ゲームでの「偽聖女もの」のはしり? 遙かなる時空の中で2
※ネタバレ含みます!
第十一回、2002年発売、PS2用ソフト、株式会社 光栄、「遙かなる時空の中で2」。2001年発売のPC版、2005年発売のPSP版もある模様ですが、今回はPS2版について書きます。
世界初の乙女ゲーム「アンジェリーク」と同じ、ルビー・パーティ制作の一本。勿論、なろうの皆さんもお好きな乙女ゲームです。
主人公・高倉花梨(デフォルト名)は、高校一年生。普通……と取説や攻略本には書かれているものの、普通よりも明朗快活、元気いっぱいな可愛い女の子です。
主人公はある日、学校帰りに枯れた紅葉を目撃します。舞い落ちてきた紅葉がなぜかみずみずしい色合いに。すると突然、不思議な声が聴こえました。なにやら諸々いわれ、「京を救え」と指示されたと思ったら、主人公は別世界に降り立っていました。
ここでの受け答えで、最初に遭遇する人物がかわります。「八葉」というメイン攻略キャラクターのうちの誰かになるのですが、そこはお好みで。
さて、八葉のひとりと出会った主人公は、かみあわない会話をし、そこに男女の双子の子ども達がやってきます。ふたりは、自分達は「星の一族」で、あなたは「龍神の神子」だといいます。そして、そこへ怨霊(※ほかのゲームでいうところのモンスター)が。早速戦闘がはじまりました。
戦闘終了後、主人公は双子の館へ。ふたりは紫姫と深苑となのり、自分達星の一族は龍神の神子に仕えるのが使命であり、あなたには龍神の神子として「京」を救ってほしいといってきます。
ネガティブな選択肢は多々あるのですが、基本的に断ることはできません。主人公は否応なく、京を救う為に動くと決めます。
最初に出会った八葉は、すでに「院」のもとに龍神の神子がいる、といいつつ、八葉の印である「宝玉」が体にくっついているという動かしがたい証拠があるのもあって、主人公のお手伝いをしてくれることに。それから数日かけて、八葉の残りの七人をさがします。
実は京は、「帝派」と「院派」にわかれて人々が対立している状態。八葉も四人ずつ、それぞれの陣営に分かれてしまっています。といっても度合いはさまざまで、帝の弟の東宮も居れば、どっちからもきらわれているけれどより院側から睨まれている海賊、だとか、院の甥っ子や、どちらかというと院寄りの僧兵、なんてひとも。
この段階では、最初に出会った八葉と同じ陣営に所属している八葉しか、はっきりとはわかりません。対立している陣営の八葉にも、「あなたは八葉ではないですか?」と訊くことはできるのですが、あっさり否定されて終わります。
同陣営の八葉の場合、戸惑いつつも、やっぱり宝玉があるので、とりあえずあとでくわしい話を聴きに行くと約束してくれます。
帝と院の対立は根深く、移動も制限されます。帝派の八葉と一緒でなければ、帝の影響が強い土地にはいけません。その逆もまた然りです。
さて期日になると同陣営の四人が集まり、星の一族の説明がはじまります。しかし四人とも、いまいち納得していない様子。その理由は単純で、この段階で「龍神の神子」をなのる少女が、主人公以外にすでに居るのです。しかも、その少女は院の庇護下にあり、院が認めた龍神の神子。権力者のお墨付きな訳です。
というわけで主人公は、星の一族以外の後ろ盾を持たず、物語中盤まではっきりとは龍神の神子と認められないのです。
なんとなく、「偽聖女もの」の雰囲気がないでしょうか。
この作品、わたしの好きな乙女ゲーム一位(もう一本一位があって、それは「金色のコルダ」)で、時折ちまちまとプレイしたり、攻略本を読み返したりするのですが、最近になって初めてそのことに気付きました。ふたりの「神子」、片方は後ろ盾もあり実績もあり、大勢から信用されている。もう片方はまだ実績もなく、信用してくれるのは一部の限られた人間のみ……。
とはいえ、遙か2の「もうひとりの神子」千歳は、京出身で貴族の娘。どこからかあらわれた正体不明の主人公よりも信用されるのは、当然っちゃあ当然なのです。主人公が龍神の神子だといっているのは、星の一族だけなのですし。
主人公は、神子にはできるという力の具現化(要するにミニゲームです)や呪詛の解除などを、結構あっさりとやってのけます。八葉達も、主人公が呪詛を解除するなど、京の為に(それをしないと帰れないという事情はありますが)頑張っているのを見て、段々と信じるようになっていきます。
一方千歳は、院にとりついた怨霊を追い払ったあとは、御所で祈りを捧げる日々。ふたりが顔を合わせることはなかなかできません。
物語中盤、対立陣営の八葉にも認められた後、星の一族の深苑が主人公の許を去ります。京を救うには別の方法もある――と、謎めいた言葉を残して。
直後、復活した怨霊を封印しに向かった主人公の前に、初めて千歳が姿をあらわします。千歳は怨霊を操り、怨霊と会話していました。帝や院に怨霊が憑いていたのは、もしかして彼女の仕業……?
封印後、千歳は、自分と主人公は違うといいのこし、姿を消しました。
千歳はその後、もっと清らかな状態で祈るためにと御所を退出し、どこに居るかわからない状態に。しかも、さまざまな呪詛や怨霊に関わっていると思しい白拍子と行動を共にしているなど、怪しい点が多々あります。はたして千歳は敵か味方か、もやもやしたまま、主人公は神子として頑張るのですが……。
最後までプレイすると、張られていた伏線が次々回収され、かなり爽快です。このキャラクターのこのせりふはこういう意味だったのか! このひとがこんなことをしたのはこういう理由だったのか! と、納得の嵐。ミニゲームが一部鬼畜仕様なものの、ストーリーが好きで何度もプレイしています。
でもねえ、君達もうちょっと腹を割って話したら? と思わなくも……と、それは帝と院の対立があり、しかもそれを煽って、おまけにいろんなひとに余計なことを吹き込んでいるやつ(れっきとした攻略対象)が居る所為なのですが。
あ、美麗なキャラクターやカラフルで可愛らしい雰囲気に騙されますが、中身はほぼ太閤立志伝です。一日の行動回数とか似てるよね。効果音もたまに一緒。しかも太閤立志伝と違い、時間制限がきっちりあるので、非常にきついです。でも楽しい。ゲームとして面白い。
和風世界での「偽聖女もの」、あなたも体験してみませんか?