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「ふああ……」


 いい朝だ。


 俺は温かい日を感じながら起きた。


 今日は狩りに出る日だ。


 昨日までは山菜や木の実を取っていた。


 でもお前はそろそろ狩りに出てもいい年ごろだろうと、村一番の狩人であるルージュさんに誘われたのだ。


 俺は今年で16歳。


 狩りに行けるというのは大人と認められるということ。


 今日という日をどれだけ待ったか。


 俺は適当な身支度をして家を出た。


「あ! ソラ! おはよう!」


 声をかけられた方を見ると幼馴染のエマがいた。


「おはよう。朝から枯れ枝集めか? 頑張ってるな」


 エマの背中にあるカゴを見ると結構な量の枝が詰められてあった。


「ありがと。それよりも今日は狩りの日でしょ? ルージュさん、怒ってるよ? ソラは寝坊か!って」


「え。今ってそんな時間?」


「うん。皆働いてるもん」


「まじか。ありがと! じゃあ行ってくる!」


 俺は急いでルージュさんの所に向かおうとする。


「あ! 待って! ソラの為にお守りを作ったの!」


「ごめん! 帰ってから受け取る!」


「帰ってからじゃ意味ないのに!」


 俺はエマの言葉を無視して全力で走り出した。


「全くもう……」


 エマは自分で作ったお守りを強く握りしめた。


「今日は凄く嫌な予感がするの……。どうか神様、ソラが無事で帰ってきますように」


 お守りを握りながらエマは強く願った。




「ソラ! 遅いぞ!」


「ルージュさんすみません! 本当にすみません!」


「まったく…… 寝坊するとかお前らしくない。しかもこんな大事な日に」


 そうぶつぶつ言いながら俺に弓矢を投げ渡してきた。


「まあいい。さっさと行くぞ」


 ルージュはそう言って村の外へと歩いていく。

 俺は黙ってその後をついていった。

 

「ソラ。わかってると思うがなるべく音を立てるなよ」


「わかっています。何度もルージュさんに教わりましたから」


 俺は小さいことから狩りについて色々と教わってきた。

 

 その中でもちろん弓の練習をしていたし、獲物が逃げるから足音を立てるな、喋るなと習ってきた。


「ならいい。ついてこい」


 俺はコクっとうなずくとルージュさんの後に黙々とついていった。


 しばらく歩いて村が見えなくなった所。


「……お前には話しておかないことがある」


 急に立ち止まり静かに口を開いた。


「何ですか」


 狩りでは話していけない、静かにしておかないといけないと教えてくれたルージュさんがいきなり話しかけてきことに驚いた。


「この世界の事だ」


 ルージュさんはそう言って今まで聞いたことのない声色で話した。


「俺たちが狩る獲物は鳥やイノシシという動物ではない」


「え。なら何を狩りに来たのですか……?」


 ルージュさんのその言葉の意味がわからなかった。


 もしかして俺が寝坊したからその罰として木の実拾いとか?


 いや、それなら弓矢を渡してきた意味がない。


 ルージュさんの意図をくみ取ろうと思考がグルグルと回る。


「我々、リールの村の狩人たちが持って帰っている肉は魔物の肉だ」


 突然の告白により頭が真っ白になる。


「最近動物がいなくなった。理由は魔物のせいだ。奴らがこの森の動物たちを一匹残らず喰らった」


 俺は黙ってルージュさんの話を聞いた。


「昔は年に数回見るか見ないかだった。だがここ数年、ぽつぽつと姿を現していった。そしてついに魔物しか見なくなった」


 初めて知った村の外の世界の事。


 ……魔物の事は小さくだが記憶がある。


 覚えている範囲では、悪い王様が生み出した、人を見つけ次第に襲ってくる人類の敵という事。


 小さい時に読み聞かせてくれた本にそうあったと思う。


 でもその本によると正義の力によって悪い王様は滅ぼされ魔物もいなくなった……らしい。


「このことは村長と話し合った。そして村人を混乱させないように黙っておくことにした」


 ルージュは俺に言いたいことを言って歩き出した。


「なら今から魔物を狩るんですよね? 魔物ってどんな見た目をしてるんですか?」


「近くに寄ったらわかる。殺意がするんだ」


「殺意?」


 俺は疑問に思ったけどルージュさんは何も話さなかった。


 するとルージュさんは手を俺の前に出した。


 どうやら止まれの合図らしい。


 そして指をさした。


 その先を見ると赤色の目に緑色の4つの翼をもつ鳥がいた。


 ルージュさんは2本の矢を持ち、撃った。


 ザシュッ!!


 一本は喉を貫通し、もう一本は翼の付け根に刺さっていた。


 バサバサと暴れる鳥はまだ生きている。


「ソラ、あれが魔物だ。ついてこい」


 俺は黙ってルージュさんが仕留めた気味の悪い鳥に向かって歩いていく。


 それに一歩一歩近づくたびに心臓がドクンドクンと響いていく。


 ――怖い


 ――今すぐここから離れたい


「ソラ。こっちに来るんだ」


 ルージュさんのその一言で足取りが止まっていたことに気づいた。


 そんな俺を見るとルージュさんは鳥を手に持ちこっちに近寄ってきた。


 鳥が近づくたびに歯がガタガタなった。


「お前が感じたその恐怖が魔物が放つ殺気だ」


 そう言ってルージュさんは短剣で鳥の胸を刺した。


 ビクンと鳥がはね、そのまま動かなくなった。


 それと同時に殺気も消えていた。


「殺気が強ければ強いほど手ごわい魔物だ。覚えておけ」


 そう言うとルージュは器用に内臓をくり抜き軽く血抜きをした。


「次はお前にも狩って貰おうぞ」


 肉と化した鳥の魔物を布をかぶせ腰につるした。


 そうしてしばらく歩く。


「おかしいな…… 森がやけに静かだ」


 ポツリとルージュがそう呟いた。


「いつもはもっと魔物が多いんですか?」


「ああ。本来なら数十匹見かける」


「いや、多すぎでしょ」


「最近は本当に数が多いんだ。でも今日は様子がおかしい」


 ルージュは何かを考えているのか手をあごに当てた。


「いったん村に戻るぞ」


 俺らは狩りを止めて一旦村に帰ることにした。



 


 村の近くに来た時、異変を感じた。


 村から恐ろしい気が立っている。


 鳥の魔物よりもはるかに恐ろしい殺気。


 それが村のあらゆる方向から感じる。


「急ぐぞ。ソラ」


 そう言ってルージュさんは走っていった。


 でも俺はすぐには付いていけなかった。


「うぷっ……」


 余りにも恐ろしい殺気に吐きそうになるが耐える。


 村から様々な、強力な殺気が感じるという事は、魔物に村が攻められているという事だ。


 俺にはあの村しか帰る場所がない。


 それに何も恩を返せていない。


「くそ……!」


 恐怖で命令が聞かなくなった足を無理あり動かす。


 そしてルージュさんの後についていった。

 


 

 


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