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Tarte aux fraises 2

 ドリーミーからの帰り道、私はいつもの道から帰っていました。日課である旧Patisserie flanへの謝罪をして、いざ家に帰ろうとしていたときです。


 (あれ?店内の奥に明かりがついてる……)


 まだ、土地の所有権は神城さんにあるらしいものの行方がわからなくなっていて、使われるはずがない建物内から光が漏れていることに気が付いた私は、思いきってドアを開けようとしました。その時です。


 「何をやっているのかな……ドリーミーの焼菓子部門責任者ともあろう方が不法侵入ですか?」


 「か……神城さん」


 「あんたなんかにその名で呼ばれる筋合いは無いよ、夏目胡桃」


 「そ、そうですよね。私なんかにあなたを名前で呼ぶ資格なんて無いですよね」


 「その通りだ。そもそも俺はあの会社の焼菓子部門の連中は問答無用で嫌ってるんだ、いくらあんたに贖罪の気持ちがあったとしても失った物が返ってくるわけじゃねーんだ」


 「はい、わかってます。だ、だからこうして会えたのも縁だと思うのでお願いがあるんです」


 「俺があんたの願いを聞くとでも?」


 「……私にTarte aux fraisesを食べさせて欲しいんです」


 「……正気か?」


 「はい、私にできる贖罪ってなんだろうってずっと考えてたんです。でもやっぱり命をもって償うのが1番かなと」


 「俺が言うのもおかしいかもしれないがあんたはそれでいいのか?」


 「もちろんです。むしろ最後にずっと憧れてきたあなたのタルトを食べられるなら本望ですよ」


 「そうか……まさかあんたの方から言ってくるとは思ってなかったがものはある。これがあんた用に作った物だ」


 「Dernière Cène Tarte aux fraises」


「ふふっ、わざわざ高い白苺で作ってくださるなんてやっぱり神城さんは優しい人ですね…」


 「……まあドリーミーに恨み、憎しみはあるが夏目胡桃、あんたにはそこまでの感情はねぇからな」


 「じゃあ、いただきますね?」


 「さっさと食べろ」


 「…………さすがだな、神城さん。私も少しは上達したと思ったけれど天地の差があるや」


 私は、神城さんが作った白苺のタルトを口にしながらそう呟きました。


 「……今から死ぬっていうのに穏やかな顔しやがってよ。憎んでる俺が馬鹿みたいじゃないか」


 「……いいんですよ。最後にこんな形でもあなたと話すことができて私は幸せですから……でももし許されるなら、次の未来ではあなたと一緒に…働けるよ…うな世界だ…ったらなぁ」


 「そうだな。来世があるなら俺のところに来ればいいさ」


 「嬉し……い…です」


 こうして、私の24年の人生は幕を閉じました。



 俺は、最初の仕事を終えた。本当なら少しは気持ちも晴れるかと思ったのに、むしろより闇が深くなってしまった。


 「夏目胡桃……か。もっと違う出会い方をしていればこんな結末にはならなかったんだろうか」


 そうふと思ってしまう自分もいたがそんな甘い考えは捨て、気持ちを切り替えた。



 これが、連続殺人事件 『Sweets』始まりである……

次回と次々回でこの章のエピローグとなり、次章に進みます。よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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