(10)
自分の寝台にぱたりと倒れ込むなり眠ってしまったリリーは、昼前に母に揺り起こされた。父も母も睡眠不足をものともせず、早い時間から精力的に活動していたらしい。
朝食をかねた昼食をとったリリーは、父から渡された薬を一息に飲み干した。ひやりと冷たい感触がのどを通り過ぎると、何日も続いていた腫れと痛みが消え、リリーはようやく声を出せるようになった。
ちょうどセピアも現れたので、両親とセピアにこれまでのことを語る。捕まってすぐの頃はもう二度とみんなに会えないかもしれないと思っていただけに、こうしてまた過ごせる平穏な時間をリリーはかみしめた。
翌日、登校したリリーは完全復活を仲間に喜ばれ、同専攻生にも囲まれた。リリーが大変な目にあっていたことをロードン教官から内密に聞かされていた風の法専攻一回生たちは、無事の生還に涙し、ささやかながらお祝いの会を開いた。
学院祭までもう一週間を切っていたため、それからのリリーは休んでいた間の授業内容の確認と演舞の練習に追われた。ルテウスのしごきに必死についていく毎日に疲弊して頭が回らず、いつも夕方にはパン屋や剣鍛錬所の手伝いから帰ってくる母が数日間遅かったことも疑問に思わないほどだった。
そして学院祭の前日、どうにか昼食を一緒にとることができた七人に、グラノが会いにきたよとキルクルスが報告した。あれから警兵の探索をのがれ、一族や信者は身をひそめているという。
意図的ではなくともブレイを射殺してしまったモスカの処罰は、出産まで保留されることになった。そして大導師はグラノに導師の修行を命じた。もともと大導師は皆ほどグラノを蔑視していなかったので、グラノも大きな反発はせず指示に従ったが、大導師の心にグラノを将来一族の長として据える考えが芽生えたと噂されるやいなや、自分こそグラノの父だと名乗り出る男が続出し、同年代の少女が群がり媚びるようになった。
祖父の処刑から長きにわたってしまい込まれていた黒き刃の帯剣も許可されたグラノは、これまでさんざん罵声を浴びせてきた連中が手のひらを返したことに冷笑した。そして、いっそのこと種をばらまいて後継者争いを引き起こしてやろうかとも思ったが、どれだけ目の前で裸体をさらされても何の興奮も覚えず、むしろ鬱陶しくなってやめたと、グラノは誰かを偲ぶようなまなざしを遠くへ投げた。
もし自分ではなく、モスカが産むブレイの子が上に立つと決まったら、自分もキルクルスの世話になろうかなと笑ってグラノは去っていったという。そっちの側は案外楽しかったからさ、と。
話を聞いたオルトは露骨に眉をひそめ、勘弁してくれとぼやいたが、セピアは薄紫色の瞳を揺らしていた。ただ思いを言葉にすることはしなかった。
学院祭当日。まずは大会堂で開式の儀がおこなわれた。下等四学院と神法学院、武闘館の学院長や教官、生徒代表が来賓として着席している前で、ヘリオトロープ学院長が無事に開催できる喜びを語る。今年度をもって退職を明言しているヘリオトロープ学院長のあいさつに、場内から盛大な拍手が贈られた。
開式の儀が終われば、学院内のあちこちで催しが始まる。生徒たちはそれぞれ持ち場につき、教養学科生が営む店も営業を開始したが、多くの客は乗馬場へ流れた。神法学科一回生による演舞が披露されるからだ。
「うわあ、すごい人だね」
「どうしよう、緊張がとまらないよ」
乗馬場を埋めつくす人々を見て、色とりどりの衣装に着替えた一回生は皆、落ち着かなげにしている。風の法専攻一回生代表のエラルドなどはすっかり青ざめ、何度も自分の動きを描いた紙を見ていた。
そのとき、ルテウスが二度大きく手を打った。
「自信のない奴は今ここで出るのをやめて引っ込んでろ! きちんとできる奴の迷惑だっ」
「ちょっと、ルテウス……」
叱り口調のルテウスをセピアがいさめようとしたが、ルテウスはさらに続けた。
