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キラーハウス狂騒曲  作者: 日暮晶
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第69話 中峯隼太郎とこのあと滅茶苦茶

タイトル通りです(棒)


「うぇへへへへ~」

 ……どちらかと言えば、普段はぽけーっとした表情を浮かべているときわが、めちゃくちゃその顔を緩ませていた。それを見てもちろん可愛いとは思いつつも、どうしたもんかなこれ、と俺――中峯隼太郎は結構悩んでいた。

 時は一月一日。世間ではお正月と呼ばれるこの日、俺は彼女である灰森ときわと、デートがてら初詣に来ていた。時期が時期だけにめちゃくちゃ混んでたけど、特に問題もなくそれは済ませた。そこまではいい。

 問題はそのあとだ――賽銭箱の脇で配られている甘酒に手を出したのがまずかったのか、ときわがケラケラにやにやとずっと笑いっぱなしなのだ。要するに、今のときわは笑い上戸、酔っぱらっているのである。まだ互いに19歳なので一緒に酒を飲んだことはなかったが、甘酒でこうも酔っぱらう奴が現実にいるとは思わなかった……。

 ときわは俺の腕を支えに歩いているような状態で、まぁなんというか、お子様体型と言えども厚手の服越しに伝わる体温というものはあるわけで、少なからずドキドキはしている。体格差がそれなりにあるので、少々屈みながら歩かなければならないが、可愛い彼女のことを思えばそのぐらいは大したことない。

 しかし、この状態のときわをあちこち連れ回すのも気が引ける。だがどこかで休憩しようにも、今日は元日、個人店はおろかチェーン店もほとんどが休みだ。少なくとも、この近辺に歩いて行けるような場所なんてない。

「ふーむ……ときわ」

「うぇへ~? なぁに~?」

「どこか行きたい場所あるか? 俺から誘っといてなんだけど」

「…………」

 ぽや~っとした様子で数秒考えた後。

「じゅんたくんの家に行きたいな~」

 と、色々な意味で背筋の冷えるリクエストを、愛しの彼女はしてくださった。


 俺は実家暮らしなのだけれど、実は集会所のあるアパートからそう遠くはない。いつもみんなの送迎に使っている車は、普段はアパートの駐車場に置いてあるのだ。

 さて、その実家だけれど、まぁ何の変哲もない、住宅地の端にある二階建ての家だ。何の変哲もないと言うと、これは両親に失礼かもしれないが――こういう家がちゃんとあるだけで、年を経るごとに、ああ、うちの親はちゃんと働いてるんだな、と実感する。サークルで金などの管理をするようになってからは、なおさら。

 ……実は、そんな比較的まともに働いてるうちの両親には、彼女が出来たことを伝えていない。……いや、後ろめたいとかではなく。ときわの見た目が子供っぽいことは理由の一割程度でしかない。

 かといって、反抗的的なものや、不仲というわけでもない。単純に、少し気恥ずかしいのだ。

 そんなわけで、今までときわのことを話していなかった手前、ここで不意にバレるとちょっと面倒かもしれない――と思ったのが、背筋の冷えた理由の一つだったが、ときわを休ませるためなら仕方がない。そう思ってドアノブに手を伸ばしたけれど、鍵がかかっていた。どうやら親は出かけているようだ。ちょっとホッとした。

 鍵を取り出し、ドアを開ける。

「さ、上がって」

「お邪魔しま~す」

 二階の俺の部屋に案内する。椅子に座らせておいて、俺は一階のリビングであったかいお茶と、簡単な茶菓子をお盆に乗せて部屋へ戻る。

「お待たせー……って、ときわ、なんて格好してんだよ」

「あったかいからね~、うぇへへへ」

 上着を脱いで、下に着ていたブラウスも第三ボタンぐらいまで外していた。酔っ払って体温が上がってるのか知らないけど、どちらかと言えば冷えているこの部屋でよくもまぁそんな目のやり場に困る無防備な格好で……ん?

 …………。

「……ときわ」

「ん~?」

「お前、もしかして酔ったフリしてないか?」

「…………なんでそう思ったのかな?」

 緩み切った表情から一転、笑顔ではあるけれども、そこには悪巧みのバレた子供のような、悪戯心が見え隠れしていた。悪びれる様子は、まったくない。

「ときわ、前にも車の帰り道で寝たふりしてただろ。わざとらしいぐらい隙を見せるのが、なんか既視感あってな」

「さすがに二度目は通じないか~。バレちゃ~しょうがないね~」

「しょうがないって何が……んむっ!?」

 唐突に距離を詰めてきたときわが、流れるような所作で俺の唇を奪っていた。構える暇もなかったので、その柔らかさをダイレクトに味わってしまう。

 しかしときわは俺が強張る隙さえ与えない。手を回してぎゅっとしがみついてきたかと思ったら、小さな口から、彼女の舌がぬるりと入り込んできた。好き放題俺の口の中を掻き回して、獲物を見つけたとばかりに彼女の舌が俺の舌を捕まえた。口の中を凌辱されて体に力が入らない。そんな俺は、気づけばときわに押し倒されていた。マジか。

「んん〰〰〰〰っ……ぷはっ」

 最後に一際強く、それこそ生命力を根こそぎ持っていくんじゃないかと思うほどに俺の口を吸い上げて、ときわの唇は離れた――ああ、唾液の糸って本当にできるんだな、と俺たちの間に伝うモノを見て、頭の蕩けた感想を浮かべた。

