五分の盟約
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シンは一つ大きく息を吐きだすと、思いもよらないことを口にしたのだ。
「我はこの大きな借りを返すために、この三人の人間の勇者と五分の盟約を結ぼうと考えている。」
その言葉に集まっていた兵士は騒然となった。しかしそんな中、羊の獣人が声を上げる。
「恐れながら王よ!!そのお考えは正気なのですか!?」
「むっ、メーネルか。我はいたって正気である。もしや、あれか?我が国が滅亡の危機に陥ったのを救われた…という大義にはこれではちと足りぬか?」
「い、いえ、そういうことではなく……。王は仰っている事の意味がお分かりなのですか!?王が仰っていることは…。」
「そんな事は言った我が一番良くわかっている。今の現状で我らが報いる事ができる一番の方法だと我は思っている。」
そうはっきりとシンは羊の獣人に言ってのけた。
「うむむ、ですが……。」
「まぁいいじゃないかメーネル。」
と、狼の獣人が羊の獣人をなだめ始めた。どうやらこちらの獣人は賛成派らしい。
「が、ガルドは王の意見に賛成なのですか?」
「あぁ、賛成だ。それに王が、ここにこんなに早く戻ってこられたのも彼らのおかげらしいぞ?彼らの功績は一つだけじゃない。」
「なんと、それも彼らの……。」
羊の獣人はうーむ…とひとしきり唸ってから結論を出した。
「わかりました、王の仰せのままに。」
「うむ、この場で他に意見のあるものはいないな?」
そして再びシンは周りを見渡した。挙手するものはおらず、この中にはシンの案に反対するものはもういないようだ。
「我からは以上だ。皆よ、今はゆっくり休み英気を養ってくれ。」
そう言い残しシンと共に兵士達の前から去った。シンと歩いている時にさっきの五分の盟約について聞くことにした。
「シンさん、さっきの五分の盟約というのはいったい?」
「む?ヒイラギは知らぬのか?」
彼は少し驚いたようにこちらをみた。なにぶんこの世界に来たのは最近なもので……なんて言えるわけはなく。
「生まれが田舎で世間には疎くて。」
「そうだったか、五分の盟約…というのはだな簡単に言ってしまえば我と立場を同等にする盟約だ。」
「……つまりそれって。」
「うむ!!我とお主達は対等な関係になるということだ。つまり友というやつだな!!」
この人と立場が対等になるってことは、そんな友って言葉で表していいほど単純な関係じゃないはずだ。
あの羊の獣人が渋っていたのも頷ける内容の盟約だった。
「我には初めての友ができ、ヒイラギ達はこの国で我と対等な関係にあることを示せた……お互いに利益のある盟約だぞ。」
初めての友って……まぁ王という大きな立場にもなれば、気軽に友と呼べる存在もいないのかもしれないな。
意外と偉い人っていうのは孤独なことが多いから……シンもそうだったのかもしれない。
だが、シンが五分の盟約を結んでくれたおかげで、確実に獣人と人間の間に確かな結びつきが生まれたのも事実だ。これをもっと強固なものにしていきたいな。
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