「俺たちは絶対に成功する。それだけの練習を積んできたんだ。少なくとも、俺は昨日の最終練習で『こいつはいらん』と思った奴はいなかったぞ」
生徒たちが互いを見合う。レオンがぷっと吹き出した。
「すごいね、みんな。ルテウスにほめられたよ」
完璧主義で指導の厳しいルテウスに認められたと言われ、ざわめきが広がった。皆の表情が高揚に輝きはじめる。
「じゃあ、『花冠の乙女』役の二人からも一言」
レオンの呼びかけに、リリーとチュリブは「えっ」ととまどったが、注目されて一歩前へ出た。
「大丈夫!」
「みんなで楽しもうね!」
二人が両のこぶしを胸の前でにぎる。ありきたりな励ましではあったが、だからこそ素直に胸に響いたようで、神法学科一回生全員が「おうっ!」と声をそろえてこぶしを高々と突き上げた。
乗馬場のすみで待機している楽隊にレオンが合図を送る。にぎやかな音色とともに、まず水の法専攻生と炎の法専攻生が滑らかに入場した。
二専攻の生徒が踊りながら乗馬場いっぱいに散るのを追っていた観客の視線は、遅れて空へと飛び出した風の法専攻生へ移った。各専攻の旗をはためかせて滑空する風の法専攻生は、衝突するかしないかというギリギリのすれ違いを全速力で繰り返し、人々の頭上をもかすめて喝采を浴びた。
次に赤い旗と銀色の旗が風の法専攻生からレオンとセピアの手に落とされると、二人の旗振りにあわせ、二専攻の生徒があちこちに炎と水の輪をつくりあげた。そこへ登場したのは大地の法専攻生と女神の使いだ。気取ったしぐさで歩く猫はとても小さく、半透明のかわいらしい子猫にほうとため息が漏れたのもつかのま、連なる御使いの体格は徐々に大きくなっていき、ついには大人をもゆうに超える巨躯になった。
大地の法専攻生がダンスに加わり、ルテウスが黄色い旗を受け取って器用にくるくる回転させると、猫たちが赤と銀色の輪を次々にくぐりはじめた。一つの輪が消えるとまた新しい輪が生まれる。技量の個人差をどうするかは問題の一つだったが、御使いも輪も大きさや継続性に差があれば逆に変化を感じて飽きないだろうとルテウスは判断した。そろったほうが調和がとれると一番に言いそうだったルテウスの意外な意見に、リリーたちは目を丸くしたが、力不足を演出として見せる形で補うルテウスの案のおかげで、誰もが今できる最大限の技でのぞむことができた。
何度か輪をくぐるうちに御使いも輪も数を減らしていき、ついに最も大きな輪と御使いが姿を消したところで、曲調がゆるやかなものに変わる。女生徒がさあっと出入口へ戻っていくのを見て、もう終わりかと残念がる声が増えたとき、花冠を手に再登場した女生徒に囲まれて、着飾った二人の少女が現れた。リリーとチュリブだ。
青を基調としたすその長いドレス姿のリリーと赤を基調としたチュリブが舞うのにあわせ、周りの少女たちも律動的なダンスの輪を再び広げていく。
「花冠が欲しいのだあれ?」
「乙女の祝福、欲しいのだあれ?」
女生徒の軽快な問いかけに男子生徒が手拍子をつける。歌声が大合唱になるにつれ、手拍子もどんどん膨れ上がった。
「花冠が欲しいのだあれ?」
「乙女の祝福、欲しいのだあれ?」
「はいっ!」と挙手したのは小さな女の子だった。一番近かった女生徒がにっこり笑って女の子の頭に花冠を乗せると、もらえるとわかってたくさんの手が挙がった。しかし数には限りがある。特に後ろのほうの見物客はなかなかもらえず、ついに子供が泣きだしたとき、神法学科一回生が全員で歌った。
「祝福の花、みんなに届け!」
チュリブが手持ちの特別大きな花冠を高く放り上げた。リリーが風を起こし、ばらばらになった花冠の花びらが乗馬場全体に散る。おかげで花弁はほぼすべての人の手に行き渡った。
取れたぞと花びらをつまんではしゃぐ武闘学科や教養学科生の中にソールとオルトもいて、リリーはほっとした。これから代表戦に出場する二人にはぜひとも贈りたかったのだ。
