この魔法の世界で僕は
しばらくはストックがあり、毎日投稿するので、ブックマークよろしくお願いいたします。
魔法、それはこの世界を支配している存在と言っても過言ではないだろう。料理をするための炎魔法、遠くへ移動するための飛行魔法、そして魔物を倒すための様々な攻撃魔法というように、魔法が無ければ人類はここまで発展することは出来なかったとまで言える。しかし、残酷にも全ての人間が魔法を扱えるわけではない・・・。
僕は英雄になりたかった・・・。
母に言われ、いとこで一つ年下のマグネスと森へと出かけ、果物を採ってきた帰りに普段ここにはいないようなカモシカの魔物レッドアダックスに遭遇してしまった。レッドアダックスは気性が荒く、見つけた動くものにすぐ突進してくると言われている。とっさにマグネスを庇おうと前に出ようとするが、
「おい、オーラム!魔法も使えないのにしゃしゃり出てんじゃねーよ。こんな魔物、俺の魔法で吹き飛ばしてやる。炎熱を纏い、敵を貫く矛となれ!『フレイムランス』!」
そう言って、マグネスの手から炎の槍が放たれた。突撃してきたレッドアダックスの額にちょうど突き刺さるように当たり、僕らにぶつかる前に倒れた。家に帰り、マグネスが僕の母親に今日のことを自慢する。
「今日、東の森でレッドアダックスが襲い掛かってきたんだ!あそこに出るなんて珍しいよね。」
「え!?レッドアダックスって言ったらギルドで討伐命令が出ることもある危険な魔物じゃない!怪我は?それにそのレッドアダックスはどうしたの?」
「大丈夫だよ、おばさん。俺の炎魔法で脳天を一突きしてやったからな。」
「すごいじゃない!オーラムにも魔法の才能を分けてほしいくらいだわ。私もパパもおじいちゃんだって魔法が使えるんだから、あなたも頑張れば使えるようになるはずよ。」
小さい頃から母はそうやって励ましてくれたが、18歳になっても僕が魔法を使えるようにはならなかった。
「私とパパの子どもが魔法を使えないわけがないわ。」大きくなるにつれ、母はそんなことを言うようになった。母からの重圧に耐えられなくなった僕は逃げ出すように家を出た。
そこで僕は目が覚めた。嫌なことを思い出してしまった。朝食が喉を通る気もしなかったのでそのまま家を出た。この大陸で最も大きな都市ベルセリウ、田舎から逃げてきた僕はここで暮らしている。しばらく歩いて、職場であるワーテルストフ研究所に着いた。
「おはようございます。今日も泊まりですか?ワーテルストフ教授?」
「おー、オーラム。今日はいつもより早いな。まぁこの反応が気になって帰れなかったんだよ。」
ここで僕は研究者として働いている。擦り傷や切り傷などの外傷は魔法である程度直すことができても、痛み止めや解熱などを促す回復魔法は存在しないと言われている。そのため、鎮痛剤や解熱剤などの医薬品を化学合成で創ろうとしている。家を飛び出してワーテルストフ教授に拾ってもらってから、もう5年も経ち、今はプロピオン酸誘導体である抗炎症薬の開発をしている。この研究所では魔法が苦手な人も多く、魔法に対して変なコンプレックスを持つことも無く仕事できるというところが僕にとって一番の魅力かもしれない。
「さて、今日も実験始めますか。」実験ノートに必要な試薬とその量をメモしていく。あれ?ジエチルエーテルまだあったかな?
「ケクレさん、ジエチルエーテルってあります?」
「そういえば、俺ももう無かったな。多分、作らないと無いんじゃない?」
せっかく今日は、還元反応をやろうと思ったのに、材料が無いのか、作るの面倒だな。自分で作らずともどこからか出てこれば楽なのに。
そう思いながら手のひらを見つめる。
すると、突然手から透明の液体が湧き出てきた!
「冷たっ!」いきなりのことに声を上げる。訳も分からず咄嗟に手を握ると液体は出てこなくなった。
何が起こったんだ?
解説コーナー(専門用語等を軽く解説していきたいと思います。)
ジエチルエーテル:Et2Oは化学の世界だと反応溶媒や抽出に用いられますが、なんと飲めるらしいです!(アルコールの代わりに飲んでいたらしい。絶対に飲まないでください。)ジエチルエーテルを触ると冷たく感じるのですが、これは手の皮膚で気化することによる気化熱が原因です。
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