追跡
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ふざけた言葉の書いてあった紙をぐしゃぐしゃに握りしめながら、開け放たれている窓際に立った。
「行ってくる。」
そう二人に告げて俺は開け放たれた窓から飛び降りた。
俺が飛び降りるのをみて、二人が何か言葉を投げ掛けてくるが、激しい怒りのせいで全く耳に入ってこない。
着地すると、ブレスオブディザスターを纏った時に現れる黒い稲光が地面に走った。
「絶対に逃さない……。」
怒りのせいかはわからないが、勝手に俺が使えるスキルが発動していく。
そのせいで俺の体には角が生え、翼が生え、挙句の果てには尻尾まで生え、あっという間に半人半龍のような姿になってしまった。
スキルによって生えた翼を羽ばたかせると、一瞬で大空へと舞い上がることができた。そこから下を眺め、思考を巡らせる……。
(吸血鬼が昼間に活動できないことを考えれば、実行犯は恐らくあの黒い獣人の女性だ。人目につくような場所を通ることは避けるはず……となればこの先の森の中へと駆け抜けていったと考えるのが無難。)
「姿も消せて、影の中も移動できる……。だけど、気配を消せるのは影の中だけ。」
つまり、影の中から現れるその一瞬だけは気配を感じ取れる。
いくら森の中と言えど、影が無限に進行方向に続いているわけはない。今は太陽も登っていることだし、尚更だ。
再び翼を羽ばたかせ、広い森の中央に移動すると、ゆっくりと目を閉じる。
すると、スキルによって体が変化しているせいだろうか?自分でも驚くほどに周りの小さな動物の微細な気配まで感じ取れるようになっていた。
耳を澄ませば、草むらが少し揺れ動く音までハッキリと聞こえてくる。
(どこだ…………。)
気配を探っていると、かなり遠くでほんの一瞬……とてつもなく強い気配を感じ取れた。これは隠しきれていないシアの気配だ。それに紛れて感じたことのあるアイツの気配も感じる。
「見つけたぞ。」
気配の下へと移動しようとした時、若干戻りつつあった理性が俺を引き止めた。
「……待てよ、アイツはどこに逃げてる?」
逃げる先……考えられるのは、親玉だという吸血鬼リリンの下。
アイツを追っていけば、リリンの下へと辿り着ける。この襲撃に終止符を打つことも可能なはずだ。
「ひとまずシアは生きてる。それにアイツのことも完全に捕捉した。少し泳がせてみるか。」
冷静さを取り戻した俺は、時々感じられるシアの気配を辿り後を付けていく。すると、しばらく進んだところで遠くの方に古びれた城のようなものが見えてきた。
「なるほど、あそこが根城か。」
シアの気配もそこへと向かって一直線に進んでいる。
「場所が割れたなら待ち伏せてやるか。」
そして一足先に俺は古城へと飛び、戻って来るあの黒い獣人族の女性を待ち伏せるのだった。
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