弟子vs師
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三日後の夕刻……俺がエルフの集落の入口で師匠が来るのを待っていると、森の中からゆらりと見覚えのある立ち姿の人影が現れた。
「約束通り、私を待っていてくれたんだな。」
「そりゃあ……大恩人の師匠のお願いでしたから。」
こちらにゆっくりと歩いてくる師匠の動きは、どこか歪だ。自然な動きではないように見える。
「私も全力で抗ってはいるんだが……どうも命令のほうが強いらしくてな、少しばかり動きを鈍くすることぐらいしかできない。」
「それだけで十分ですよ。」
ゆっくりと近づいてくる師匠へと向かって、俺は慣れ親しんだ構えをとった。すると、それに応じるように師匠も同じ構えをとる。
「私への配慮なんざ考えるなよ?四肢をすべてへし折ってでも、私を止めるつもりで来い。」
「わかりました。」
そう言った直後師匠は音もなく、まるで間合いをハサミで切り取ったように、俺の懐を侵略していた。
「痛いぞ?」
懐を侵略する動きに繋がって繰り出されたのは、シンプルな中段突き……。だが、シンプルと言うにはあまりにも高威力なものだった。
「喰らいませんよっ!!」
その中段突きを受け流しながら、勢いを利用して投げ技を仕掛けようとするが……。
「っ!?」
師匠の体はまるで巨木を背負っているかのように、ちっとも浮き上がらなかった。
「ありきたりな反撃は通用しない。特に私が教えたものはな。」
そして投げ技を仕掛けて体勢が悪くなっている所を掴まれ、逆に豪快に投げられてしまった。
「ぐぅぅっ……。」
何とか受け身は取ったものの、全身がビリビリと痺れている。痛みに呻く暇もなく、師匠の追撃が放たれる。
「すぐに起き上がらないと、危ないぞ。」
「くっ!!」
痛みの走る体を無理やり動かして、その場から何とか逃れる。俺が動くとほぼ同時に、さっきまで俺の顔があった場所に、師匠の踵がめり込んでいた。
「ん、よく避けた。」
「はぁ、はぁ……それ、本当に動き阻害してます?」
「しているつもりだ。」
「つもりじゃダメなんですよねぇ。」
やはり普通の体術じゃ、全く刃が立たないな。アレを使うしかない。
「普通にやったら全く勝ち目が見えないんで、使わせてもらいますよ。……龍桜。」
俺は、散桜と龍化を同時に発動し、一気に身体能力を極限まで引き上げた。すると、それを見た師匠がニヤリと笑った。
「出たな。」
「師匠には使うなって、口酸っぱく言われてましたけど、散桜のデメリットは俺なりにカバーしましたよ。だから……文句はないですよね?」
「あぁ、もちろんだ。」
なぜだろう、師匠は止めてほしいと言っているのに、表情はとても楽しそうに見える。
……気のせいか?
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