キチン質の可能性
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あっさりとスノウパンチシュリンプを倒したリリンは、むすっとしながら蝙蝠のような羽根を羽ばたかせながら上に上がってきた。
「大した知能もない雑魚の分際で私のことを嵌めようなんて、1000年早いのよ。」
頭部に刺さっていた真っ赤な鎌を引き抜くと同時に、リリンはこちらにスノウパンチシュリンプをぶん投げてくる。
「コイツ、食えるの?もし食えないなら、本当に何の利用価値もないんだけど?」
「わからない。でも見た目は完全にシャコだし……普通に美味しいんじゃないかな。」
「コラーゲンは?」
「ないな多分。」
「チッ、使えないわね。」
ゲシゲシとスノウパンチシュリンプの甲殻を蹴りつけるリリンの姿を眺めていると、俺は以前読んだ海の生き物の文献を思い出した。
「……キチン質。」
「何よそれ。」
「こういう甲殻類の殻に含まれてる成分のことだ。」
「それが何だっていうの?」
「コラーゲンとはまた違う美容成分がキチン質にはあるとか、そういう文献を読んだことがある。」
そう言うと、リリンはぴたりと蹴るのをやめた。
「なによ~、そういうのがあるなら早く言いなさいよね。」
「テンプレのような手の平返しだな。」
さっきまでの態度とは一変、いとおしそうになでなでとスノウパンチシュリンプを撫で始めた。そんな様子を眺めていた師匠が呆れながらぽつりとつぶやく。
「ヒイラギ、まだ時間はあるのよね?」
「まぁ、まだ余裕をもって下山できるぐらいの時間はあるな。」
「なら、その時間ちょっと使わせてもらうわ。」
リリンは服の内側から何匹か蝙蝠を取り出すと、それを空に向かって放った。するとその蝙蝠一匹一匹が、リリンそっくりの姿に変わっていく。
「さて、じゃあ私に無礼を働いた責任を……とってもらいましょうか。」
彼女が真っ赤な大鎌を横に一薙ぎすると、目の前に積もっていた雪が一部分だけ切り取られたように消えてなくなり、奴らの巣穴があらわになった。
「じゃあ行くわよ。覚悟しなさいっ!!」
リリンの本体含め、分身体たちは、一斉に巣穴の中に突っ込んでいった。その直後次々とスノウパンチシュリンプが狩られていった。
「やっぱり女性の美への欲求っていうのは恐ろしい。」
リリンが突っ込んでいない穴の中へ、俺の背後にいたドーナと師匠まで突っ込んでいってしまったのを見て、思わず俺はそう口にしてしまった。
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