妹と共に登校
「……」
「……んだよ、黙りこくって。話すことが——」
「兄貴さ、私が気持ち悪いやつに付きまとわれてたら……どうする?」
「は……?そりゃ、助けるよ……俺の妹が助けろって言われりゃ。彼氏のフリしろって、それが……」
妹がいつにもまして真剣な表情で質してきて、軽口は叩けなくて真面目に返す俺だった。
「もしも、だよー。付きまとわれてないよ、もしもだってー」
「そうか……まあ、凪は顔に出やすいからな。笑ってられるつーことないもんな、そんなことに遭えばさ。友達、居んの?」
「い、居るよー、友達くらいさ。なに、兄貴?私がぼっちだって思ってるわけ?んなわけっないじゃん……」
妹の隠せない動揺が現れ、後半に至っては声が震えていた。
「わ、悪い。凪にだって友達の一人や二人居るよな。そ、そりゃそうだよな……あはは」
路上の真ん中で泣かれでもすれば、いくら兄妹と言えども通行人に通報されかねない。
妹を宥める俺だった。
Y字路に差し掛かったのと同時に妹が駆け出し、「いつもの仕返しなんてサイテーだよ、兄貴ーっ!」と捨て台詞を残して去っていく。
「仕返しってつもりはさらさら無かったんだけどな」
そう呟いて、歩き出した俺だった。
登校して、喜多原に話せばお叱りを受けそうだと、一人苦笑する俺は通学路を歩み続ける。