00:00 プロローグ
初投稿です。至らない点も多々あると思いますがよろしくお願い致します。短いです。
くるりくるりと軽やかにカーブを描く、柔らかそうな髪。蜂蜜を溶かし混んだかの様に甘くきらめく瞳。シミ一つない透き通った肌に、調和のとれた体躯。全てが完璧と言っても過言ではない容姿のその人は、いつだって夢の中で優しく微笑んでいる。
「あぁ、やっと、やっと君を迎えに行けるよ。」
いつもと同じ様に同じ顔で笑っている。けれど、見たことのない顔に見えるのはどうしてだろうか。いつもと同じ夢、紡がれる違う言葉。そして這うように蠢くそれを認識した瞬間、全身の肌が粟立った。
だめだ。これはだめだ。何がだめなのかは解らない。けれど、起きろ、起きなきゃだめだ。起きろ、起きろ、起きろ!起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ!!
パァン!
突然の破裂音。そして余韻。驚きに目を見開くと、見慣れた母の姿がある。母は私の様子を横目に、だめ押しとばかりにもう一度大きな拍手を打った。
何が起きているのかよくわからないが、母が私を夢から助け出してくれた事だけはなんとなく理解した。早鐘を打つ胸に手をあて深呼吸を何度か繰り返し、冷静さを取り戻す。落ち着いたところで母がぽつりと囁くような声で呟いた。
「あんた、今日が数えで14の誕生日ね。」
その言葉に壁掛け時計を見ると、針は0時1分を指している。確かに今日は数えで言うならば14歳になる誕生日である。
だからなんだというのだろう。疑問に思いながらも首肯すると、母は真剣な顔で言った。
「よく聞いて。これからするのはとても重要な話よ。」
母曰く、私が見ていた夢のあれは、人ではない者であり、妖なのか神なのか定かではないが、霊的魅力がある子供の夢の中から干渉し、成人する日に連れていく者だという。
それは夢の中から干渉するため、誕生日である今日一日を通して睡眠をとらないことが、連れ去られないために必要なことらしい。
――ああ、誕生日を這うもの、ってやつかな。
母から説明された私は、小さい頃から頭の中に浮かんでいた言葉をぽそりと呟いた。
とにもかくにも、今日一日は眠れないらしい。