(7)
日暮れも迫る時分、大地の女神の礼拝堂の前にやってきたロー・ケーティは、中から出てきた神官に声をかけられた。
「申し訳ありません。そろそろ閉めますが……何か差し迫った祈りでも?」
「ええ、まあ」
帽子を取り、ローはにこりと笑った。
「ご挨拶が遅れました。ロー・ケーティと申します」
「ケーティ……もしや市長の?」
「ええ、息子です。市長選が近いので、父の代役で町を回っています。こちらは父の秘書のカナル・ヴィダーレ。いずれはカナルが父の跡を継ぐ予定ですので、これを機にお見知りおきください」
ローの紹介に、カナルも帽子を脱いで丁寧に一礼する。
「そうですか。しっかりとしたよいお顔だ。しかし、あなたは継がないのですか?」
「僕は政務官を辞めるつもりはありませんので」
「おお、そう言えばそのような噂をどこかで聞いた気もしますな。ずいぶん精力的に活動されているとか」
政務長官に就任するのもそう遠くないですかなという神官のへつらいに、ローは苦笑した。
「僕などまだまだ若輩ですよ。すみません、時間がないと承知の上で、少しだけ中に入らせていただいてもかまいませんか? 僕の守護神は大地の女神なので、この地の女神像にお祈りをさせてください」
決して長居はしませんと約束するローに、神官は「お気になさらず、どうぞ」と扉を大きく開けて招いた。
カナルと、市庁舎の職員だと紹介した女性を連れて踏み込んだローは、まっすぐ女神像の前まで歩いて膝を折り、短い祈りをささげてから立ち上がった。
「先に他の三つの礼拝堂をのぞいてきましたが、こちらは古いですね」
かなり年季の入った内観をぐるりと見回したローに、神官はうなずいた。
「この地に初めてできた礼拝堂ですから」
「そういえば、こちらは神法院から神官を派遣されていないとか。補修費用を減額されているということはないですか? 神法院は支配下にない相手を冷遇しますから」
ローが眉間にしわを寄せてぼやくと、神官は「今のは聞かなかったことにしておきます」と微笑した。
「でも相当な傷み具合ですよ。特に床がひどいですね」
しゃがんだカナルが、ぎしぎし鳴る床板を手でなでてからコツコツたたく。
「土台が食い荒らされているかもしれませんね」
修繕が必要と市長に報告しましょうとカナルは言い、職員に記録を指示した。大至急の欄に追加するようにと。
「それはありがたいですな。この町は小さいわりに人口も多く潤っているようですが、どこまで援助を頼んでよいものか悩んでしまいまして」
「神官殿は控えめな方ですね。他の礼拝堂はちょっと傷が入っただけで直してくれと大騒ぎして――おっと、これも聞かなかったことにしてくださいね」
ローのおどけた口調に、神官は声を立てて笑った。暫時話してから、ローたちは礼拝堂を辞することにした。
「うん? 急に霧が出てきたな」
ついさっきまで何ともなかったのに、ほんの短い時間であたり一面に広がった霧にローは目をみはった。
「毎年この時期はこうなるんですよ。二日ほどでおさまるんですが、視界も悪いので、家で静かにする住民が多いです」
「ああ、なるほど。だから昼間はどの店も混雑していたのか」
みんな籠るために買い込んでいたんですねとローは納得した。
「しかしこれはひどいな。どうしようか、カナル。今夜はこの町に泊まって、霧が落ち着いてから帰ろうか」
「そうですね、ここまで濃いと先が見えなくて危ないですし」
「二日続けて宿泊になったけど、経費で落ちるよね?」
ローの確認に、眼鏡をかけた女性職員はこくりと首を縦に振った。
「昨夜はどちらにお泊りで?」
「オスクーロの町です。あそこは少し前に犯罪が起きまして、念入りに見てくるよう、父から言い渡されていましたので」
「ああ、子供たちが犠牲になっていた事件ですか。本当に痛ましいことです」
