神様、ありがとう!
ルジャポン皇国。
皇国といえど、いまの私はそこらへんにいる普通の平民として生きる10歳の少女。
誕生日祝いにち両親に連れられ、生まれて初めて皇都にに来たその日。
自転車に乗った女学生が和服に女袴、そして革靴を穿いている姿をみて思い出した。
これ、私の大好きな大正ロマンあふれる百合ゲーの世界じゃん!!!
と。
ちなみに前世の私は恋人いない歴=年齢のアラサーだった。
おまけに隠れレズビアン。
自分の性指向をクローズにしていた私は恋人はおろか友達もうまく作れなかった。
さらに、結婚を急かす家族とも年々疎遠になるばかり・・・。
しかしながら、慎ましく真面目に生きてきた。
大正時代の少女同士の恋愛を描いたエスの作品観の小説を読むことが人生の楽しみだった。
きっかけは中学生の頃、女学校を舞台にした姉妹百合の小説にハマったことだ。
大正時代に書かれた作品ながら、繊細で美しい姉妹の契りを交わす少女同士の描写は平成に生まれた私にクリーンヒットした。
普及して間もないインターネットでみつけたファンの掲示板で会ったこともない子とハンドルネームを使って擬似姉妹ごっこを楽しんでいた時代が私の人生でもっともときめきにあふれていた。
大正時代に流行した作品であるため、当然新たな供給がされることもなく、何年もずっと同じ本をひたすら読み返している毎日だったが幸せだった。
ちなみにネット上の擬似姉妹との交流は自然消滅した。私はずっとチャットの返信がされる日を待っていたが、そのうち掲示板自体が閉鎖されてしまった。
でも、そんなある日。
私は運命のゲームと出会った。
大正時代の姉妹百合、いわゆるエスの世界観のもとに作られた百合ゲー「女學院物語~エスの世界~」がPCゲームとして配信されたのだ。
お姉さまと手紙や短歌を送りあって、好感度を高めるゲーム。
私の愛読書の文章がオマージュされていたのでまるで自分がその世界で生きているように感じた。
その百合ゲーをプレイすることが生きがいになった。
「貴女を思ふとわたくしの心にある白ゐ百合が眞つ赤に染まつてしまうのです」というカードとお姉さまの髪色の赤色のリボンを渡されて、妹に選ばれたシーンは最高すぎて泣いた・・・。
私が画家なら絵に残したし、小説家なら本にしただろう。
でも、特に何も特技がないのでただただ泣いた。
まぁ、あんまり人気がなくてすぐに配信終了したけど。
その後、リニューアルされてスマホアプリとして配信されたが、あまりにも内容が変わっていた。
古風な文章でのやりとりはなく、いわゆる乙女ゲーの百合版という感じでただ選択肢を選ぶだけ。
ショックでクリアまでたどり着けなかった。
しかし、リニューアルした百合アプリ「虹ノ宮女学院物語~私と姉妹になってくれますか?~」は大ヒットした。
もとの百合ゲーであるPC版の女學院物語の設定がホームページに残されていたため、大正ロマンなエスの世界観あふれる百合が二次創作で流行ったのだ!!
私の供給ストップ人生が嘘のように大正時代の姉妹百合をモチーフにして、いろいろな作品がでた。
登場人物の二次創作ではあるものの、才能あふれる同人作家さんのおかげで素晴らしい作品と山ほど出会えたのだ!
人生初のコミケにいって、同人作家さんに差し入れをしたら喜んでもらえた。
私の人生に潤いができた!
これからは同人活動を謳歌しようと心に決め、帰路についた。
なのに!!
通り魔に襲われてあっけなく死んでしまった。
まだ同人誌読めてないのに!!!!
たぶん「(自分より弱くて殺せそうなら)誰でもよかった」みたいな理由で殺されたんじゃないかな・・・。
痴情のもつれはもちろんだけど、誰かに恨まれるほど人と関わってないし。
こうやって振り返ってみると、なんだか前世の私って不憫・・・。
きっとこれは前世が不憫すぎる私への神様からのギフトだ!!!
流行ったスマホアプリ版百合ゲーの虹ノ宮女学院物語は制服は白のセーラー服だった。
でも、今日みかけた学生は着物に女袴。
これは私が大好きだった女學院物語時代の制服だ。
カバンに校章がデザインされていたし、間違いない。
つまり!!
私は!!
大好きな女學院物語の百合ゲーの世界に生まれ変わることができたのだ!
主要キャラみたいに派手な髪色でもなく、普通に黒髪黒目の純日本人の見た目の平民。
私はただのモブだろう。
しかも、私が前世の記憶を取り戻さなければ、ゲームに登場することさえない完全なるモブだ。
ゲームのキャラクターでもなく、そしてただの平民の私があの女学院に入学するためには優秀な成績をおさめて、奨学生枠で入学するしかない。
これから入学までの数年間にめちゃくちゃ勉強して絶対に入学する!!!
そしてお姉さまとの愛を育むのだ!!!
神様、ありがとう!!!
前世では特に恨みも感謝もなかったけど、今世では感謝を捧げながら生きていくことを誓います!