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「――ラッ! ソラッ!」


 体を揺さぶられている。


 それに微かに焦げ臭い。


 俺はゆっくりと目を開けると焦った顔をしたウミがいた。


「ソラ! 良かった! ……体は痛くない? 貧血は起こしていない?」


 ウミはそう言って俺の体を隅々と見た。


「大丈夫」


 そう言って起き上がろうとすると体が凄く重い。


 そしてパタリっと倒れてしまった。


「ソラ!? 安静にしてなきゃダメじゃない! 今あなたは魔力枯渇起こしているんだから!」


「……魔力枯渇?」


 初めて聞いた単語だ。


「そっか。魔法知らないもんね。えっとね、魔法って何で出来ているのか知ってる?」


 ウミにそう言われて考えてみる。


「不思議な力?」


 とりあえず思いついたことを言ってみた。


「バカじゃないの?」


 侮辱された。


「魔法は血液で出来ているの。体にある血をエネルギーに変えることによって火とかを出しているわけ。だから使いすぎると、まあ極端な話死んじゃうわ。あ、魔力枯渇は魔法によって一次的に血が足りなくなることを言うわ」


 なるほど。


 ならおとぎ話のように強大な魔法を使ったら干からびるのか?


「まあ中には少ない血液で大きなエネルギーを生み出す人が居る。その人は基本的に魔法使いとかいわれるわね」


 ならさっき出した火で気絶してしまった俺は魔法使いの素質がないのか。


 なんだか夢が一つ無くなった気分で悲しくなる。


「ちなみに魔法は使えば使うほどエネルギー効率は上がっていくわよ。でも、血液を使うんだから凄く危険だし、血を補うためにも大量の食糧がいる。……だから魔法の訓練できるものなんてお金持ちしかいないわ」


 初めの言葉を聞いて魔法の練習をしてみようと思ったが、確かに体の事を考えると怖くてできそうにない。


 俺はか弱い生き物なのだ。

 

 ……食料で思い出した。


 そう言えば何も食べていない。


 適当に食べるものを探しに行こうとしたけれど辺りはもう真っ暗だ。


「お腹すいたなぁ」


「そりゃそうでしょ。ソラは魔力枯渇起こしているうえにドーテリの街から飲まず食わずでしょ?」


 流石に空腹を我慢できなかったので、夜だけど仕方なく弓を装備し魔物を狩りに出ることにした。


「そ、ソラ? どこに行くの?」


 俺が狩りに出かけることが意外だったのかウミが上ずった声をだした。


「ちょっと食料探してくる」


 そう言うとウミは焚火の近くに置いてあった細い剣を持って横に並んだ。


「私も行くわ」


 ウミが同行してくれるのはありがたい。


 弓だと魔物に近寄られた時に何もできない。


 俺らはとりあえず焚火がギリギリ目に見える範囲で食べれそうな魔物を探す。


 夜は寝ているのか殺気が感じない。


 なので目で見て魔物を探すしかない。


 幸いにも月が出ていて辺りを見合わせる。


「いた。ウミ、狙撃するよ」


 木に枕くらいの大きさのリスが見えた。


「ん? どこにいるの?」


 ウミが聞いてくる前に矢をはなった。


 ――トスッ


 矢は上手いこと大きなリスにあたった。


「キュアアア!」


 そのまま地面に落ち、リスは刺さった矢などお構いなしにこちらに走ってきた。


「ウミ! 来るぞ!」


「ちょっちょっと! 展開が早いわよ!」


 ウミはそう言いながらも剣を抜いて構えてくれた。


 大きなリスが近づいてくるたび背筋がゾクゾクする。


 この殺気の感じからしてそこまで強力な魔物ではなさそうだ。


 でも警戒するに越したことはない。


 俺は再度弓を引き胸を狙って撃つ。


「キュア!?」


 胸を狙ったつもりだが前足にあたった。


 すると上手く前足を動かせなかったのだろう。こちらにコロコロと転がってきた。


「はぁっ!」


 ウミはそのスキを逃さなかった。


 剣を首にすべらし手首のスナップをきかして切断した。


「おぉ~お見事」


 鮮やかな剣の腕前だ。


「いやいやソラの弓の腕も大したものよ。この魔物の機動力の足を狙ってくれたおかげで上手くいったもん」


 そう言ってこっちをみてはにかんでくるウミ。


 そんな彼女に、『本当は胸を狙ったら足に当たっただけです』とは言えなかった。


 剣を振って血を飛ばしているウミを横目に大きなリスの解体をする。


 とりあえず首はウミが落としてくれているので腸を傷つけないように腹をさき、内臓をとり、焚火から遠い位置に投げ捨てた。

 

 血の匂いで魔物たちが集まってきたら面倒だからだ。


 後は軽く血を抜き、毛皮を剝ぐ。


 毛皮はなめして持っておこう。


 俺が一通り作業を終えるとウミが近づいてきた。


「こう見ると魔物も食べれそうね……」


 俺がさばいた肉を見ながらウミはポツリと言った。


「だから食べれるって。じゃあ焚火に戻って焼こう」


 かつて大きなリスだった肉を持って帰った。


 この肉塊をナイフで関節を落とし、ばらしていく。


 それを火にかけると肉のいい匂いがする。


 お腹を下すと怖いので中まで火が通っているのを確認してからウミに渡した。


「ほら。焼けたぞ」


 木の枝に刺した焼きたてホカホカの肉をウミに渡す。


「あ、ありがとう……」


 魔物の肉って事で抵抗があるのかしばらくにらみ合っていた。


 そして覚悟を決めたのか思いっきりかぶりついた。


「あっつい!!」


 口に合うのか心配していたのに予想外の展開が起きたので俺は大笑いした。


 ウミは口を開けてハアハア言っている。


 まだ笑い続けている俺を睨みつけた。


「笑いごとじゃないわよ! 危うく死にかけたわ!」


 そういって涙を浮かべるウミ。


「ごめんごめん。口に合うか心配したのにまさか火傷をするなんて」


 ひとしきり笑い終えた俺はよく焼けてそうな肉を手に取りきちんと冷ましてからかじった。


「うん、うまいな」


 良かった。


 これは当たりの魔物の様だ。


 村ではたまに死ぬほど不味い肉が出された時があった。


 思い返せばそれは変な魔物の肉だったんだろうなぁ……。


 そんな思い出がよみがえる。


 俺がフーフーっと冷まして肉を食べてのを見たウミは、俺のマネをして肉を冷ましてから食べた。


「うん……。おいしいわね」


 今度は火傷しなかったようだ。


「な? 魔物もいけるでしょ?」


 俺の問いかけにウミはうなずいた。


 ひとしきり食べ終えた俺らは寝ることにした。


 魔物に襲われたときを考えて交代交代に見張るか話し合った。でも魔物が襲ってきたら殺気で起きるだろ。そう言ってウミには寝てもらうことにした。


 ちなみにそれはウミが気を遣わずに寝てもらうという建前で、俺はもしもの時のために見張りをしておくつもりだ。


 ウミが寝てからしばらくが立った。


 一応体は休めておこうと寝転がっている。


 適当に虫の声を聞いてのんびりしていたこと、異変が起きた。


 辺りに甘い臭いが漂う。


 それは心地の良い匂い。


 深く吸うと頭がくらくらとしそうだった。


 俺はこのままでは嫌な予感がするのでリスの魔物の毛皮をマスクにし周囲を警戒する。


 すると月を背景に夜空に綺麗な女性がいた。


 彼女は漆黒の翼を持ち服の面積が異様に小さかった。

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