シンvsミクモ?
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「むふふ、帰って早速このフルーツプリンとやらを食ってみるのだ。」
そう独り言をつぶやきながら、上機嫌に歩いていたシンの背後に、ミクモが忍び寄る……。
「何やら美味そうなものを抱えているではないか?のぉ、シン坊や?」
「ムッ!?その声はミクモ殿か?」
シンは声のした後ろを向くが、そこには俺とユリがいるだけでミクモの姿はない。
「む?ヒイラギに……孤児院で販売を手伝っていたエルフの方か。おかしいな、確かにミクモ殿の声が聞こえたと思ったのだが。」
そう彼が首をひねっている間にも、ミクモはこっそりシンの持っていた紙袋の中に手を突っ込み、そこからフルーツプリンを一つ取り出すことに成功していた。
そしてその後に、やっと再びシンに後ろから声をかけた。
「こっちじゃぞシン坊。」
「むむ、またしても背後に……って、ミクモ殿?その手に持っているのは、今日孤児院で売っていたフルーツプリンではないか?」
「御名答じゃな。実は心優し〜い者から、無償で一ついただいたのじゃ。」
ニヤニヤと笑いながら、ミクモは付属のスプーンで早速フルーツプリンを一口食べてしまう。
「んん〜♪美味いのじゃ〜、珠玉の甘味じゃのぉ〜。」
美味しそうに頬張るミクモを、目の前で見てシンは何か不吉な予感を感じとったらしく、おもむろに自分が手にしていた紙袋を開いた。
「むっ!?な、無いっ!!我は確かに十個買ったはず……だが九個しか入ってないぞ!?」
数が合わないことで、あることを確信したシンは、額に青筋を浮かべながらミクモに問いかけた。
「み、ミクモ殿。一つ聞きたいのだが、それを譲ってくれた心優しい者というのは……?」
「妾の眼の前にいるぞ?のぉ、シン坊?」
「や、やはりかっ!!何をしてくれたのだミクモ殿ッ!!それは我が夜中に、こっそり一人で貪り食うために買ったのだぞ!!」
「夜中にこんな甘いものを食べるのは、体に悪かろうと思っての。妾が親切心で一つ貰ってやったのじゃ。」
「ぬぐぐぐ……き、今日という今日は我慢ならんぞ。ミクモ殿ッ!!」
怒りでシンは拳を握り固めると、ミクモへと向けて振り下ろす。しかし、それが当たる直前でドロン……とミクモは煙となって消え、次の瞬間には俺の背後からひょっこりとプリンを食べながら顔を出した。
「むっふふ、怖いのじゃ〜。お主、助けてたも?」
「ひ、ヒイラギを盾にするとは卑怯だぞ!!」
このままでは埒が明かなそうなので、俺はマジックバッグに手を入れて、試食用に作っておいたフルーツプリンを一つ取り出してシンに手渡した。
「ほら、これあげるから怒りの矛を収めてくれ。」
「良いのか!?」
「あぁ。」
「やはりヒイラギは優しいのだ。どこかの意地汚い我のお師さまとはまるで違う。」
そう嫌味を込めてシンが言うと、流石に見過ごせなかった発言だったらしく、ミクモがシンに詰め寄った。
「ほぉ〜、青二才が……随分デカい口を叩いておるのぉ?妾に育てられた恩義を忘れてしまっているようじゃな?」
「その恩には随分と報いたと思うのだがな。」
「さぁて、どうかのぉ?」
バチバチと二人は火花を散らしているが……どうやら片方はそれっぽい演技をしていただけのようで、その最中にシンの紙袋からフルーツプリンをまた引っこ抜いていた。
「しゃ、社長……止めなくて良いのか?」
「いつものことだからな。すぐ仲直りするよ。」
少し呆れながら、二人のそんなやり取りを眺めていると、予想通りものの数分で仲直りしてしまったのだった。
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