神官が同情顔になるのを横目に、ローは周辺を見回した。
「たしか、この近くに宿屋があったな」
「お待ちください。よいところがあるので、下働きの者に案内させましょう」
申し出てくれた神官に礼を言い、最後に市長選への協力を求めて三人は立ち去った。
連れてこられたのは、礼拝堂からかなり離れた宿屋だった。空いていた部屋に通され、食事はこの部屋でとると伝えると、宿屋の女主人は笑顔で承知して一度退室した。
靴音が階下へひいていくのをしっかり聞き届けてから、カナルが扉を離れる。ローはかばんから取り出した紙に簡単な地図を描いていた。
「ここまで遠ざけられると、逆に興味がわきますね」
「やっぱり大地の女神の礼拝堂があやしいか」
「下に通路があるようでした。たくさんの足音がしていたので」
「カナル、耳がいいね」
「ローさんの観察眼と調査もすごいですよ」
地図に詳しく書き込まれていく内容を見て、カナルは感嘆とともに瞳を細めた。
大地の女神の礼拝堂へ向かう前に、市長選の挨拶と称してメンブルムの町を歩き回ったおかげで、フォーンの町へ続く道にかかっていた石橋が落ちたことを知った。
架け替え工事の予定などなかったはずだといぶかったローが周辺でさりげなく聞き取りをすると、昨夜ものすごい爆音がしたという。どうやら自然に壊れたのではなく、意図的に爆破されたらしい。
非常にわかりやすい足どめだ。万が一にも儀式の邪魔をされないよう、フォーンの町からの増援を封じるために連中が吹っ飛ばしたのだろう。
それだけファイたちの突入を恐れているのかもしれないが、修復にはけっこうな金がかかる。あちらの仕業とどうにか証明して賠償させたいところだとカナルは内心で愚痴をこぼした。
「――よし、これでいい」
ペンを置き、ローが窓際に立つ女性職員を手招きする。本来は茶褐色の髪を灰黄色に染めた女性職員は、眼鏡を胸ポケットにしまいながら近づいた。
「見張りは?」
「います。あちこちで御使いが待機中です」
「まったく、ファイの読み通りだね」
小声でぼそぼそ話す。
市長選の応援要請を目的とした訪問は、本拠地であるフォーンの町ではなく北西部のオスクーロの町から始めたが、ローがキュグニー家と懇意にしているのは相手も把握しているはずだ。だから警戒されるのも当然だった。
おそらく自分たちは儀式が終わるまで、この宿屋に閉じ込められるだろう。さすがに市長の代理で市内の町をめぐっている者を殺しはしないと思うが、へたに誰かがこっそり発ったり御使いを放とうとすれば、三人ともすぐに捕まるに違いない。ただそれも直接宿屋を抜ければ、の話だ。
「じゃあ、ミュイア、頼むよ」
ローが指で地図を一度たたく。女性職員はうなずくと小さな声で法術を唱え、水をまとった手で紙をなぞった。
薄い水の膜が情報を漏れなく写し取ったところで、今度は水の入ったコップの中に水の女神の使いを召喚する。半透明の魚は水の膜を飲み込み、ぽちゃんと沈んで姿を消した。
「……成功です」
まもなくミュイアがぽつりと告げる。無事ファイのもとに御使いがたどり着いたことに、カナルとローはほっと息をついた。
水の女神の使いは他の御使いのように目の前を飛び続けたり走ったりはできないが、代わりに水のあるところならどこへでも一瞬で転移することができる。移動を視認されない御使いを扱え、かつ相手に面が割れていない人物としてカナルが推薦したのは、武具屋の店主ジェソの妻だった。
長い付き合いであるジェソにミュイアを借り受けるにあたり、カナルはしつこいほど注意された。絶対に、何があっても最優先で妻を守れと。小さなけが一つ負わせただけでボコボコにされそうな勢いにカナルは気圧されたものの、年を重ねても熱々な二人の様子ににやけた。シータの仲介で言葉を交わすようになったあたりからジェソはミュイアを気にかけていたが、心配が過ぎるところは今もまったく変わっていないらしい。
