クラーケンの試食
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目的だった言語理解のスキルを含んでいる宝玉と、クラーケンという食材になるかもしれない魔物を屋敷に持ち帰り、一先ずクラーケンがどんな味なのかを確かめるべく調理を進めていると、気配もなく師匠が俺の背後に立っていた。
「柊、それは何だ?」
「クラーケンって言う魔物の肉です。」
「ま、魔物の肉か。ちなみにそ、それをどうするつもりなんだ?」
「美味しかったら今日の夕食にしようかなって思ってました。」
「な、なるほどな。」
あまり乗り気ではない師匠の前で、俺はクラーケンの試食の用意を進めていく。今回はお刺身と、天ぷらを作って味見をしてみようと思う。
「お刺身は胴体の身の表面に格子状に切れ込みを入れて、薄くそぎ切りにして……。」
お刺身用に薄くクラーケンの身を削いでいると、コウイカを切っているときのように身がねっとりと包丁にまとわりついてきた。
「切ってる感じは大きなコウイカと全く変わらないな。」
さてさて、味の方はどうだろうか。俺は切ったクラーケンのお刺身にちょんと醬油をつけて、口に運んだ。すると、サクサクという独特な食感の歯ごたえと共に、濃厚でねっとりとしたイカ特有の甘みが口いっぱいに広がった。
「んっ!!大味かと思ってたけど全然そんなことないな。それに絞めたばかりなのにこんなに甘い……。これはポテンシャルを感じるなぁ。」
「そ、そんなに美味しいのか?」
「試しに食べてみます?」
「あ、あぁ。」
恐る恐るといった様子で師匠は、箸でクラーケンのお刺身を口に運んだ。すると何度か咀嚼した後にカッと目を見開いた。
「高級なすし屋で出てくるイカの味がする。」
「美味しいですよね?」
「あぁ、まさかこんなに美味いとは思わなかった。この前食わせてもらったサラマンダーもそうだったが、もしかすると魔物という存在はすべて美味しいのか?」
「さすがに美味しくない魔物もいると思いますよ。たまたまサラマンダーとクラーケンは美味しかったんです。」
「ふむ、そうか。」
そんな会話をしているうちにもクラーケンの天ぷらがからりと揚げあがった。
「おぉ、これはまたずいぶん分厚いイカ天……いやクラーケンだからクラ天か?」
「ほぼイカみたいなものなのでイカ天でいいと思いますよ。」
揚げたてのクラーケンの天ぷらに塩を振ってから半分に切って、片方を師匠に渡した。
「師匠もどうぞ。」
「ん、頂こう。」
そして二人同時に極厚のクラーケンの天ぷらにかぶりついた。
「んっ!?や、柔らかっ。食感はやっぱりサクサクしてるな。」
「噛むほどに旨味と甘みが溢れてくるぞぉ~。」
俺と師匠は思わずクラーケンの天ぷらに舌鼓を打っていた。これは今晩の夕食はクラーケンを使った料理で決まりだな。
そしてクラーケンの試食を終えたところで、俺はマジックバッグから師匠にと取ってきた宝玉を取り出した。
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