くらい、こわい、きもちわるい KING'S FIELD
※ネタバレ含みます!
第三回。とうとうこいつを紹介する時がやってきました。PS用ソフト、フロム・ソフトウェア「KING'S FIELD」。
くらい! こわい! 気持ち悪い! の3K。しかし、面白い。
知るひとぞ知る名作。吃驚なのは、PS用ソフトで初めてのRPGである、ということ。PSが発売されてすぐに出たソフトです。
それまでは企業用のアプリ開発などをおもに手がけてきたフロム・ソフトウェアが、初めてつくった家庭用ゲーム機用ソフト。
物語は陰鬱な雰囲気ではじまります。
年中霧が立ちこめ、なんとなくうすぐらい国・ヴァーダイト。かつて、魔導器を携えた竜があらわれ、魔をはらって森へ消えた、という伝説が残るとかなんとか。
主人公・ジャンは、親衛隊隊長で剣聖の称号を持つお父さんと、王家出身のお母さんを持つ、お母さん似の美人系イケメン(わたしの主観じゃなくて、墓守がそういってたんだよ!)。
彼は剣の腕を磨く為に武者修行の旅をしていましたが、生国に異変ありときいてヴァーダイトへ戻ってきます。
なんと、魔導器が安置されているという伝承の残る王家の墓所から魔物がわきだし、魔導器の捜索にはいっていた兵達は死んだか逃げ戻ったかで、隊長であるお父さんは墓所に残された兵の救出に向かったというではありませんか。しかも、王さまも墓所内に居るとか。
ジャンは傭兵として、自分も墓所へ飛び込みます。しかし焦っていたのか、装備はしょぼく、持ちものもほとんどない状態。しかも墓所へはいった途端に、地上とつながっていた魔法陣が使用不能に。なんの準備もしてないのに墓所にとじこめられた!
……この状態からスタートするのですが、操作説明もなにもありません。十字キーで移動、△ボタンで武器による攻撃、□ボタンで魔法、○で調べる、会話する、ものを拾うなど、×ボタンでメニューを開く。L・Rは右を向く左を向く下を見る上を見る。取説読んで、一人称視点で頑張ってください。
この寄る辺のなさ、ショートソードのみで防具がないので必然的に紙みたいな防御力、ライトニードル(攻撃魔法)はつかえるけどMP乏しいからすぐに枯渇する哀しさ。
そして絶対に走らない、意地でも移動速度を変えないジャン。罠を飛び越えることすらできないジャン。穴に落ちたら這い上がれないジャン。国内だと相手が居ないくらい剣が強い設定じゃなかった? ともどかしく思うくらいにザコ敵にやられるジャン。
屋内の墓所ということで、全体的にくらく、不気味なBGMと相まって不安感がもの凄い。一人称視点なので死角から敵に攻撃されて死ぬこともしばしば。クリアリングとヒット&アウェイが大事なゲームです。うまく動かせばノーダメージですすめるかも。
出会うキャラクターも癖のあるやつばかりで、堂々と盗みを働いている道具屋、ちょっと離れたところで息子が死んでいるのに気付いていない墓荒らし、王さまからもらった墓所の地図を売っ払う墓守、王家に迫害されて逃げてきた信仰に傾倒しすぎの聖職者、王さまと一緒になってあくどい儲けをしていたらしい商人、怪我だか病気だかで最初の地点に残っていた兵、目が見えなくなってしまった吟遊詩人ハインツさま、先々代の王さまの幽霊、話しかけた途端にアイテムをとりやがる賢者…………などなど。
ジャンは異常な落ち着き(絶対に走らない)で墓所を捜索し、快復ポイントである竜の泉を復活させたり、黒魔導師の野望を打ち砕いたり、お父さんの消息を知る死にかけの兵士を見付けたり、おっぱいおっきい妖精のおねえちゃんに頼られたりします。
が。
これって別に、やらなくてもいいのです。KING'SFIELDには「次はこうしよう!」「どこへ行って誰に話をきこう!」「アイテムを誰に届けよう!」みたいな、お遣い的なイベントは起こりません。正確にいうと起こりますが、無視できます。
例えば初期マップ、墓所一層では、「竜の杯を神殿に戻して泉を復活させる」ことと、「盗まれた金の十字架を道具屋から買い戻し、聖職者へ渡す」という行動ができます。