しばしして、ファイからの返信を携えてもう一度魚が姿を現した。彼らはケントウムの町側から侵入するという。事前調査でも一番入りやすい道だとカナルたちも考えていたが、この宿屋は首都アーリストンにかなり近い、メンブルムでも北端の場所であり、おまけに監視されているので、合流は難しい。
「悔しいけど、僕たちにできるのはここまでだね」
あとは足手まといにならないようにするだけだと言うローに、カナルとミュイアも残念そうに同調した。
町に充満する霧を目にすることなく、ブレイは大地の女神の礼拝堂の下に造られた祭場で、時が来るのを待っていた。
『献身の日』は毎年、前日の夕方から霧が立ち込める。それはメンブルムの町のみに起きる現象だった。
そばでは大導師である祖父が、儀式の準備をする者たちの動きを見守っている。段取りは事前に確認済みだが、緊張や興奮のせいか皆の手は震えていた。
できることはした。後は彼らしだいだ。広い祭場を埋めつくすほど集まった信者たちの熱気を背後に感じながら、ブレイはこぶしをにぎった。
『継承者』としての正装は導師のものよりもさらに黒みが深い。幼い頃から機会あるたびに袖を通してきた衣装に触れるのも今宵が最後になるかもしれないと思うと、今までは感じたことのなかった名残惜しさがかすかに胸内をよぎった。
目の前には、天井まで届くほど高い暗黒神の石像がある。そしてその手前には、人が一人横たわれる大きさの石台と祭壇が置かれていた。
いつ使われたかわからない古びた血の跡がこびりついている石台をブレイが見つめていたとき、切迫した声が響いた。
「申し上げます! ケントウムの方面より霧に紛れて不審な集団が移動中とのことです!」
フードを目深にかぶった外套姿の者が複数と聞き、祖父が舌打ちした。
「『献身の日』に狙いを定めて来たか。奴らの足どめに向かえ。攪乱し、こちらへ近づけるな!」
大導師の命令に、まずモスカの父親たちが動く。祖父はさらに指示を飛ばした。
「儀式を早める。リリー・キュグニーを連れてまいれ!」
本当なら儀式は真夜中、『献身の日』の始まりにあわせてとりおこなわれる予定だったので、数時間とはいえ特別な日から外れることに信者たちはざわついたが、大事な『心臓』を確保することを優先した大導師の意見に異を唱える者はいなかった。
今日のリリーたちの夕食には睡眠薬を混入させている。意識がある状態で顔見知りの少女の心臓を取り上げることをブレイがためらったからだ。グラノにはぬるいだの臆病だのと揶揄されたが、ブレイの情け心を祖父は許した。ブレイがやりやすいようにと配慮したのだ。
リリーを運ぶ役を担った二人が地下牢へと急ぐ。事前にリリーとオルトが食事をきちんととって眠るのを給仕係が確認していたので、作業はすみやかに進むはずだったが、いつまでたっても担当者は戻ってこず、代わりに緊急事態を示す鐘が鳴り響いた。
「娘が逃げた! 娘が逃げたぞーっ!」
今度は祭場は大騒ぎになった。動揺を隠せない信者たちを、導師が落ち着かせようと大声でなだめる。
「門を閉じよ! 心臓以外は傷つけてもかまわん。絶対に逃がすな!」
大導師の怒号に弓専門店の店主らが駆け出す。ブレイは一度暗黒神の像を見上げ、祖父をかえりみた。
「僕も行きます」
「ブレイ、しかし……」
逡巡する祖父に、「欲しいものがあるんです」とブレイが微笑して歩きだす。脇目も振らず出ていくブレイを注視していたモスカはキッとまなじりをつり上げ、静かに後を追った。
