三、クラゲに似た、アイツ
人は、生死の境を垣間見ると、多少は霊感が培われるという言い伝えはありますが。
多分、それは確かなんだろうと思う。
私が幼稚園~小学校に入ったであろう頃。
年齢は忘れたが、母方のいとこ達がみんなして我が郷土へと遊びに来た。
折しも夏、東北以北は当時、夏でも涼しく快適であった。
いとこたちは川で釣りをしたり、海岸に黄昏に行ったり、美味しいものを食べたりとエンジョイしていた。
そして、夏といえば、海。
途中で、皆で海水浴となり、私は幼いながらも水着にパーカーを着て、海辺で貝殻拾いばかりして遊んでいた。
あの頃は、とても美しい桜貝が採れたのですよ。
あと、うっすらピンクの巻貝とか。
そして、しばらくそうして遊んでいたら、母から「いとこのお兄ちゃんたちを呼んできて」と言われ、私はテトラポットをてくてく駆けて、いとこ達を呼びに行く。
大声で呼んだら、「もう少ししたら行くよ」というので、少しはどれ位だと更に問おうとした。
刹那。
眼下に、とても美しい、白くもうっすら虹色の何かが、此方に向かって流されてきた。
私は、巨大なきれいな貝だと思って、海に手を突っ込みその流れの中でキャッチした。
そして、その瞬間。
超激痛が全身を駆け巡り、私はそのまま、海へ落ちていったのだった。
その後。
いとこの兄が一部始終を見てあわてて救助してくれたみたいだったが、私の手はクラゲに刺されたにしては薬が効かなかったり、むしろあんなクラゲは地元では全く見ない種類で、私は何にやられたのかもわからず。
とりあえず、キンカン塗られて治った記憶がある。
ただ、その日を境に、今までは善い存在ばかり見えていたのに、今度は悪い奴らとか怖い奴らとかが結構見えだして、正直毎日バッドな気分で過ごしたのは間違いない。
あと、あの虹色。
カツオノエボシでもなく、他の毒クラゲでもなく、黒い毛が側面にあったアイツ。
皆には言ってなかったけれど、アイツ、貝かと思ったら、人間のしゃれこうべだったんだぜ。
マジで騙された!!
本当に、今度あったら、ペッしゃんこに叩き潰す!!
大人になってもこの怒りは収まりませんよ。
あと、その日を境に始まったのは、もうひとつある。
私の前世の最期、とでもいう、凄惨な夢を毎日見て、癇癪のように夜泣きするようになったのだ。
まあ、後世になりそれがマジ記憶だと判明するのだが、それはまた別のお話しだ。
とりあえず、皆様に言えること。
海の中にて、何か得体の知れぬ美しいものが漂い流れていたら、ダッシュで逃げるべし!
もしくは、全力でハンマーにて粉砕すべし!!
それは、もしかしたら、漂流仲間が欲しい、クソしゃれこうべ野郎かもしれないのだから。
これは、マジ。
絶対に、一生許さん。
次に会ったら粉砕する。