美味しそうな香りに誘われて
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レイとともに通りを歩いていると、彼女は突然クンクンとしきりに鼻を鳴らして、周りの匂いを嗅ぎ始めた。
「おぉ……何やら良い匂いがするのじゃ。」
「なんかスパイスの匂いがするな。」
空気を漂って鼻を刺激してきたのは、スパイスを炒めたような香り。それと一緒に肉の焼けるいい匂いも漂って来ていた。
「こっちじゃ、こっちから匂いが漂っているのじゃあ〜。」
匂いを辿って裏道を進むと、目先に一軒の料理店が見えてきた。意外なことに中にも外にもお客さんがいる様子はない。
「お、ここかな?」
「うむ!!間違いないのじゃ。ここから良い匂いがするのじゃ!!」
ビシッとレイがそのお店を指差すと、中から店主らしき一人の虎のような見た目の獣人が現れた。
すると、まだお昼のかきいれ時だと言うのに、お店の営業中の看板を片付け始めたのだ。
「あ、もう営業は終わり?」
思わずそう問いかけると、その獣人はちらりとこちらを見た。
「あなたは、勇者様……ですよね?どうしてまたこんな所に?」
「このお店から美味しそうな匂いがしたから、ご飯を食べようかと思ったんだけど……。」
「あぁ!!そういうことでしたか、私の料理でよければお腹いっぱい食べていってください。中へどうぞ。」
なんとかご飯にはありつけるみたいだな。良かった良かった。
お店の中へと入ってみると、中はカウンター席とテーブル席があって、一人でも家族連れでも入りやすい雰囲気だった。
他にお客さんはいないみたいだし、せっかくだからカウンター席に座らせてもらおうかな。
席に座ってから、すぐにお水とメニュー表が運ばれてきた。それに二人で目を通しながら、あの美味しそうな香りの料理を探していると……。
「あ、このケーブって料理はどんな料理なんだ?」
「それは当店の……一応看板料理でして、たっぷりの香辛料をまぶした黒乱牛のバラ肉を野菜と一緒に焼いて、芋の粉で作った生地で包んで食べる料理ですね。」
「ほぉ、聞いただけでも美味しそうだ。」
おそらく、これがお店の外まで香ってきていた匂いの正体だろう。
「主はそれを頼むか?」
「あぁ、看板料理って言ってたし、食べてみたいと思った。」
「ではワシもそれを頼むのじゃ!!」
「ありがとうございます。それではケーブ二つ、すぐにご用意します。」
「あ、二つじゃなくて……五つぐらいで。こっちのレイがめちゃくちゃ食べるんだ。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
さてさて、どんな料理が運ばれてくるのか……楽しみだな。
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