すっかり日が落ちて暗くなった霧の町を進行する小さな騎馬隊を見つけたモスカの父親たちは、威嚇をすっ飛ばして完全に射殺すつもりでいっせいに矢を放った。しかし発動した『盾の法』にすべてはじかれ、同時に打ち上げられた楕円形の炎のまぶしさに目をかばう。さらに霧を払う風も感じた。明るさに徐々に慣れた彼らは、ようやく敵の姿を認めて息をのんだ。
「お前たち、これはいったい何のまねだ?」
低い問いが投げられる。外套の下からのぞく制服は市の警兵のものであり、彼らはとんでもない間違いをおかしたことに気づいた。
「我らに弓を引くとは、さぞ後ろ暗いことがあるのだろうな?」
「あ、いや、これは……」
誤解ですと弁明するモスカの父親たちの脇を、風の神の使いが颯爽と滑り過ぎた。続けて四騎と荷馬車が駆け抜けていく。唖然と集団をふり返る彼らに、騎馬隊の中心にいた警兵長が右手を挙げた。
「事情は警庁で聞く。捕らえろ!」
「しまった、今のは――くそっ、散れっ」
馬を駆る警兵たちに背を向けてちりぢりになろうとした彼らに、続けざまに火球が命中する。それでも走りながら焼ける外套を脱ぎ捨てようとした者は残らず前のめりに倒れた。広範囲にかけられた『誘眠の法』により意識を失ったのだ。それはこっそり逃げようとした見張りをもしかと捕獲し、まだ頭上で赤々と燃える炎のもとで黒ずくめの男たちは一人も漏れることなく縛られた。
「聞きしに勝る乱発ぶりだな。まったく、教官職にとどめておくのは惜しい逸材だ」
警兵長が肩越しに笑う。後ろにまたがっていたファイは馬を下りると、大地の女神の使いを召喚して走らせた。
「ご助力、感謝します」
「いやなに、借りを返したまでのこと。いずれまた世話になる日が来るだろう。そのときはよろしく頼む」
レオンを巻き込んだ粗悪品の販売の摘発に貢献したファイの協力要請に、今回警庁は快く応じてくれた。おかげで敵をひるませ、行動を乱すことができた。
「ケーティ政務官の救出はこちらで引き受ける。マルク、法術部から何人か引っ張っていけ」
警兵長の指示に、マルク・アギリスが敬礼で応える。ファイは再度感謝の意を述べ、馬を寄せてきたシータとともに先を行く仲間を追っていった。
乗馬の腕がまったく衰えていないシータを感心しながら見送っていたマルクに、同僚が話しかけた。
「なあ、御使いって一度にいくつも召喚できるものなのか?」
たった今目撃したことが信じられない様子で首をひねる同僚に、マルクは肩をすくめた。
「無理に決まってるだろ。そんなことをさらっとこなすのはあの人くらいだよ」
最初に飛ばした風の神の使いだけでは処理できないことが前方で起きたのだろう。御使いを媒介にして法術を放つ神法士は警庁にもいるが、さすがに威力は通常より落ちる。しかし彼の術には制限が感じられない。
目の当たりにしたのはゲミノールム学院時代以来だが、あの頃よりさらに磨きがかかり、また進化しているようだ。
リリーの心臓が闇の下僕にとってどれほど貴重で必要なものか知らないが、自分なら彼の家族に手を出すことは絶対にしないと、マルクは頭をかきながら次の任務へ移った。
道案内役の風の神の使いが右手に首を振るのを見て、タウが単騎で右へとそれる。隠れていた闇の信者数名をあっさり倒して戻ってきたタウに驚嘆する間もなく、今度はラムダが左へ駆けて伏兵を片付ける。やや遠方から援護射撃を仕掛けようとしていた敵にはイオタが炎のつぶてを飛ばした。
よけいな邪魔を取り除いていくのが付き添う親たちの役目とはいえ、視界の悪さをものともしない鮮やかな連携だ。冒険をやめて久しいというのに、体に染みついた動き方は簡単には消えないらしい。
自分たちも彼らみたいになれるだろうか。互いの攻撃速度はわかるようになってきたが、まだまだ言葉による伝達は不可欠だ。
オルトの剣技は父親によく似ていた。リリーの母親が手伝いに行っている剣鍛錬所に通っていたそうだが、家でも父親と打ち合っているのだろう。
