま)し続けて、最終的に彼を・・・


「何しけた顔をしている?」


「!?」


ネビロス様は大胆(だいたん)に私の両手をしっかり手を取る。


「契約したのは使い魔だけじゃない・・・」


「え?」


ネビロス様は書類を取り出して見せた。


婚姻届(こんいんとどけ)!!?」


私の反応を見て彼は(うなず)いた。


「そう・・・オマエはもうただの使い魔じゃない! ・・・ボクの女になりなよ・・・」


目を細め顔近づけて来た。

(あご)が彼の手によって軽く持ち上げられる。

私の全身が発火するように熱くなってきた。心が()(みだ)れる。


「あ・・・・・・ネビロス様・・・ダメ・・・」


甘い気分に満たされて、自然と私も目を閉じて顔を寄せる。

鼓動(こどう)がうるさいくらいに胸の中で響く。


現実なら受け入れたい・・・。現実ならば!!


唇が重なる直前、私の頭の中から苛立(いらだ)ちが爆発した。

このままチューするのもいいが、勢いをつけて思いっきり額を彼の顔面に打ちつけてやった!


「うりゃあああああああああああ!!」


宙を舞う彼。何メール吹っ飛んだだろうか? 

彼は地面に叩きつけられ、バウンドしながら転がり続ける。

ようやく止まったところで彼は体を起こす。


マスターの顔でそんな顔をするな!!


「よくもネビロス様を汚したな!!?」


私の知るネビロス様はそんな下衆(ゲス)では無い!


理想と大いにかけ離れるヤツはネビロス様ではない・・・ゴミだ!!


「どうして・・・ぐらたん。キミの夢じゃ・・・望みじゃなかったの? ネビロス様が大好きなんでしょ!? ボクが、彼をキミのものにしてあげるのに・・・・・・」


虫唾(むしず)が走る!!!


「恋心を知らないクソガキがっ!! しゃべるなああーー!!」


心から叫んだ言霊は不思議なことに、極大で(まぶ)しいビームとなって、口から吐き出された。ブレスは、その(あわ)れなゴミを消し飛ばした。



☆☆☆

「人の心に土足で入りやがってええーーーっ!! あ・・・」


気がつくと、真っ暗な密林に囲まれていた。

ぐらたんは夢から目覚めたようだ。


なんて悪趣味な夢を・・・。こんなものを見せるのはヤツしかいない。しかし、いつの間に外に・・・


目線の先は旅館の明かりが見える。意外と近い場所に移動させられていた。

足はぶらぶらしており、宙に浮いている。背中に何か引っかかっているような感覚がするし、両腕が動かしにくい。身の周りを見てみると、ぐらたんの体は大きな蜘蛛(くも)の巣に張り付けられていた。