こうして大きな拍手と歓声のもと、神法学科一回生は無事に演舞を終了させた。
「大好評でよかったね」
着替えて大会堂へ向かいながら、ルテウスのしごきに耐えたかいがあったと笑うセピアに、「まあ、上出来だな」とルテウスも満足げにうなずく。
「僕は花冠を配る役をしたかったから、ちょっと残念だな」
『花冠の乙女』もやりたかったのにとぼやくキルクルスに、「確かにキルの票は二人の次点だったもんね」とレオンが笑った。
代表は旗を受け取る役があるのでセピアを除き、『花冠の乙女』は投票で決めた。最初はやってみたいと立候補する女生徒が複数いたものの、乙女役は振り付けに繰り返しがなく覚えるだけでも大変とわかり、本番で失敗するとルテウスに怒涛の叱責をくらいそうだと恐れてみんな逃げたのだ。
押し付け合いで進まないことに業を煮やしたルテウスが、「はいはい! 僕がやる!」と言い続けているキルクルスを無視して「投票だ!」と叫び、さっさと紙を配った。結果、リリーとチュリブが生贄にされたのだ。
もう無理、きついと二人で愚痴をこぼしつつ猛練習した日々だったが、今日ようやく報われたとリリーも息をついた。
「さあ、次はいよいよ代表戦だね。今度こそ決着がつくかな」
自分たちと同じように会場へ急ぐ人波を見やるレオンに、フォルマが微笑した。
「二人ともこの一週間で調子が戻ったみたいだし、いい勝負になるだろうね」
フォルマはさすがにまだ完全に立ち直ってはいないようで、時々一人でぼんやり過ごしていることがある。それでも、いつか必ず会えるというキルクルスの言葉を心の支えに、少しずつ前へ進む努力をしているらしい。
大会堂はすでに大勢の人が詰めかけていた。どうにかすきまをぬって勝負が見える場所に六人がたどり着いてまもなく、審判を務めるカルタ教官とドムス教官が所定の位置に立った。
「これより代表戦をおこなう! 剣専攻一回生代表、オルト・カエリ―!」
「槍専攻一回生代表、ソール・ドムス!」
呼ばれた二人が鎧姿で進み出る。耳を覆いたくなるほどのすさまじい声援なのに、ふり返りもしない。お互いしか見えていないのだ。
この一週間、リリーはどちらともまともに会話をしていなかった。前日の昼食時は食べながら自分の演技を頭の中で繰り返していたし、オルトとソールも口数が少なかったように思う。
まだ二人とも玉が手に入っていないみたいだとセピアが気にしていた。試練を終えれば、たいてい数日中には現れるのにと。
もしかして、この試合で何か起きるのだろうか。
嫌なことでなければいい。祈る気持ちで、リリーは胸の前で指を組み合わせた。
合図とともに、二人が同時に動いた。
間近で見るのは模擬戦以来だが、気迫のこもった打ち合いに憂いなど吹き飛び、引き込まれていく。
放たれる金属音は強く、重い。激しいのに不思議と美しさも感じるのは、一振り一振りにぶれがないせいだろうか。油断なく確実に相手の打撃になるところを狙う正確さが伝わってきて、見ていて気持ちがいい。
予想通りの接戦に、応援する手に自然と力が入る。ほんの一瞬で勝負が決まるかもしれない状況に、まばたきすらできなかった。一方が押されるということもない。本当に互角だったのだ。
両教官の手が挙がりはじめる。やはり今回も引き分けかと思った刹那、ソールが踏み込んだ。
入学するまで母について鍛錬所で見学していたから、ソールの攻撃が向こう見ずな力業だとリリーにもわかった。ソールらしくない一撃はオルトをも驚かせたらしい。そのわずかなすきをかいくぐり、ソールの槍が押し込まれた。
ぱあっと護符が光る。オルトの胸を目がけたソールの一突きが決まり、カルタ教官がさっと手を挙げた。
「勝者、槍専攻ソール・ドムス!」
沈黙後、大歓声がはじけた。初めて分かれた勝敗に大会堂が騒然となる。
