(2)
ついてこいと命じられて向かった先は、地下牢だった。薄暗く湿った狭い牢内で、壁際に座り込んで膝をかかえているのは、青い法衣をまとった一人の少女。
「あーあ、完全に拒否かよ。飢え死にするつもりか?」
昨日も今朝も用意された食事に少女がまったく手をつけていないのを見て、グラノが舌打ちした。
「おいリリー、お前の恋しいソールを刺した奴を連れてきてやったぞ」
長い髪の少女がぴくりと肩を揺らした。
リリー。
グラノは彼女をそう呼んだ。
自分はその名を知っている。
誰よりも大事な――大事な……。
「風の法で切り刻みたいよなあ。声が出なくて本当に残念だなあ」
グラノの挑発に、ずっと顔を伏せていた少女がゆらりとこちらを見た。
おそらく一睡もしていないのだろう、涙ににごった薄緑色の双眸と絶望に打ちひしがれたその表情を目にしたとき、オルトは凝然となった。
“大丈夫だよ。リリーのお母さんは無事だったんだから、もう怖がらなくていいの”
呼吸が乱れる。体がひやりとし、汗が滑り落ちた。
あれは――幼馴染の……声。
そうだ。彼女の母親は一命をとりとめた。それでも彼女は縮こまり、自分を責める苦しみから抜けようとしなかった。
“もう泣かないで、リリー。私たちがついてるわ。ねえ、オルト?”
“ああ、俺たちがずっとそばにいる。これからも、何があっても、お前は俺たちを傷つけない。俺たちもお前を傷つけない。だから心配するな”
なぐさめも励ましも届かない。彼女はかぶりを振るばかりだった。
“私のせいなの。私がお母さんを――”
ドンッ、と激しい衝撃が心臓を殴りつけ、耐えがたいほどの頭痛が走った。
「つっ……う……あ」
頭をかかえてその場にしゃがみ込んだオルトに、グラノがあきれたさまで吐き捨てた。
「何だ、もう洗脳が解けたのか。リリーの泣き顔で正気に戻るなんて、どんだけリリーが好きなんだよ」
嘲笑が、混乱と明瞭を繰り返す意識を揺さぶる。
「でも気の毒にな。リリーはお前のことが好きじゃない。それどころか、大嫌いだ」
鍵の開く音がして、オルトは牢内に蹴り込まれた。再び格子戸の閉まる気配がする。
「いってえ……」
顔や手を床ですり、オルトはうめきながら身を起こした。
ここはどこだ。
自分はいったい、何をしていたのか。
まだおさまらない頭痛に顔をしかめたオルトは、目の前でこわばっているリリーを見た。
「リリー?」
びくりとリリーが身を引く。あきらかに自分を恐れている様子にオルトは困惑した。
なぜだ。自分は知らないうちにリリーに何かしたのか。
四つん這いでそろりと一歩近づこうとしたオルトに、リリーは尻を滑らせて後ずさる。胸元を押さえて警戒のまなざしをそそぐリリーに、オルトは傷ついた。
「何があったんだ」
リリーは言葉を発しない。ただ眉間に深いしわを寄せ、涙ぐんでいる。
「聞いてもむだだぞ。リリーはしゃべれない。法術を使えないよう、声を封じたからな」
「何だって!?」
オルトはグラノをふり向き、にらみつけた。
「お前、なんでそんなことをしたんだ!? ここはどこだ? 俺たちをどうする気だ!?」
鉄格子をにぎりしめてわめくオルトに、グラノは鼻を鳴らした。
「うるさい奴だな。まあ、お前にはもう用はないから、どうしようとどうでもいいけどな」
舌なめずりをして、グラノは黄色い瞳を細めた。
「俺たちが欲しいのはリリーの心臓だ。お前のことはずっと邪魔だと思っていたが、最後の最後で本当に役に立ってくれたよ」
「リリーの……心臓?」
オルトははっとした。
「お前、暗黒神の信者だったのか!?」
「信者? はっ、俺はそんな下っ端じゃねえよ」
ガンッと鉄格子を蹴りつけ、グラノは胸をはった。
「俺は始祖の血統に連なる者だ」
グラノの告白にオルトは瞠目した。
始祖の血統――グラノは闇の賢者スキアー・アペイロンの子孫?