竜の泉は全回復ポイントなので、復活させたら便利です。
聖職者は金の十字架を渡すと鍵をくれて、その鍵があると移動が楽になり、アイテムも幾らか入手できます。また、二層へつながる魔法陣の前にあるトラップを解除でき、ダメージをうけずに一層と二層を行き来できるようになります。
しかし、それだけといえばそれだけなのです。
快復ポイントがなくても、回復アイテムはあるし、そもそも敵の攻撃を避ければ回復の必要はない。
鍵がなくても移動はできるし、トラップもこつを掴めばそこそこのダメージですむ。
「お遣い」的な行動をすることもできますが、しなくてもジャンの行動は制限されないのです。
これはわたしにとっては一番の評価ポイントです。
だって、ジャンは行方不明のお父さんをさがしているんですよ。どんな効果があるかもわからないのに、泉を復活させる為に危ない目にあう必要はありません。杯を戻すまで、プレイヤーには(ジャンにも)その効果はわからないのです。
それに、母親が王家出身なのに、王家にたてついている聖職者を助ける気持ちになるでしょうか。喜んでその仕事をひきうけるとなると違和感があります。
プレイヤーの判断に委ねられているところが、リアリティがあるのです。
わたしはゲームが好きですが、気にいらないところが多々あります。それが、多くのゲームにありがちな、「お遣い」。目的を忘れないように配慮してくれるのは嬉しいですが、自分がどうしてもやりたくないことまでやらされるのは本当にしゃくです。
例えば「魔王を倒す」という大目標があるのに、どうしてこんな田舎町で犬の捜索をしなくちゃいけないわけ? みたいに思ってしまう。特にその結果、主人公が酷い目にあったりすると、だから無視してたらよかったのに、と思います。
KING'SFIELDはその辺りは自由です。自由だから、主人公が損をしても、自分で選んだから仕方ないと納得できる。すべてが自分の責任であるということは、結果もまた自分の成果であって、それは誇れるものなのです。
さて、ジャンは墓所の奥へ奥へとすすみます。
魔法のアイテムを手にいれたり、快復ポイントを復活させたり(バグで復活してさせてしまったひとも多いのでは)、魔法を入手したり、超絶強い剣を隠し部屋で発見したり、おっぱいおっきい妖精のおねえちゃんにはやく来てください! と頼まれたりします。
途中、ブラックナイトとの戦闘で倒れた父の墓を見付け、草むしり(薬草)をして置いてあった剣を強奪する件もあり、ジャンの異常な落ち着きが垣間見られます。
まあ、これらも全部やらなくていいことです。ショートソードだけで敵を倒し続け、レベルを上げて(究極をいえばレベルさえほとんど上げずに)クリアすることだって可能なのですから。
おっぱいおっきい妖精のミーリアの手助けもあり、ジャンは無事(数多死につつもでしょうが)五層へ到達。そこではミーリアと、伝説の竜が待っています。お父さんが後生大事にしていたあんまりつかえない剣は、実はとんでもない魔導器でした!
竜のおかげで力を得た剣を持ち、ジャンは最終決戦へ。見えない足場を平然と渡り(まじでジャンはSAN値が尋常じゃなく高いか、すでに狂っているかのどっちかだと思う)、超絶強いモブ敵に阻まれながら、不安感をあおるBGMのなかをすすみます。
ラスボスは置物で移動はしませんが、近接することが不可能な位置に居る上に触手でばんばんぶん殴ってくるので、出のはやい魔法で対応しましょう。つかえるのなら魔法剣でも。
ボスをぼこぼこにして、来た道を戻ると、エンディングへ。
エンディングのムービー、時代を考えると結構な綺麗さです。内容も、わびしいながらも正統派な感じ。
この作品から、KING'SFIELDシリーズの歴史がはじまったのです。
くらい、こわい、気持ち悪い。でも面白い。
一人称視点で死角から魔物に襲われる恐怖、あなたも体験してみませんか?