カフェーとやらにいきます!
「ハナ様、せっかくですからカフェーにいきませんか?招待券をもらったんです。」
「カ、カフェーですか?!」
「えぇ。他国の文化をとりいれるための試験的なものなのですが。あいすくりーむという冷たい甘味が食べられるそうですよ。」
「ア、アイスですね!行きたいです!」
「緑都江!私も!私も行くからね!なんていったって、私はハナの一番の友達ですもの!」
「橙和ちゃん・・・!かわいい!!」
「か、かわ・・・っ?!」
「あ、声にでてました?すみません、失礼ですよね・・・。」
「べ、別に構わなくてよ!」
ふんっと斜め上をむく橙和ちゃん。
お耳が真っ赤っかで可愛いです。合掌。
「ふふっ!3人で女子会ですね。」
「女子会とはなんじゃ?初めて聞く言葉じゃ。」
「乙女だけでお茶を楽しむ会、ですわ。美味しいお菓子やご飯を食べながらお話するのです。」
「ほぅ。女子だけの茶会か。面白そうじゃ。妾も参加するぞ。」
「紫允さま・・・宮様という立場の方がふらりと立ち寄れるような場所ではございませんわ。堪えてくださいまし。」
「むむ。じゃが、女子会ならば妾も参加できるはずじゃ。」
「紫允さま。」
紫允さまに絶対零度の微笑みを向ける緑都江さん。
ひぇ・・・っ!
関係ないはずなのにびくつく橙和ちゃん・・・マジ天使。
「・・・緑都江を説得するのは妾も難儀する。今回は堪えようぞ。じゃが、近いうちに妾も参加できる女子会を催すのじゃぞ。」
「かしこまりましたわ、紫允さま。」
やっぱり雲の上の人は街歩きもできないものなのね・・・。
学校でお茶会みたいにしたら楽しめるかな?
茶道部みたいなイメージでクラブ活動としてお茶とお菓子を楽しむのはどうかな。
可愛く、美しい女子が集まるクラブとか最高では?!
お姉さまとか妹とかと出会う場にもなるかもだし!!
私がムフフと妄想していると黄髪が側によってきた。
「面白そうだね?僕も一緒に行きたいなぁ。歌劇団については父上からも任されているし。」
ひ、ひえ~~~!
女子会男子?!
い、いや~~~~!男はお呼びじゃないのよ!
心の中で大反対しつつも、私は頭を伏せる。
90度お辞儀撤退法の簡易版だ。
「黄榮さま。今日は女子会ですのよ?殿方はお断りですわ。」
緑都江さま!かっこいい!
きっぱり断ってくれてる!ありがとう!!!
「うん、聞いてたよ。女子ならいいんでしょ?」
「黄榮さま、まさか・・・」
「大丈夫。僕も招待券持ってるし。準備出来次第向かうから、さきに行ってて。」
「はぁ。仕方ありませんわね。間に合わなければ先に帰りますからね。」
「は~い」
み、緑都江さん?!
どういうことなの?まさかってなに?!
「さぁ、ハナさま、橙和子さま。女子会とやらに行きましょう。」
そういって緑都江さんが歩き出す。私と橙和ちゃんはそのあとを追う。
***
「わぁー!すごい!」
ルジャポン皇国初のカフェー「レンテ」は白亜の建物で、窓ガラスが使われていた。
木枠にはめられた透明度が低い結霜ガラスがレトロ感を出していてとても素敵だ。
いや、たぶんこの世界では最新の板ガラスなんだろうけど。
私の感覚ではレトロ可愛いが、最新の建築技術を使っているはずだ。
「ハナ、そのように声をあげてはみっともなくてよ?でも、たしかに素晴らしいわ。」
「ふふ、そうですね。では、中に入りましょう。」
扉をあけて入る。
壁紙はモカっぽい色で落ち着いている。
シャンデリアが飾られていて、とても綺麗だ。
「ここでは、珈琲が飲めるそうですわ。せっかくだから頼んでみます?」
「そうね、あいすくりーむとやらは冷たいのでしょう?温かい飲み物もいただきたいわ。」
「わ、私はいいです。その、お金が・・・!」
奨学生といっても、授業料が免除なだけだから!
余分に使えるお金なんてないんだった!!
