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 急いで村に向かう。


「な……!?」


 俺が見たのは真っ赤に燃えた村だった。


 村人の安否を確かめようと赤くなった村に入っていこうとする。


 グイッ!


 何者かに服を引っ張られた。


 驚いて後ろを振り返ると険しい顔をしたルージュさんがいた。


「いいか。今からお前はここから逃げるんだ。この森を真っすぐ行くと大きな街がある。そこに行って助けを求めて欲しい」


「お、おれ一人でですか!?」


「ああ。頼む。俺が見る限りお前は村一番の狩りの才があるはずだ。お前一人でもこの森を抜けれるはずだ」


「な、ならルージュさんは!? ルージュさんはどうするんですか!?」


「お前も感じるだろう。村から感じるこの殺気を。俺は村の様子を確かめる。そして一人でも多くの村人を助ける」


「じゃ、じゃあ俺だって手伝いますよ!」


 俺がそう大声を出したその時、ルージュさんに突き飛ばされた。


 ザシュッ!!


 さっきまで俺が立っていた地面が切り裂かれていた。


「グルル……」


 俺らの目の前に現れたそれは大柄な人狼だった。


 殺気は感じなかったが強力な魔物だと一目見てわかる。


「ソラ……! いいから早く行け! お前を守りながら戦えん!」


 ルージュさんが短剣を構えながらそういった。


 お前は戦力外だと、そう言っているようだ。


 俺は悔しさと自分の無力さを噛みしめながら全力でこの場を離れた。


「頼むぞ。ソラ。お前はこの村の唯一の希望なんだ……」


「グォオ!」


「行くぞ! 化け物よ!」











「はあはあ……!」


 俺は自分の故郷、リールの村を出て、森を抜けた。


 さっきの人狼は全く殺気を感じなかった。


 森を抜けるときは魔物と出会わないようなるべく殺気をよけて進んでた。


 でも中にはあの人狼のように殺気を消せる魔物がいるかもしれない。


 一瞬たりとも気を抜けない。


 心と体をすり減らしながらルージュさんが言っていた街を目指して走る。


 どれぐらいの時間を走っていたのだろうか。


 明るかった空がだんだんと暗くなってきた。


 もう走る気力がない。


 それでも諦めずに前に進むと前に大きな壁が見えた。


 恐らく城壁だろう。


 見えた希望に俺は再び足を動かす。


 やっとたどり着いた。


 そう思って門に手を伸ばした時、声がかけられた。


「止まれ。どこから来た」


 左右からかけられた声に気づく。


 それは門番だった。

 

 余りに疲労が大きくて周りが見えていなかったらしい。


 俺はゆっくりと呼吸を整え、リールの村で起きたこと、助けが欲しいと伝えた。


「リールの村……? 聞いたことが無いぞ。まあいい。怪しい者ではなさそうだ。入るといい。旅人よ」


 門番はそう言って門を開けてくれた。


「それから困りごとがあれば冒険者ギルドに訪れるといい。最近魔物が出るようになって王が考え出した策だ。腕に自信がある奴が雇える。場所はこの道を真っすぐと行ったらわかる」


 門番はそう言って俺を街に入れた後に静かに門を閉めた。


 とりあえず俺は教えて貰った冒険者ギルドに向かう事にした。


 少し歩くと大きな建物がある。


 多分ここが冒険者ギルドなのか。


 ここは扉は無く、中が騒がしい。


 入るのに勇気がいるが今はそんなことを言っている場合ではない。


 俺は中に入った。


「ん! おお坊主! 依頼か!? 魔物討伐なら俺に任せな!」


 そんな威勢のいい声でこっちに近寄ってきたのは酒臭い男だった。


「いやいや! そいつは客の足元を見てぼったくるひでぇ奴だぜ! 依頼なら俺に任せろ!」


 今度は別の男がやってきた。


 唖然としていると奥から色々な屈強そうな男たちが集まってきた。


 俺は彼らにリールの村で起きたこと、魔物退治をお願いしたいことを伝えた。


「ん~? リールの村だ? そんな所初めて聞いたな。まあいい。で、いくらだ?」


「えっ?」


「いや、依頼したいんだろ? 報酬、いくらだすんよ」


 いくらって事はお金って事だよな。


 俺はルージュさんから貰った弓矢しか持っていない。


 お金とかもちろん持っていない。


「すみません。お金は一銭も持っていないです」


「「「ギャハハハハハ!!!」」」


 俺がお金を持っていないと伝えると男たちは笑い出した。


「おいおい聞いたか!? こいつ俺らをなめてるぜ!」


「魔物がどんなに危険かわかってねえようだな!」


「俺らは死ぬかもしれねーのに無償で手を貸すほど馬鹿じゃねーんだよ!」


 そう言って男たちはまた大声を上げて笑い出した。


 俺は悲しくなって無言でここから出て行こうとした。


 その時、バンッ!っと机を叩く音がした。


 驚いて振り返る。


「ちょっとあなた達! ここに所属する上でのルール忘れたの!? 私利私欲の為には行動しない、困った人は全力で助けなさいっていうルールを!」


 そう声を張り上げたのは赤い髪をした少女だった。


 その姿を見た男たちはつまらなさそうにため息を吐いた。


「おいおいお嬢ちゃん。そんな綺麗事をしていった人間がどうなっていったか知ってるか? もちろん知らないって言わないよな?」


「知ってる。国民を守って尊く去っていったわ」


 その少女の答えに男たちはまた笑い出した。


「ギャハハハハ! ……ちげぇよ。あいつらはただの馬鹿だ。ほら見ろよ。その証拠におめーみたいな馬鹿な事を言う奴から先に死んでいった。今では誰一人馬鹿な事を言う奴がいねぇ」


 男は遠くを見ながら酒を飲んだ。


 その瞳は微かに怒っているように見える。


「違う! あんたら見たいな魔物の殺気に怯えている腰抜けたちとあの方々を一緒にしないで!」


 ダンッ!!


 少女が声を張り上げた時、男が思いっきり机を叩いた。


「お前は!! ……お前は魔物を見たことが無いんだろう!? なのに何故その大層な口をきける! それにあいつらはどうやって死んでいったか知っているのか!!」


 その男の声に少女は黙りこんだ。


「……」


 男は静かに酒をあおいだ。


 少女ではなく何かについて怒っているようだ。


「わかったわ。私が行く」


 ポツリと少女が言った。


 その声に遅れて男が少女を見る。


「お、おい。どういう事だ……?」


「貴方たちがこの方の助けにならないって言うんだったら私が付いていく!」


 その少女の声に男たちは驚いている。


 そして俺の方に歩いてきた。


「ここの者がすみません。さ、行きましょうか」


「お、おい! 待て! なぜ、行く!」


 男の声を少女は無視した。


 俺の手を引いてギルドから出ようとする。


「これ以上……! これ以上は……」


 少女は男の声を最後まで聞かないように離れていった。


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