「ごちそうさま……って言いたいとこだけど、まだ始まったばかりだもんね~?」

 俺の腹に馬乗りになり、ほんのりと上気した頬で、彼女は指先をちろりと舐め――そのまま、外れかけていたブラウスのボタンを次々と外していく。前は全開になり、可愛らしいデザインの、控えめな胸を覆うブラジャーが露わになった。

 いつもなら強く制止しているところだけど、さっきのときわの先制攻撃で、頭が熱を持ったように働かない。整わない息のまま、抽象的な問いを投げかけるのが精いっぱいだった。

「な……何を……?」

「あはは~、やだな~もうじゅんたくん。姫始めに決まってるじゃない」

「ず、随分大胆なお誘いだな」

「いや~、わたしとしてはもうちょっと早くてもよかったんだけど、いろいろ忙しかったのと~、素面だとじゅんたくんが手を出しづらいのかな~と思ってさ。酔ったフリして隙だらけにしてみたんだけど、中々うまくいかないね~」

「まさかとは思ったけど、お前初めからそのつもりだったのか……?」

 わざわざ俺の家をリクエストしたのも、このためか。可能性自体は頭の片隅に置いておいたけど、ここまでがっつり襲いに来るとは……。

 いや、でも、一つだけ言わせてほしい。

「普通、立場逆じゃないか……?」

「あはは~、ごめんごめん。でも我慢できなくって。いやだった?」

「嫌では――ないけ、どっ!」

「わっ」

 ときわの体を抱きしめてから、その場で上下を入れ替える。一転、俺がときわにマウントを取る形となった。

「――いいんだな? もう引き返せないぞ」

「引き返さないよ。わたしから煽ったんだし――それに」

 ときわの目線が、少し下に向く。

「興奮、してくれてるんだ?」

「……恋人からあんなキスかまされて、目の前ではだけられて。無理だろ、抑えるなんて」

 改めて、ベッドに倒れるときわを見る。同い年とは思えない体躯。雪のように白い肌。ふわふわとした髪。幼い外見に似合わない、色香で遊ぶ小悪魔のような表情。一度手を出せば、一度味わえば、二度と手放せないであろう魔性の果実が、俺の掌に転がっている。

 その腹をつぅっと指先でなぞる。くすぐったいのか、ときわが「んっ……」と身をよじった。その反応は、背徳感と共に俺の欲を強く駆り立てる。

 可愛いだとか綺麗だとかエロいとか、そういった感想も浮かんだけれど、わざわざ口にするよりも行動で示そうと、代わりにもう一度キスをした。今度は俺から舌を入れた。不思議と少し、甘く感じる。さっきよりは短い時間で口を離し、ふと気づいてしまったことを訊く。

「……野暮なこと訊いていいか? ゴム、ないんだけど」

「大丈夫……財布に、入ってる」

「……そりゃまた準備のよろしいことで」

 となれば遠慮することはない。

 当然、こんなことをするのは初めてだけど、そんなのお互い様。

 触れたことのない場所へ、手を伸ばす。舌を這わせる。指を絡める。お互いに。

 誰よりも近い場所で次第に荒くなっていく呼吸の中、俺たちは、体に走る未知の快楽に身を任せた。


「――いや~、今度こそごちそうさまって感じかな~?」

 文字通りの事後。

 服を着直した俺たちは、なおも密着していた――ときわの強い要望で、ベッドに座る俺の、脚の間に彼女はすっぽりと収まって、すっかり冷たくなったお茶をすすっている。

それなりの時間、放置しちゃってたからなぁ……。

「……お茶、温め直してくるか?」

「ん~ん、平気」

 分かってないなぁ、とくすくす笑うときわ。

「お茶は冷たいけど、じゅんたくんとこうしてられるだけで温かいからいいの」

「……ときわ、そういうこと言うタイプだっけ?」

「いいじゃん、こういう時ぐらい。なにせ初めてだもんね~?」

「そりゃお互い様だろ」

 すりすりと、つがいの犬のように互いの頬を寄せあって、相手の体温を確かめる。確かに、温かい。太陽でも抱いているようだ。

 ときわの体に、手を回す。その存在を確かめるように、抱きしめた。

「わっ、どうしたの~? 第二ラウンドでもするの?」

「……明け透けなことを言うなぁ、お前は……いや、流石に今はやらないよ。ちょっと、抱きしめたくなっただけ」

「そっか~」

 俺の手に、ときわの手が重なる。

この小さく可愛い彼女を、絶対幸せにすると決めた。

「――で、この後どうする?」

「わたしはしばらくこのままでもいいんだけどな~」

「いや、そういうわけにも……」

 と、その時。一階の方から扉を開ける音が聞こえた――げ、マジか。

「……親が帰ってきたようだ」

「ありゃ~。じゃあこのままってわけにもいかないか~。ま、ヤってる最中じゃなくてよかったね~?」

「それはまぁそうなんだけど……状況説明が思いやられるな……」

「恋人ですって言うだけじゃん」

「そうなんだけどさぁ」

 なんで俺より緊張してないんだろ、この恋人は。

 ああもう、こうなりゃヤケだ。流石にときわから身を離す。

「ふぁいと、じゅんたくん♪」

 のんきな彼女のエールを背に受け、上ってくる足音を迎撃するように、俺は自室の扉を開けたのだった。



まぁ大学生だからこのぐらいね? って思いながら書いてました。本番中は省いてるので多分大丈夫だと思いますが……はてさて。

今作品登場人物の中で、実は一番すけべなのはときわさんなのでは疑惑浮上中です。

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