ブレイとモスカだけではなかったのか。あの二人が逃走してほっとしていたのに、まさか自分の身近にもう一人いたとは。
ずっとだまされていた。グラノは最初から、リリーを連れ去るために自分と親しくなったのだろう。
オルトはうつむき、歯がみした。
覚えているのは、グラノの家で夕食を馳走になったところまでだ。
リリーをソールから引き離す方法があると誘われて、それを真に受けてのこのこついていってしまった。
先程グラノは洗脳が解けたと言っていた。つまり自分は今までグラノに操られていたということだ。
「俺がリリーの誘拐にかかわったのか」
だからリリーは怖がっているのか。
「それだけならまだましだったかもな。お前はソールを殺したんだよ」
「なっ……」
嘘だ、と叫びかけて飲み込む。不意に脳裏に浮かんだ映像にオルトはわなないた。
(俺が殺した……ソールを?)
「お前は、お前の剣で、リリーの目の前で、ソールを刺し殺したんだよ」
一言ずつはっきりとグラノが答える。とても嬉しそうに。
「さすが剣専攻一回生代表。見事な狙いだったぞ」
オルトは自分のてのひらを見下ろした。
感触がじわりとよみがえる。あれは夢ではなかったのだ。
ソールの胸を貫いたのは、確かに自分の剣だった。
自分が、この手で――。
「お前のやったことは、通常なら信者として申し分のない働きだった。でも俺はお前を仲間にするつもりはない。お前の意識を奪って生涯こき使うのも悪くはないが、リリーの心臓が取り上げられるのをその目でしっかり見たほうが、お前にはいい思い出になるだろう。だから血の祝福は与えず、洗脳だけでとめておいてやったんだ」
正気に戻る可能性を残した俺の優しさに感謝しろよなと、グラノは下卑た笑いを広げた。
「儀式の日まで一緒にいさせてやるよ。そこで好きな女に拒絶され蔑まれて過ごせばいい」
ざまあみろと最後に言い放ち、グラノは去っていった。
「……俺は……ソール、を」
頭を鉄格子に押しつけ、唇をかむ。血の味がしたことで記憶の中のソールが赤く染まり、オルトはうなりながら何度も格子で頭を打った。
殺したかったわけじゃない。ただ、リリーを取られたくなかっただけなのに。
いや、本当は憎かったのか。自分たちの前からいなくなってほしいと、心の底で望んだ結果がこれか。
「……すまん……ソール……」
あやまちでは片付けられないほど、取り返しのつかないことをした。
こらえきれない嗚咽があふれそうになったとき、背後で服のすれる音がした。身じろぐリリーの気配に、オルトは息を詰めた。
今はとても、ふり返る勇気がなかった――。
キュグニー家の居間は休日にもかかわらず、朝から重い空気が漂っていた。
向き合って座るのはキュグニー夫妻にカエリ―夫妻、アーラエ夫妻、そして帰省で偶然立ち寄ったロー・ケーティ。
「……本当に、何とお詫びをしたらいいか」
額を押さえてうつむくイオタはすっかり憔悴している。隣に座るミューがイオタの肩をそっと抱いた。
「オルトが闇に落ちたのは我々の責任だ。あやまってすむ問題でないのはわかっているが……申し訳ない」
深々と頭を下げるタウに、シータは真ん中の長机に広げた地図を見つめたまま考え込んでいるファイをちらりと見た。タウの隣のラムダもファイに視線をそそいでいる。ラムダも表情はけわしかったが、カエリ―夫妻よりはまだ希望を捨てていない様子だった。
やがて、ずっと沈黙していたファイが皆を見回した。
「オルトはおそらく完全には落ちていない。今の時点であの子たちの玉が消えていないのなら、こちらへ引き戻すことは可能なはずだ」
「残り二つまできておいて壊れるような絆ではないよ。子供たちを信じよう」というファイの励ましに、シータとラムダ、ミューが破顔する。タウはイオタの手をにぎり、うなずきあった。