だから強いのだ。恵まれた環境と素質にあぐらをかかず、オルトは常に努力している。
ソールは己の手に視線を落とした。槍鍛錬所ではただひたすら振るうだけだった槍の先に、入学して初めて相手が見えた喜びは忘れられない。オルトは今の自分にとって、本当に唯一無二の好敵手だった。
欲張りだとなじられてもいい。オルトもリリーも手放したくない。もう遠慮はしないと決めたのだ。
不意に荷馬車に乗っていたルテウスが大地の法の文言を早口でつむいだ。馬車馬にかけられた『枷の法』を解除する。
闇の信者には大地の神法士が多いという。だから必ず『枷の法』がかけられるはずだと、ファイはルテウスに解除の練習を勧めた。敬愛する教官からの指示とあって、ルテウスは今日までみっちり訓練を重ね、その成果を存分に発揮している。それでもずっと気を張り詰めているので、さすがに疲労の色がのぞきつつあった。大地の法を使えるのはルテウスしかいないから、彼一人に責任がのしかかっているのだ。
また『枷の法』が発動された。今度は範囲法だと察したルテウスが即座に対応する。その間に飛来してきた闇の法術はイオタが炎ではね返したが、ようやく外した『枷の法』が新たに複数から仕掛けられ、ルテウスの表情が苦悶にゆがんだ。そのとき、後ろから現れた黄色く輝く半透明の猫がルテウスの肩に飛び乗り、敵方の術をまとめて霧散させた。
軽快な脚音は馬上の人間が軽いせいか。小柄なシータと並行して飛んできたファイに、ルテウスが安堵の笑みを広げた。
「よく一人でしのいでくれた」
後は引き受けるから少し休憩してくれと言って荷馬車に着地したファイのねぎらいに、ルテウスは素直に従った。本当に限界が近かったらしい。
「お疲れ様、ルテウス。すごかったね」
一回生とは思えないすばらしい活躍をセピアがほめたたえる。ファイに手渡された体力回復剤を飲み干し、ルテウスは長大息をついた。
「専攻が決まったとき、一番地味で楽な法術だって侮った過去の自分をしばきたい」
一度『盾の法』を使えば維持が主な仕事になるため、これほど短時間内で詠唱を繰り返す機会はめったにない。それを見事にやりとげたルテウスは、ぼやきながらも誇らしげだった。
まもなく大地の女神の礼拝堂の屋根が見えてきた。二人がとらわれている屋敷はすぐそばだ。
迎撃の数が一気に増えた。あちらも本気でつぶすつもりだとわかり、力を温存していたソールたちもいよいよ戦いに身を投じることになった。
事前にファイから護符と『砦の法』のかかった指輪が配られたとはいえ、その二回しか防げない。ファイとルテウスの防御範囲を離れるのはここというときにしぼる必要があった。
「あれだ!」
ラムダが叫ぶ。開かれた鉄門に目を向けたソールは、奥にリリーとオルトの姿を認めた。放たれる矢を剣で払いのけるオルトを、リリーが気にしながら走ってくる。
「門が……!」
閉まりはじめたことにレオンが声を上げる。それまで進路を妨害していた信者が一斉に身をひるがえした。撤退する気だ。
このままでは二人が挟み撃ちにされる。今度はルテウスが駆け戻る信者に『枷の法』をまとめてかけ、術を逃れた者はソールたちが打ち倒す。敵味方入り乱れながら鉄門へ急ぐ中、オルトが手持ちの長剣を横向きにして差しはさみ、扉の動きをとめた。先にリリーを突き飛ばす形で抜けさせる。後はオルトだけというところで重い鉄門の圧力に負け、剣が折れた。
「オルト!」
ソールは必死に走った。しかし目があったオルトは満足げな笑みの中にほんの少し苦みをにじませ、背を向けた。
へたり込んでいたリリーがよろめきながら立ち上がり、オルトのほうへ行こうとする。ようやくたどり着いたソールの眼前で無情な轟音を響かせ、鉄門は閉じられた。
続きは2月以降に投稿予定です。




