女神との約束
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俺は用意した一人用の鍋に、さっきの盛りつけと同じように小さな石狩鍋を作り上げた。
「これでよし。」
そしてそれを持って、厨房の空きスペースの一角に設置した、小さな社へと持って行った。
これは、昨日季節の女神ゼラからもらった、彼女達の神域に繋がっている、言わばミニ教会のようなもの。
彼女達から加護を受け取る代わりに、毎日の夕食を少しここにお供えするという約束を交わしていたのだ。
「ここにお供えして……。」
一人用の石狩鍋を供えて手を合わせると、俺の意識はふっ……とまた神域へと連れて行かれた。
「あ、きたきた〜。今日のお供え物〜。」
「約束通り持ってきてくれたわね。」
そこでは、メルとゼラの2人が1つのテーブルに向かって座っていた。
彼女達が囲んでいるテーブルの上にカセットコンロを設置し、鍋を温め始める。
「ちゃんと作って持ってきたけど……こんな小さいので足りるのか?昨日、かなりがっついていたような感じがしたけど。」
メル達に要求された対価の詳しい内容は、夕食1人分を供えるということ。でも、この2人がたった1人分の供え物で満足できるとは思えなかった。
「ふふん、私達女神の力を甘く見てもらっては困るわね。」
そう言ってメルがパチンと指を鳴らすと、1人用の鍋がグングンと成長するように大きくなって、大人数用の鍋に化けてしまった。
「ま、こういう事ができるから、1人分で良いわよって昨日言ったわけ。」
「なんならも〜っと大きくもできるよ〜。」
「…………改めて女神ってデタラメな存在だ。」
物質そのものまで巨大化できるとは、本当に女神は理から外れたとんでもない存在だな。
「さてさて、今日の捧げ物は何かしら〜♪」
コトコトと鍋が煮立ってきた所で蓋を開けると、蒸気と一緒にブワッと味噌の香りが女神2人の鼻を突き抜けていった。
「今日のも美味しそうね〜。さっ、それじゃ頂きましょ!」
「今日もいただきま〜す。」
「それじゃ、約束のものは届けたし、俺はみんなの所に戻るよ。」
「はいは〜い、また明日もよろしくね。」
そんなやり取りをしたあと、俺の意識は厨房の中へと戻ってきた。
「……鍋の具材がモリモリ減ってる。」
捧げた鍋の具材がモリモリと減っていっているのを見て、俺は向こうであの女神2人がたくさん食べている姿を想像してしまった。
そして俺達もソードテールサーモンの石狩鍋を最後まで堪能したあと、また捧げた鍋の様子を見に来ると、空になった鍋の中に『おかわりちょうだい。』と書かれた紙が入っていた…………。
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