「あれから何度か御使いを飛ばしてみたが、リリーたちの居場所はつかめなかった。ただ、必ずフォーンの町から北へ向かうにつれて気配が薄くなって、首都アーリストンに着く頃にはわからなくなるんだ。途中まで追跡したルテウスの御使いはフォーンの町を出る直前に消されたそうだが、ルテウスの御使いも僕の御使いもこの道をたどっている」
ファイが指で一本の道をなぞる。少し離れた場所で大人の話し合いを眺めていたセピアたちも集まり、一緒に地図を見た。
「ここから首都をつなぐ道を毎回素通りしているのが引っかかる。すでに別の場所へ移された可能性も否定できないが、もし今もまだとどまっているのだとしたら――」
ファイが指し示した地名をセピアが読んだ。
「メンブルム……」
一番に反応したのはフォルマだった。
「ブレイの故郷です。家は教えてもらえなかったけど、グラノも闇の下僕ならメンブルムに拠点があるのかも」
「たしかあそこにある大地の女神の礼拝堂は、神法院から派遣される者ではなく、メンブルムで生まれ育った者が代々神官に就任していたはずだ」
カロ市長の息子で現在は国の政務官を務めるローが腕組をして、長椅子の背もたれに寄りかかった。
「ずいぶん古くになされた取り決めだから理由まではわからないが……ちょっと気になるな」
さぐってみようかとローがファイに流し目を送ったところで、部屋の扉がたたかれた。
「すみません、遅れました。応答がなかったので勝手に入らせてもらいました」
鳥籠を手に現れたソールに、イオタがびくりとする。気まずげなイオタをうながし、タウは腰を上げた。
「けがは大丈夫か? 後遺症もないだろうか?」
イオタとともに歩み寄ったタウの問いかけに、ソールは微笑した。
「心配をかけました。もう何の問題もないので気にしないでください」
「本当にすまなかった」
カエリ―夫妻は丁寧にお辞儀をした。
「オルトとリリーを助け出す手伝いを俺にもさせてください。オルトがいないと、俺は張り合いがなくて困るんです」
今後もオルトとは互いを高め合える関係でいたいと答えるソールにイオタは涙を流し、タウも「ありがとう」と瞳をやわらげた。
「ソール、その鳥ってもしかして……」
「俺が連れ帰った鳥だ」
セピアに聞かれ、かかえた鳥籠を見てソールが告げると、レオンたちがわっと囲んだ。
「本当に青くなったんだね」
「名前は何ていうの?」
「ファイルフェンだ」
複数人から名を呼ばれ、青い鳥は落ち着きなくとまり木で足踏みしている。鳥籠をそっと長机の端に置き、ソールはキュグニー夫妻を見やった。
「リリーの部屋に青い羽根がないか確認してもらえますか? 俺が渡したやつなんですが、もしリリーが今持っているなら、リリーと交信できるってこいつが言ってて」
全員が瞠目した。
「嘘、そんなことできるの!?」
「それ、めちゃくちゃすごいじゃないか」
子供たちが騒ぐ中、こぶしを口に当ててじっと小鳥を凝視していたファイが一つうなずいた。
「確かに『オーキュスの青い羽根』なら可能かもしれない。御使いに託された伝言は本来、守護神が同じで神法士の能力をもつ者にしか聞き取れないが、これがあれば素質のない者も声を聞くことができる。この鳥が御使いの役割を果たすことで、こちらの意思を相手に届ける図式が成り立つ」
フィストゥラ・オーキュスが御使いになった鳥の羽根を所持していたことで、羽根にその効果が付加されたというファイの説明に、子供たちは感嘆のため息をこぼした。
「まだ調べがたりてなかったな」
『オーキュスの青い羽根』にそんな使い方があったとはと、ルテウスが悔しそうに口の端を曲げる。
「下等学院の図書館で閲覧できる書物は、神法学院に比べれば入門寄りのものが多いからね」
神法学院に入学すればもっと深く学べることがたくさんあるよとファイに知的好奇心をつつかれ、ルテウスは瞳を輝かせた。