うっかり現代日本気分でフラっとついてきちゃった・・・。
「あら、気になさらないでくださいませ。お誘いしたのは私ですから。ご馳走させていただきます。」
「そ、そんな!大丈夫です!!私たちは学友と言ってたじゃないですか。ご馳走になる理由はありません!」
「ふふ、構いませんのに。では、そうですね・・・歌劇団ではお給金も出ますから、ここは私が立て替えるということでどうでしょうか?」
「え、お給金が出るんですか?!」
「えぇ、そうですよ。具体的な金額はまだわかりませんが、カフェー代は十分支払える額ですわ。」
「わぁ!とっても助かります!ド平民なのであんまり余裕がなくって・・・。」
「あら、そうだったのですね。ハナさまのご実家はどのような暮らしぶりですの?」
「父は墨染めの職人でして。墨職人として花を咲かせる、という決意で私の名を墨花つけたそうですわ。残念ながら、腕はともかくセンスがあまりないようで、十分な稼ぎとは言えませんが・・・。」
「まぁ、そうでしたか。私、墨染めというものを初めて聞きました。墨で染物もできるのですね。我が国固有の文化はまだまだありそうですね。他にも何かご存知でしたらぜひ教えていただきたいです。」
「そうですね・・・。えーっと、たしか南部では絹糸を泥で染めた着物もあるときいたことがあります。」
「泥ですか。どんな色の着物になるか気になりますね。」
「見たことがないので、私も知らないのですが・・・」
鹿児島の大島紬が泥で染めてるという知識はあっても具体的な説明ができず困っているところに、遠慮がちに声がかかる。
「ご注文はお決まりですか?」
着物をきた美人女中さんが注文をとりにきてくれたようだ。
長い髪を左右にわけ、三つ編みにした束を両耳の辺りでクルクルと巻いて耳を隠してたラジオ巻の髪型が可愛い・・・!
でも、まさかのアレがない。
大正ロマンの着物女中といえばアレがないとでしょ!?
「あいすくりーむと珈琲を3つずつお願いします。」
「かしこまりました。」
優雅に去っていく着物美人。
「ここのカフェーの女中はウェイトレスというそうですよ。」
「まぁ、モダンね。でも着物が汚れて大変ではないかしら。」
「フ、フリフリの白エプロンをつけたら良いと思いません?!」
そう、大正時代のカフェーといえば!
着物に白フリルエプロンが常識!!!
「まぁ!それってとっても素敵ですわ!」
突然聞こえた声に目を向ける。
そこには黄色い髪に翠色の綺麗な目をした美少女。
後頭部で1本に結った三つ編みを輪っかにしたマガレイトヘアにリボンが映えている。
だけど気になるのは白セーラーワンピースを着ていること。
うちのクラスの制服だけど、こんな美少女はいなかったはず。
「黄榮さま。相変わらず麗しいお姿ですこと。」
「あら、緑都江さん。こうちゃん、でしょ?女子用の制服も用意しておいて正解でしたわ。」
「こ、こここ・・・?!」
「まぁ!墨花さまったら。鶏の真似がお上手ですこと!」
そういって黄髪の美少女がにっこり私の両手を握る。
「墨花さま。私は『コウ』といいますの。よろしくお願いいたしますわね!」
お、男の娘だー!!!
でもめっちゃかわいいいー!!!!
「黄榮さんったら相変わらずなのね。ハナが驚いているじゃない。」
「いやですわ、橙和子さま!私のことはコウとお呼び下さいませ。せっかくの女子会なのですから!」
だ、だれー?!?!
小悪魔系男子があざと可愛い系女子になってるー!!
この人は男、この人は男、この人は男!!!!
「墨花さま。白エプロンのアイディア、とても素晴らしいですわ!私、いろいろと教えていただきたいです!お姉さまと呼んでもよろしくて?」
にっこり笑うコウちゃん。
「よ、よろしくてですよ・・・?」
はわぁー!かわいい!!
黄色い髪に蒼色の瞳の美少女とかもう無理すぎるー!
「ふふっ!よろしくお願いしますね、お姉さまっ!」
にっこり笑う目が笑ってないとかどうでもいい!
男の娘だって気にしない!
だって、だって・・・かわいい憧れの妹ゲットだから!!!
イケメン男子には興味ないハナちゃんですが、可愛い男の娘には興味津々のようです・・・笑
黄榮くんの名前はきっと覚えたと思います!