プロローグ
この世界には多種多様な種族が存在する。
人族、獣人、エルフ、巨人、小人...エトセトラ。
ある世界の住民からしたらそこはまさしく「ファンタジー」と呼ぶに相応しい世界である。
そんな世界には神がいる。
宗教における神とは違う...実際にその世界に存在してる神がいた。
神は代々龍の力を操るという種族間のヒエラルキー最上位の竜人族の中から選ばれる。
神は強く、尊大だが人並みに欲がある。
だがそれと同時に愛と優しさもある。
そんな1人の神は人族の女性を愛し、妻とした。
当初神は人族を妻にした事を非難されたが神は種族の差など考えず、妻を愛し続けた。
無論、その妻も「自分なんかが...」という思いはあったものの...そんな神を愛していた。
愛し合う2人がいればそこに愛の結晶は産まれる。
そしてある日。
1人の黒髪の男児が産声をあげた。
─────
1つの世界が終わった。
否、正しくは世界ではなく1人の人生だ。
だが、その人生は私にとっての世界であり、全てだった。
故にその人の死は私にとっての終焉となんら変わりない。
「まだ続けるのか?」
そんな声が聞こえる。
私を咎めるような...それとも諭すような声なのか...判断しずらい。
元々ここは私の意識だけの世界。
その声が本当に聞こえたのか私の妄想かも分からない。
「止めようとは思わないか?」
当たり前だ。
私の全てを使ってでもこれだけは諦められない。
私には力がある。
その力は並行世界を観測、干渉する力だ。
しかしこの力、字面だけ見れば非常に有用かと思えるが実際はそんな事はない。
まず、この力はちゃんと扱えるようになるまで、出来ることは寝てる時にたまに並行世界を夢に見るくらいだ。
並行世界の観測という事を知らなければ良くて夢のお告げ、ないし悪い夢ぐらいの認識で私自身が亡くなってまで気付かなったなんて事はざらにある。
さらに干渉できるといっても私が先に後の障害を排除したりなんか出来ず、その並行世界を生きる私に「こうしてみようかな」なんて選択肢を考えさせるぐらいしか出来ない。
例えばなにか甘いものを食べようかなと考えてる際に「ダイエットしようかな」という選択肢を考えても欲望に負け、干渉が無意味になる事も多い。
.........いや、別に私は太ってなかったが。
そんな力でも私は頼り、その人生を変えようと考えている。
その人の死は老衰なんかとは無縁な悲惨な死だった。
今まで様々な結末があったが全て「悲惨な死」と言える。
誰しもが変えられない運命があるのかもしれない。
その人はそういう運命なのかもしれない。
だが私には弱いが力がある。
ならば私に使わない以外の選択肢はなかった。
肉体を捨て、並行世界を観測、干渉する生も死もない存在になったがそんな事は些細だ。
可能性は0ではない。
1も無いかもしれない。
だがやはり些細だ。
僅かな希望ではあるが...私は運命を変える。