ファイが頼むより先にシータが二階へ上がる。しばらくガタガタ物音がして、シータは下りてきた。
「部屋にはないみたい。たぶん、ポケットに入れていったんだわ」
きっとソールにもらったものだから肌身離さず持ち歩いているのねと笑うシータに、ソールの頬が薄く色づいた。
「でも御使いをはじくようなところなのに、うまくいくかしら?」
イオタの不安をファイは払いのけた。
「持ち込まれたものを媒介にするなら通る可能性は高い。試してみる価値は十分にある」
ファイに手招きされ、ソールは籠から鳥を出してファイの隣に腰かけた。
「ファイルフェン、準備はいいか?」
『イツデモイイヨ』
ソールの腕にとまった小鳥は、ソールを見上げた。
『僕ニ触ッテ。強ク念ジテ』
ソールは言われたとおり鳥にそっと触れ、目を閉じた。まもなく、鳥からゆらりと湯気のように青白い光が立ち昇りはじめた。
自分から鉄格子に繰り返し頭を打ちつけた後、オルトは動かなくなった。
大きな背中がかすかに震えている。泣いているのだとわかり、リリーも目頭が熱くなった。
オルトは正気を取り戻した。そして、しでかしたことをひどく悔いている。
自分の心臓を取り除く儀式がおこなわれれば、オルトはもっともっと罪悪感に見舞われるだろう。そのためにオルトを信者にしなかったのだとグラノは言っていたから。
言葉の端々から、グラノが度を超した憎しみをかかえているのが感じられた。
なぜグラノはオルトに怒りをぶつけるのだろう。同じ専攻内で過ごす間に何か揉めたにしては、グラノがむき出す感情は根深い気がする。
アペイロンの心臓の代替品にされるなど、想像するだけでぞっとした。そんな目にあうくらいなら、今ここで命をたつことも頭のすみをよぎった。
『死』がソールを連想し、リリーはくたりと壁にもたれた。もう気力がわかない。何としても脱出しよう、生きのびようと奮い立つことができない。
ソールはいない。手の届かないところに行ってしまったのだ。
それでもオルトを責められない。セピアと三人で過ごしてきた時間は、間違いなくかけがえのない宝物だった。自分がつらかったとき、オルトはずっとそばで支えてくれたのだ。
ただただ苦しい。悲しい。
七人の絆が――そこでリリーははっとした。おそるおそるポケットをさぐると、青い羽根をくるんだ布のそばでかたくて丸い感触がした。
てのひらの上で転がる緑色の玉を見て、リリーは歓喜に高揚した。
声は出せないので這ってオルトに近づく。自分の気配を察したらしいオルトがびくりと縮こまった。
罵倒されるのを恐れたのか、オルトはふり向かない。その腕にそっと触れると、しばししてようやくそろそろとオルトが肩越しにかえりみた。
自責と悲嘆に染まった赤い双眸は、リリーが笑っていることに怪訝な色を浮かべた。
「リリー……?」
尋ねるオルトの前で、リリーはてのひらを開いた。
「――玉が」
目をみはり、それからオルトはぱっと顔を上げた。
「消えていないのか。ということは、俺たちの絆は切れていない? ソールは……生きている!」
「やった!」と叫んでオルトはリリーを抱きしめた。あまりの強さに息がとまりそうになったが、よかった、よかったと何度もつぶやくオルトの涙声に涙腺を刺激され、リリーもきゅっと抱擁を返した。
「ごめん、ごめんなリリー。俺のせいでこんな目に……でも絶対にお前を守るから。お前だけは助けるから」
切実な響きのある決意に、オルトも一緒に逃げるんだよとリリーは言おうとして、ふとポケットにぬくもりを感じた。オルトの背中をパタパタたたいて合図を送り、その腕から抜け出たリリーは、ポケットに入れていた布を取り出した。布をひらいてみると、青い羽根が青白い光を薄くゆらめかせていた。
不思議そうに首をかしげるオルトに人差し指を立て、リリーは膝に布ごと羽根を置き、左手で触れた。
“――リー……”
“聞こえるか、リリー?”