早くみんなを、ネビロス様を助けないと・・・


ぐらたんは強引に腕を引いて()がそうとしたが、袖にびっしりと蜘蛛(くも)の糸がくっついて離れない。

無理だと分かり、力を抜くと反動で巣が()れて自身も()らされる。

ふと足元を見るとイヌガミギアが(しげ)みに落ちていた。届くはずは無いのに、無意識のうちにぐらたんはイヌガミギアに手を伸ばした。限界まで。


「・・・・・・」


伸ばした手の先にあるイヌガミギアが()らいだ気がした。自身に向かってわずかだが動き出したように見えた。

集中しているうちに、蜘蛛(くも)の糸を伝って別の振動を感じた。

ふと見上げると赤く輝く八つの単眼。大きな蜘蛛(くも)(きば)を数回噛み合わせて、ゆっくりと巣の上を張って来たのだ。


「あくむーーーん!」


「アクムーン!!? わ、あわわわわわわわわわわわわ!!」


ぐらたんはイヌガミギアのことは忘れて、暴れ出した。もがき続け、ストンっとぐらたんは巣から落ちて自由になった。ローブが脱げたのだ。

白いワンピース姿になったぐらたんは慌ててイヌガミギアを被る。


「イヌガミライズ! マジカル・イヌガミント!!」


赤い光に包まれて、ぐらたんはイチゴミントに変身した。

ミントはロッドを振るう。


「ミントスラッシュ!」


光の盾が高速回転して大きな蜘蛛(くも)に飛んでいき、真っ二つにした。蜘蛛(くも)残骸(ざんがい)は間も無く光の粒子になって消えた。


「え!? なんだかあっけないな・・・」


ミントは巣に張り付いた黒いローブを引っ張るが()がせない。べったりとくっついてしまっている。


「うえ~・・・。やっぱり取れないや。あとで回収しよう・・・・・・とにかく急がなきゃ!」


旅館を目指して駆け出すのだった。



☆☆☆

——タオセ・・・——


えっ?


声を頼りに後ろを振り向くと、大きな人影が目の前に立っていた。


誰?


人影は炎のように揺らめいている。


——ワガハイ ノ・・・ヒガン、望ミ・・・ニセモノ ヲ——


人影は()らめく腕を伸ばして、大きな手が私に迫る。 


倒せ? どう見てもアナタの方が倒すべき敵だわ。

私が・・・倒す!!


剣を(かま)える私は、まるで本当に勇者みたいだ。



☆☆☆

「うっ・・・」


カオリがゆっくりと目を開けると目の前にはやどりんが顔を(のぞ)き込んでいた。


「やどりん・・・・・・どうしたの?」


「良かった。カオリ、目が覚めたか?」


カオリは頷くとゆっくり体を起こす。


「なんだかだるいなあ~・・・。それにまだ夜中じゃない。あのカッコイイ夢の続きが気になるの

~」


カオリはまた寝ようとするのをやどりんは阻止した。


「寝てる場合じゃないぜ。アクムーンだ! アンタたちが寝てる間に毒にやられてたようだ。 解毒はしておいた」


カオリは再び勢い良く体お起こす。


「え!? アクムーン!? やどりんは大丈夫?」


「おう。 アタシに毒は効かないからな・・・。それよりもアギャンとウンギャンの毒のまわりが深刻だ!」


「そんな!!」


「心配するな・・・どうやら死ぬようなもんじゃない。 何かしら依存性(いぞんせい)が出るような毒だ・・・。全く、やばい宿に泊まってしまったようだ」


「やどりんなだけに・・・」


(あき)れた顔でやどりんは、アギャンとウンギャンに解毒処置(げどくしょち)を続ける。


「・・・・・・。くだらね~事言ってる(ひま)はねえぞ? ネビロスとぐらたんがいない! この二匹はアタシに任せて、行ってこい」


「分かったわ! イヌガミライズ! マジカル・イヌガミカン!!」


カオリはミカンに変身し、部屋を出ようと扉に近づこうとしたその時、

扉付近の天井の板が抜け落ち、一匹の巨大な蜘蛛(くも)がミカンの前に降りてきた。


「出たわね、アクムーン!」


扉の前を陣取るビーストは蜘蛛糸(くもいと)を吐いてミカンを(から)めとろうとするが、

彼女は素早く低姿勢で糸を避け、一気にビーストの(ふところ)まで接近する。


「はあっ!」


シトラスブレイドで斬り上げ、巨体を真っ二つにした。縦に分かれたビーストは何事もなく光の粒子になって消滅した。


「あれ? なんかいつもと違うような・・・考えている暇はない。待ってて、ぐらたん、ネビロス君」


部屋の扉を開けるミカン。

開けた扉の外から、わらわらと同じ蜘蛛型(くもがた)のビーストが列をなして迫ってきた。

部屋に入りきれないのか、扉ですし詰め状態で渋滞(じゅうたい)している。


「うひゃあ!? アリさんはともかく、クモはちょっと・・・」


ミカンは蜘蛛(くも)の群団へ立ち向かっていく。

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