カリンの実娘 ユリ
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お店の営業をアンネに任せて、カリンと彼女に絞られたユリと共に、カリンの屋敷へと向かう。
「いやはや、ユリが迷惑をかけてすまなかったな社長よ。」
「まぁ誰も怪我はしてないですし、全然大丈夫ですよ。」
「そ、そうだぞ母上。アタシは誰にも怪我は負わせてない。」
頭のたんこぶを押さえ、不貞腐れたように言ったユリへ、カリンが全身から怒りのオーラを発しながら、ドスの利いた声をあげる。
「母に反論するとは……もう一つたんこぶを増やされたいらしいな。ん?ユリよ。」
ドスの利いたその声に、思わずガタガタと体を震わせながら、ユリは必死に首を横に振った。
「まったく、人間である社長がこの国に滞在する事を許可されているのには、ちゃんとした理由がある。その一つがコレだ。」
そう言ってカリンは袋からどら焼きを取り出した。
「母上、それはいったい何だ?」
「コレは社長がこの国の食材を使って作った甘味である。この国に住む我が子等は、皆この甘味に夢中になっているのだ。」
カリンはパクッと一口どら焼きを口にすると、先程までの怒りの表情がまるで嘘のように、穏やかで幸せそうな表情へと変わった。
「うむうむ、今日も今日とて美味い。このどら焼きと共に飲むマンドラ茶が最高なのだ。」
どら焼きを一口食べては、苦みの強いマンドラ茶を飲み、幸せそうなカリンをユリは少し羨ましそうに見つめていた。
「は、母上……そ、それそんなに美味しいならアタシも食べてみたい。」
「ん〜?なんだ、欲しいのか?ならば社長から買うと良い。」
「で、でもアタシ今お金ないし……。」
急にモジモジとしだしたユリ。どうやら食べたくてもお金がないらしい。
「それは困ったなぁ。」
わざとらしくカリンはそう言いながら、クスリと笑うと、服のポケットから1枚の紙を取り出した。
「おぉ!!そう言えばこんな物を拾っていたのだった。」
「な、なにこれ。」
ユリが折りたたまれた紙を開いてみると、その紙に書いてあったのは、俺の会社の求人の情報だった。
「この会社で働けば……お菓子が無料ッ!?お、おい人間っ!!これは本当なのか!?」
「あ〜……まぁ本当だ。」
「しかも給料まで毎月支払われるだと!?い、今の仕事よりよっぽど条件が良さそうだ……。」
求人の紙を見てガックリと肩を落とすユリに、不思議そうにカリンが問いかけた。
「なんだ、魔物専門の狩人になったのだろう?農地を荒らす魔物の討伐で金ぐらい訳なく稼げるだろうに。」
「は、母上はこの仕事の現状を知らないから、そんなことが言えるんだ!!農地を荒らす魔物なんて、すぐに他の同業者に狩られてしまうんだぞ……。」
話しているうちに、うるうると涙腺が緩んできたユリは遂に泣き出してしまった。それをカリンが宥めながら、チラリとこちらへと視線を向けてくる。
(そういう事か……。カリン自身、そんな割に合わない仕事は辞めて欲しいと思ってるみたいだ。)
彼女の意図を察した俺は、一つ頷くのだった。
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