興奮のあまり泣いている女生徒、店番で試合を見られない同期生に結果を知らせに走る男子生徒と、周囲でさまざまな動きが入り交じる中、リリーは微動だにできなかった。
オルトとソールが抱き合って背中をたたき、互いを称える。それから二人は離れ、最初の位置でそれぞれ剣と槍を立てて礼をとった。
自分たちの代表をねぎらうべく、専攻生がわっと囲む。どちらが勝ってもおかしくなかっただけに、剣専攻側も笑顔だった。みんな見応えのある勝負を堪能できたことを喜び、二人に対し感謝の言葉があふれ返った。
二回生の代表が前へ出たことを受け、ソールとオルトが大会堂を後にする。リリーもセピアにうながされ、二人を追った。
「オルト、お疲れ様!」
大会堂を出てすぐの場所で空をあおいでいたオルトに、まずセピアが声をかける。ソールの姿はなかった。
「すごくいい試合だっだね」
「めちゃくちゃ感動したよ」
口々にほめちぎる仲間に、オルトは金髪をかきなでた。
「ああ、でも負けたのはやっぱり悔しいな」
「ソールが今までにない出方をしたからね」
フォルマのなぐさめに、オルトが「あれにはまいった」と苦笑する。そのまま皆で感想を言い合っていると、オルトがリリーをかえりみた。
「リリー、ソールのもとへ行ってやれ」
はっとリリーはオルトを見返した。
「今まであいつを押さえつけていたのは俺なんだ。お前を取られたくなくて……あいつは俺に遠慮して、しなくていい我慢をずっとしてた」
腰にさしている自分の剣の柄を一度ひとなでし、オルトはリリーに微笑んだ。
「俺、変わるから。リリーともソールとも、今よりもっといい関係を築けるようにしたい。だから、ソールのところに行け、リリー」
「……うん。ありがとう、オルト」
リリーも顔をほころばせ、ソールが去ったほうをオルトに聞いて走った。
中央棟へ続く通路も人が多かったが、一人だけ鎧を着ているのでソールはすぐに見つかった。ただ、ソールが自分の母と向き合って話していることにリリーはいぶかった。
先にシータがリリーに気づいて手を振る。そしてソールのお辞儀に笑顔で応え、シータは去っていった。
「あ、えっと、お疲れ様」
おめでとうと伝えると、ソールも「ああ」と黄赤色の瞳をやわらげた。
「今回はリリーの母さんに助けてもらったんだ」
リリーの疑問を察したのか、木陰へリリーを導いて、ソールは話を始めた。
「引き分けじゃなく、どうしてもオルトに勝つ必要があったから、鍛錬に付き合ってもらってた」
首をかしげ、ようやくリリーは最近母の帰宅が遅かったことを思い出した。
リリーとオルトを救出した後、ソールは放課後にパン屋の店番をしているシータを訪ね、力を貸してほしいと頼んだという。
すべては代表戦で勝利をつかむために。剣との戦い方をよりしっかり学び、慣れるために。
「いざ本番にのぞんでみたら、オルトもきっちり対策をしてきていたからかなり厳しい戦いになったが…どうしてもだめなら、今までの真っ向勝負で使わなかったやり方を思い切ってしてみろと助言されてて、最後は返り討ち覚悟で突っ込んだ」
無謀すぎて、オルトが相手では二度と使えない手だなと、ソールは小さく笑った。
「どうしても勝ちたかった理由って……?」
「賭けをしたんだ。俺が勝ったら、リリーに告白する権利をくれって」
ソールの返答に、リリーは目をみはった。
「許すも何もないってオルトは言ってたけどな。でも長年リリーを守ってきたオルトを倒せるくらいの人間じゃないと、任せてもらえないだろうから。オルトも本音はやっぱり譲りたくなかったのか、まったくの手加減なしだったし」
本気で戦ってくれたことを嬉しそうに語り、ソールはリリーを見つめた。
「一度断っておいて今更って思われるかもしれないが……父さんからお前のことを聞いて、入学試験で見かけたときから、ずっと気になってた。一緒に冒険するようになって、お前の存在がどんどん大きくなって……途中であきらめようとしたけど、できなかった」
