フレイを連れてきた理由
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「今回は、お菓子の材料を探しているのでしたな?」
「はい、そろそろ新作のお菓子を発売しようと思ってて。珍しい果物も悪くないんですけど、できれば供給が安定しているものが欲しいですね。」
「わかりました。ではいくつか持ってこさせましょう。」
サラサラとミルタさんは紙に何かをメモすると、部屋の外で待っていた従業員の獣人に手渡した。
「頼みましたよ。」
「かしこまりました。」
そして再び扉を閉めると、ミルタさんは正面のソファーに腰掛けた。
「それにしても、ヒイラギさんとエルフのお店はだいぶ繁盛しているようですな。」
「まぁほどほどには。」
「またまた御謙遜を。人間の国でも、この国でもかなり話題になっておりますぞ?エルフの売るお菓子が安くて美味しいと。」
「それは嬉しいですね。」
「私も一度購入させて頂きましたが、あれは本当に美味しいお菓子でした。あんな安さで売られているのが不思議なほどです。安さの秘密などはあったりするのですかな?」
「それは、もともとエルフの国で食べられないと言われていた食材を使ってるおかげですね。」
今でこそ、あの小豆みたいな豆はリコが必死になって栽培してくれてるけどな。
それでも、一般の家庭には売り物にならないからって、かなり安くこちらに売ってくれているのだ。
「なるほど、食べられない食材を食べられるようにしたのが、あのお菓子というわけですな。」
とても興味深そうに、ミルタさんはこちらの話をメモしている。
「いやはや、勉強になりました。食べられるものに目を向けるのではなく、食べられないものに目を向けるとは。」
「ただ目の前で食材が一つ捨てられるのが、見てられなかっただけですよ。」
「いえ、それこそが商いには大事なのです。他の人にはない発想……ヒイラギさんにはそれがあったということですな。」
ミルタさんとそんな事を話していると、部屋の扉がコンコンとノックされた。
「おっ、どうやら持ってきてくれたみたいです。入っていいですよ。」
「失礼いたします。」
従業員の人が、大きなお皿にたくさん果物を乗せて部屋に入ってきた。どれも供給が安定している果物らしいが、見たことのないものもあるな。
「ふわぁ〜、いろんな果物があるね。」
「そうだな。さ、ここからどれがどんなお菓子になるか……フレイも一緒に考えてくれ。」
「うん!!がんばるよ!!」
フレイは俺がエルフの国へ行っている間に、随分お菓子の腕を上げた。一人で簡単にケーキも作ってしまうほどに。下手したら、今の俺よりも腕はあるかも……。
だから、今日は彼女のお菓子の知識も借りようと思い立った訳だ。一人じゃでてこない発想も、二人だと出る可能性もあるからな。
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