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 ギルドを出るとウミがいた。


 道の端っこで三角座りをしている。


「大丈夫?」


 俺はウミに声をかけた。


 ウミは静かに顔を上げた。


 目が赤い。


 恐らく泣いていたんだろう。


「あ、ソラ……。えっと、大丈夫。ありがとう」


 そう言ってまた顔を下げるウミ。


 どうしたものかと困る。


 俺は無言でウミの隣に座った。


「……ソラどうしたの?」


 ウミが顔をうずめたまま聞いてくる。


「いや、一人でいるなんて街の人からおかしな目で見られるだろ?」


 そう言いながら街を見回す。


 人が沢山いる。


 俺の故郷、リールの村では見られなかった光景だ。


 道行く人々は時々おかしな目で俺らを見た。


 それからしばらくした後、シャキッとウミが立ち上がった。


「……そばにいてくれてありがとね! おかげで元気が出た」


 ウミのそんな顔を見ればそんなの嘘だってすぐわかる。


 頑張って笑顔を作っている。


 その苦しそうな笑み。


 前も見たその作り笑いは恐らくクセになっているのだろう。


「はあ……」


 それを見て心が痛くなる。


 リールの村の幼馴染、エマを思い出す。


 あいつもそうやって自分を押し殺していた。


 そう言えばあいつ最後に俺にお守りを作ってくれてたんだっけ。


 それを持って行ってれば未来は多少変わったのかもしれないな。


 もしかするとね。


「ちょっ! ちょっとソラ!?」


 俺はウミを静かに抱きしめた。


 そして優しく頭をなでる。


「ウミ。辛い時は無理に笑わなくていい。思いっきり泣いたらいい。……そんなことをしていたら最後に自分が傷つく」


 するとウミは服を強く握った。


 少し震えているようだ。


「うっ……! うぅ! うわぁぁぁあああああ!!」


 ウミは泣いた。


 俺はそんなウミを抱きしめるしかできなかった。


 そして冒険者ギルドの方をチラッと見る。


 そこにはダン達がいた。


 彼らはこっちを見ていた。


 そしてペコリと頭を下げた。


 その顔はすまないと言っているようだった。


 俺は目をそらす。


 しばらくしてウミを見るともう泣き止んでいた。


 ウミが顔を上げる。


「ねえ、ソラ。私帰る場所なくなちゃった」


 震えた、微かに甘えたような声でウミがもらす。


「ん? 帰る場所がないって……?」


 どういう事か意味がわからなかった。


「私ね……あそこ、冒険者ギルドが家だったの。この街から来た時からあそこで暮らしていた。で、私は死んだことにされちゃった。しかもそれを上に提出しただなんて。もう帰ることが出来ない。私が生きていることがばれちゃったらダン達に重い処罰が下される」


 なるほどね。


 という事は生きているっと報告すればダン達に処罰が行くッという事か。


「ダン達が憎くないのか? 報告すれば罰せれるんだろ?」


 そう言うとウミは首を横に振った。


「ダン達は憎いよ。でも彼らが一番仲間重い。だから嫌いにはなれないの……」


「じゃあこの街から出るって事か? 今の姿を見られたらダン達が罰せられるんだろ?」


 俺がそう言うとウミは驚いた顔をした。


「ほんとだ! 私どうしよう!? どうしたらいい!?」


 ……この子アホなのかもしれない。


「……俺と一緒に旅に出るか? 目的はリールの村の住人を探すっていう旅になるけど」


「はい! ソラさん、お願いしますね!」


 すっごく早い返事だった。


 恐らく俺がこうやって誘うのを待っていたのかもしれない。


 現に今ウミはニコニコしている。


 なんだかはめられたような気がして悔しい。


「それじゃウミの顔が見られないように違う街に出かけるか」


「はい! ソラさん!」


 俺らはドーテリの街を出て行った。


 爽やかな風が吹いている。


 今は昼くらいなのか。


 まあそれはいい。


「さてここから近い街はないか?」


 俺はウミに問いかける。


「う~ん、ここから東に行ったら大きな湖があるの。そこにレイクの町があるわ」


「なるほど。とりあえずレイクの町? そこに行ってみるか」


 そう言って俺らは歩き出した。


「そう言えばソラ。食料とかってどうするの?」


 確かに考えていなかった。


 今俺らは何も持っていない。


「ん~魔物を食べればいいんじゃないかな?」


 俺らは動物が取れないから魔物の肉を食べていたわけだし。


 俺がそう言うとウミは頬を引きつらせた。


「ソラさんソラさん。本気で言ってる?」


「本気も何もリールの村では魔物を食べてたぞ? 魔物が出るせいで動物が取れなくなってな」


 歩いていたらウミが無言になっているのに気が付いた。


 ウミを見たら表情が無くなっていた。


 そんなに魔物を食べるのが嫌なのか。


 おいしいのに。


 ウミが言うレイクの町を目指していたら空がオレンジ色になった。

 

 夜が近いようだ。


「ソラ、今日はこの辺にして休む準備をしない?」


 確かにウミの言う通りだ。

 

「ならあそこは広くなってるからそこで休もう」


 そう言って野宿の準備をする。


 適当な枯れ木を集めてきて重要な事に気が付いた。


「ウミ、火をつける道具ってあるか?」


 火をつける道具を持っていなかった。


 夜になるのに真っ暗なのは避けたい。


「あ! 私がやるわ」


 ウミが近づいて火をつけた。


 便利な道具があるもんだと思ってウミの手を見ても何も持っていなかった。


「ん? ウミ、今何をしたんだ?」


「何って……。ただの魔法よ」


 そう言って指先から小さく火を出した。


「え、なにそれ……」


 魔法っておとぎ話の中でしかないものだと思ってた。


 もちろんリールの村では魔法使える人なんて誰一人としていなかったし。


「え!? 魔法知らないの!? ま、まあそんな人もいるもんね。仕方ない私が教えてあげる」


 そう言ってウミが俺の前に立った。


「いい? 今焚火がそこにあるでしょ? あれをよく見てイメージする。 そして血液を沸騰させる気持ちで指先に力を入れる」


 ウミはそう言うとまた手に火をともした。


「さ、やってみて」


「わ、わかった」


 血液を沸騰させる気持ちは意味がわからないがとりあえずやってみる。


 焚火をイメージか。


 今ウミが付けてくれた焚火を見つめる。


 目をつぶって頭に今メラメラと燃え上がっている焚火を想像する。


 そして指に力を入れる。


「はぁ!!」


 すると指先から大きな爆発がし、そこで意識がなくなった。

 

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