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祖父の山歩き  作者:
2/2

立春 (start of spring)

 立春は節分の翌日だ。良く言う「暦の上では春」である。


 2月初旬は、まだ寒い。


 立春の定義は天文学的で、冬至と春分の丁度真ん中、とされている。


 江戸時代のカレンダーでは、正月は立春ごろに設定されていたらしい。


 今でも年賀状に新春と書くのは、年の始まりと春の始まりが一緒だったからだろう。


 その前日の節分は大晦日と似た意味合いだったに違いない。


 現在でも各地に様々なイベントが残っている。



 最初は立春から。



 ―― § ――



 中腹の茶屋で、カラオケで歌っているのが聞こえる。


 年配の方が楽しんでいるのだろう、賑やかで良い。


 茶屋の窓に鳥の写真が貼ってある。


 カワセミやルリビタキ、青い鳥が好きなようだ。


 写真を見ていたら茶屋の人が、ブログで鳥の写真を紹介するのが趣味のお客さんがくれた写真を貼っている、と言っていた。


 カワセミは別の場所で撮ったものと思うが、ルリビタキは茶屋のそばにやってくる。


 同じ場所に現れる習性があると思われ、一度見かけた場所で待つと、戻って来ることが良くある。


 鳩のようなポッポという鳴き声が聞こえれば、近くに来ている。


 茂みから出てくるのを期待して静かに待つ。


 オスは青、メスはくすんだ緑色。


 尾は雄雌とも青い。


 ヨーロッパの一部から日本まで広く分布する鳥だが、繁殖地と越冬地が両方あるのはヒマラヤ付近と日本に限られることから、それ以外の地域では珍しい鳥と思われる。


 茂みから勢いよく飛び出し、枝に止まって小刻みに数回尻尾を上下に振って止めて、首を回してまた尻尾を振って止めて。(せわ)しなく動く。


 すると別の枝へ飛んでいく。


 いつも出会いが短く残念だが、彼らは彼らで忙しいのだから仕方がない。



 地面ではシロハラが(くちばし)で木の葉を(はら)い、周りを窺ってまた木の葉を掃い、食べ物を探している。


 面白い仕草だ。


 シロハラはヨーロッパのブラックバードの仲間だ。


 ビートルズの歌になったブラックバードは、真っ黒で目が黄色く縁どられ、美しく(さえず)る。


 目の感じと全体的なシェイプはシロハラそっくりだ。


 シロハラは全体的にグレーで、腹は名前の通り白い。


 一つ残念なことに、シロハラは積極的に鳴かない。


 キョキョキョと音を立てて飛び去るのを良く見るが、あれは鳴き声だろうか。


 シロハラの属するツグミ属は世界中に分布しており、姿や大きさが良く似ている。


 日本の中でも、シロハラやツグミ、アカハラ、トラツグミなどは色や模様は違うが、姿や大きさは良く似ている。



 ―― § ――



 茶屋のそばに色々な木が植えられている。


 この時期に咲き始める花はツバキである。


 ツバキは木へんに春。


 立春に咲き始めるから、この字が当てられたのだろう。


 ツバキ属の学名はCamellia(カメリア)


 元々は日本周辺の植物だが、ヨーロッパでも栽培されるようだ。


 茶屋のそばでは、同じ仲間であるサザンカが冬から花をつけており、ツバキが咲き始めてもあまり目立たない。


 だが参道を外れた土の道を歩くと、自然に育ったと思われる大きなツバキがポツポツとあり、それらは沢山の花をつける。


 山のツバキが咲くと、ヒヨドリが花に顔を突っ込んでいる姿を良く見かける。


 蜜が吸えるのだろうか、顔に黄色い花粉を沢山つけていて、笑ってしまう。


 ヒヨドリは住宅地にも多く、朝からギャー、ギャー、と怪獣のような鳴き方をする。


 ヒヨドリの名のついた地名があるので、昔からヒヨドリが多かったのかもしれない。


 日本では珍しくないヒヨドリだが、日本と韓国周辺にしか分布していないのが不思議だ。



 山道を神社のそばまで登ると、ウソが居ることがある。


 口笛のような、鳥らしくない鳴き方をする。


 木の実が好きらしく、(むし)っては次へ、毟っては次へと、梯子(はしご)している。


 この鳥の分布は広く、ヨーロッパでも一般的な鳥だ。


 英名はEurasian Bullfinch。


 以前ネットに出したオスのウソの写真にヨーロッパの人が「female」とコメントを入れてきたので「no, male」と返したら、気を悪くしたような、そんなことがあった。


 ヨーロッパ種のオスは腹が真っ赤で、性別を見間違うことがない。


 しかし日本種のオスは少し赤いだけで、ヨーロッパ人から見るとメスに見える。


 だが、色の濃さ以外は驚くほど同じだ。


 これは、シジュウカラやゴジュウカラにも言える。


 ヨーロッパのシジュウカラは腹が黄色く、日本のは腹が白いが、それ以外は全く同じだ。


 関西でゴジュウカラは見たことがないが、ゴジュウカラは、日本もヨーロッパも同じに見える。


 これらの鳥はユーラシア大陸に広く分布しているが、他の大陸には分布していない。


 理由は分からない。



 ウソと同じ木に、マヒワが来ることもある。


 食べ物の好みが同じらしい。


 マヒワはウソよりも珍しく、見る年もあれば、全く見ない年もある。


 この鳥もウソと同じく、ヨーロッパで一般的な鳥だ。


 英名はEurasian Siskin。


 ヨーロッパでも日本でも同じ色合いだ。


 レモン色に黒の模様がついた鳥である。


 雀ほどの大きさだが雀より細く、華奢(きゃしゃ)な印象だ。


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