ソールの言葉の一つ一つが胸に染み込んでくる。
心が震えてとまらない。
「俺はお前が好きだ。もっとそばにいたいし、話したいし、触れたい。誰よりも、どんなときも大事にする。だから――」
たまらずリリーはソールに抱き着いた。鎧はかたくひんやりしていたが、熱く高ぶった感情は静まらない。
まるでグラノに薬を振りまかれたときのように、声が出なかった。でも今わき上がってくるのは絶望感ではなく、至上の喜びだ。
ソールが抱きしめ返してくる。いつものさりげない優しさではなく、燃え立つ想いが流れ込んでくるような力強さで。
「好きだ、リリー」
こんな一面があるのだ。こんなにまっすぐぶつかってきてくれる人だったのだ。
「私も、好き」
嬉しくて。嬉しすぎて。
つかえていた言葉をようやく吐き出せたリリーは、今ここで得られた幸せに涙をこぼした。
木陰とはいえ、もともと注目されやすい二人だったので、気がつけば遠巻きに人だかりができていた。大勢の生徒に抱擁を目撃されてお互い急に照れが生じ、ひとまずソールは着替えることになった。
更衣室の外で待つと言うリリーに、変な奴に絡まれるといけないから先にセピアたちに合流したほうがいいとソールが勧める。いきなり過保護になったソールに困惑するやらおかしいやらだったが、確かに一人でいると二人の関係を追及したい人たちに囲まれそうだなと思い直し、リリーは素直に従うことにした。
そして二人で歩きはじめたところで、ソールが不意に眉をひそめて立ちどまった。
「ソール、どうかしたの?」
「ああ、ちょっと何か……」
鎧の上から胸のあたりを押さえるソールにリリーも首をかしげたとき、二人を呼ぶ声がした。
「リリー! ソール!」
大きく手を振って駆けてくるのはセピアたちだ。何事かと目を丸くするリリーの手をセピアが両手で包んだ。
「オルトに玉が現れたの!」
「えっ」と驚くリリーに、オルトがてのひらを開いてみせる。そこには赤く輝く玉があった。
「オルトも無事に達成よ。あとはソールだけ」
みんなの視線がソールに集まる。オルトの玉を凝視していたソールは「悪い、すぐ更衣室に行ってくる」と身をひるがえした。
「ソール!?」
一人だけ玉がないことに動揺して逃げたというわけではなさそうだが、気になる。後を追うリリーにつられてみんなも走った。
更衣室から乱暴に鎧を脱ぐ音が聞こえ、まもなくソールが出てきた。
「やっぱりだった」
ソールが笑顔で黄赤色の玉をつまみ、みんなに見せる。
「鎧の下で何かゴロゴロしているものがあったから、もしかしてって思ったんだ」
「ということは――」
レオンのつぶやきを継いでセピアが叫んだ。
「全部そろったんだわ!」
「やった!」と狂喜の悲鳴をあげ、七人は手をたたきあった。
「もう本当に心配してたのよ。あんな大変なことがあったのに、まだ二人の試練が続くのかなって」
セピアが涙がぬぐう。そして全員がそれぞれの玉を出したとき、脳裏に風景が浮かんだ。
「……ここ、どこ?」
「なんか村みたいだ」
皆が顔を見合わせる中、リリーはぞくりと寒気を覚えた。
確かにのどかな雰囲気の村が見える。明るい陽射しが降りそそぐ、どこか神秘的な場所。
それなのに不安が募る。なぜか、行くのが怖いと感じた。
「ついにそろったね」
響く靴音に、リリーはびくりと肩を揺らした。やってきたのはキルクルスだった。
「入り口は開かれた。君たちを案内するよ、僕の村へ」
ゆっくりと七人を見回し、最後にキルクルスはリリーを見据えた。
「出発は二日後。それですべて解決する」
まるで感情を自ら消し去ったかのように、複雑な色が混ざる薄茶色の双眸からは何も読み取れなかった。
残すところあと3話か4話になりました。続きは3月に投稿予定です。




