釣り人達が狙っていたモノ
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スクロゥで昼食を食べ終えて、今一度女性陣達が服を見直している間、俺はグレイスとともにこの街の中を軽く観光して回っていた。
「ん?あそこに釣り人がちらほらいるな。」
「ホントっすね。こんな寒いのに良くあんなにじっとしてられるっす。」
何が釣れるのか気になった俺は、近くにいた初老の男性に声をかけてみた。
「この辺、何か釣れるんですか?」
「ん?なんだ兄ちゃん、ここらじゃ見ない顔だな。」
「実は旅の途中でふと立ち寄ってみたんです。」
「ってことは観光か。残念だが、この街にゃ見るもんはこの川ぐらいしかないな。」
「でも、その唯一の川で皆さん必死に何かを狙って釣りをしてるみたいですね?」
「あぁ、ここにいるやつはみ〜んな、この寒期にしか現れない川のヌシを釣り上げようと必死なんだ……いよっと。」
そう説明しながら、彼は川魚を一匹釣り上げると、すぐに針を外してリリースしてしまった。
「川のヌシ……なるほど。」
「ここ何十年とヌシは姿を現してないが、釣り人はそいつを釣り上げて歴史に名を残そうとここにやってくる。その辺にいる奴らもみんなそうだ。」
釣り人が集まっていたのはそういうことだったのか。なるほどな。
「皆さん街の中で釣りしてますけど、外ではそのヌシを狙ったりはしてないんですか?」
「外で釣りをしようもんなら、よほどの腕っぷしを持ってねぇ限り、キックバトルバードの餌食さ。アイツら、視界に入った仲間以外のやつを一先ず蹴り殺そうとするからな。」
そう語りながら、彼はふとあることを疑問に思ったらしく、こちらに問いを投げかけてきた。
「そういや兄ちゃんらは、アイツらには出くわさなかったのか?」
「えぇ、運良く出会いませんでしたね。」
「はは、そいつは本当に運が良かったな。帰り道も何も出くわさなきゃ良いな。」
「そうですね。……貴重なお話ありがとうございました。」
「おぅ、良いってことよ。気ぃつけてな。」
ドーナ達が服屋から出てきたのを横目で確認したので、川のヌシという情報をくれたその初老の男性にお礼を言って、彼女達の所へとグレイスを連れて戻った。
出来ることなら、この旅の道中でその川のヌシってやつを一目拝みたいが……何十年と姿を現していないということだから、難しいかもな。
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