これは――この声は。
“ソール!?”
言葉の代わりに念で答えると、安堵の吐息が伝わってきた。
“つながった。無事か、リリー?”
“うん……うん。ソールは平気? けがは?”
“俺も大丈夫だ。一度天空の門までは行ったが、母さんに足どめされている間にキルが迎えに来て、生き返った”
(ああ……)
リリーはぽろぽろと涙をこぼした。
やはりソールは生きていた。あやうい状態だったが、魂が体に戻ったのだ。
リリーは青い羽根に手を置いたまま、右手でオルトのてのひらに文字を書いた。通信がソールからだと知り、オルトも息をのむ。
“今どこにいる?”
“わからない。暗黒神の信者の隠れ家みたいだけど……私は地下牢にいるの。オルトも一緒よ”
オルトが正気に戻ったことを報告すると、そうかと応じたソールの声がはずんだ。
ソールはオルトを恨んでいない。ソールとオルトはきっと和解できるという期待に、リリーは胸をなでおろした。
それからリリーはグラノの言ったことを話した。儀式まではここで監禁されるようだと説明すると、ソールの口調がややけわしくなった。
“儀式の日はいつだ?”
その点についてはグラノは具体的に言及していなかった。印象としてはさほど遠くない感じを受けたことを述べると、しばらく沈黙があった。
“今ここにみんなそろっている。リリーの父さんたちと協力して、お前もオルトも必ず救い出すから”
“うん”
“首飾りは持っているかとリリーの父さんが言ってる”
“しっかり身につけてるよ。おかげでグラノは私に直接さわれないの”
父もソールのそばにいると知り、リリーは心強く思った。父の隣には母もいるはずだ。
早く帰りたい。父と母に抱き着いて、そのぬくもりに安心したい。そして――。
“ソールに、会いたいな”
ぽつりと念でこぼすと、一呼吸おいてソールのやわらかい声が届いた。
“俺も”
とくん、と鼓動がはねる。短い言葉の中に優しさと熱を感じ取り、リリーは鼻をすすった。
“悪い、ファイルフェンが疲れたそうだ。けっこう負担がかかるらしくて……また連絡する”
“うん……”
もう終わりかと思うと、急に寂しさが押し寄せてきた。
すがりつきたいのをこらえるリリーに、ソールが告げた。
“俺たちが行くまで何とか耐えてくれ。お前に伝えていないことを、ちゃんと顔をあわせて、自分の口で言いたい”
“……うん。待ってる”
とまりかけていた涙が視界を揺らす。交信が途絶えてからも、リリーは青い羽根に触れたまましばらくぼんやりとしていた。
「リリー?」
オルトの遠慮がちな呼びかけにはっと我に返り、リリーは青い羽根を再び布で包んでポケットにしまった。万が一グラノに見つかって取り上げられると困る。
リリーはオルトの手を取り、文字を書いた。
ソールが生き返ったいきさつ、そしてみんなが自分たちの居場所をつきとめようとしていることを話す。
ソールはオルトの洗脳が解けたことを喜んでいるから、必ず仲直りできる。自分もオルトも助けると約束してくれたと指で記すと、オルトも涙目になった。
――頑張ろうね
最後にリリーがきゅっとオルトの手をにぎると、オルトは笑みを浮かべて「ああ」と力強くうなずいた。
太陽の光がささない地下牢で、リリーは興奮と希望に胸をふくらませた。
グラノたちの思い通りにはさせない。
絶対にここから脱出するのだと。




