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迷宮関所官渋谷  作者: キキカサラ
1/14

プロローグ 迷宮関所官の仕事

「坊さん?」

 ヤヒロたちの目の前に僧が現れた。

「背の高い坊さんだな」

 華美(はなび)が僧に近づき見上げた。

「ダメだ! 離れろ、華美!」

 ヤヒロの警告は一歩遅かった。

 華美は僧を見上げた後、ヤヒロの言葉に反応し、振り向いた。それに合わせたように、僧が大きくなってゆく。

「やっぱり、見越し入道だ! 全員、離れろ!」

 ヤヒロの指示で、全員が散開する。

「今までの被害の原因はこいつだな。見越し入道は、見上げた分だけ巨大化する妖怪だ。華美が結構見上げたから、かなりの大きさになるぞ」

 ヤヒロは距離を取りながら解説する。

「もう! 華美ちゃんのアホー!」

 弥子(やこ)が見越し入道と距離を取りながら叫んだ。

「アホはないだろ、アホは!」

 華美も弥子の悪態に応えながら、距離を取る。

「ようは、ケツを拭えばいいんだろ!」

 華美が煙草を強く吸う。肺に煙が満たされていく。

煙々羅(えんえんら)!」

 叫ぶと、チョーカーにはめられている石が光った。それに合わせて、煙を吐く。

 煙は大きくなり、見越し入道の足に絡まり、倒れさせた。

「よっしゃあ!」

 華美が拳を握り、ガッツポーズを作る。

「見越し入道に飛び越されるなよ。殺されるぞ」

 ヤヒロは警告をしながら、構える。

野槌(のづち)!」

 籠手にはめられている石が光る。ヤヒロは手を開いて前に突き出す。すると、そこに向かって、全てを飲み込まん勢いで、周りのものが吸い込まれてゆく。吸い込まれたものはヤヒロの手の前で消滅する。その様は、吸い込まれたというよりも、どこかに消えたという表現が正しいだろう。異空間に飛ばされてしまったような感覚だ。

見越し入道も例外ではなく、その巨体をものともせず、周りのものと同じように吸い込まれる。当の見越し入道は、吸い込まれまいと、必死に地面を掴み抵抗をしていた。



 彼らは、迷宮(めいきゅう)関所官(せきしょかん)。日本に現れた迷宮を管理する国家公務員だ。

 彼らの仕事は、迷宮内で採取したものの通関、密輸の取り締まりをする。また、迷宮内に異常が起きた場合、その身をもって解決するという役割を持つ、非常に過酷な職業だ。

 関所官になるには、探索士という国家資格を取得しなくてはならない。加えて、この探索士の資格がないと、迷宮を探索することは出来ない。

 迷宮は世界各国に出現し、それぞれ特徴も違う。日本に出現した迷宮は、日本に準じているのか、現れるモンスターは主に妖怪だった。

 迷宮内に出てくる妖怪は好戦的で、人間を見るや有無言わず攻撃をしてくる。能力は非常に強力で、奇怪なものが多かった。

 妖怪を倒すと、石を落とし、その石は使用者に妖怪と同じような能力を与えた。この力を駆使し、探索士は妖怪たちと戦い、迷宮内にある数々の貴重な資源を取得する。

 まるで、漫画やラノベの冒険者のような、夢の広がる職業だが、現実はそんなに甘くなく、探索士の年間死亡率は、五十パーセントを超える、死と隣り合わせの危険な仕事である。

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