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キラーハウス狂騒曲  作者: 日暮晶
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第30話 黒原虹華のプロット相談 中峯隼太郎編


「何をもってメインヒロインとするか、なんだよ」

 ――中峯さんはちゃぶ台に肘をつき、両手を組んで顔の下半分を隠すというゲ○ドウスタイルでそう言った。

「往々にして、主人公の周りには数多くの魅力的なヒロインたちが存在している。にもかかわらず、メインヒロインとは揺るぎなくそこに存在している。それは、ヒロインたちの女王と言っても差支えないだろう」

 ……途中で話を遮ると面倒くさそうなので、私はぼけーっと聞き流す……が、普段の中峯さんとは人が変わったように、若干鬱陶しい論調でそれは続く。

「ならば、メインヒロインとはいったい何なのか? 一体何が他とは違う? 境遇がメインをメインたらしめるのか? あるいは性格? 行動? 顔という心無い意見もあるかもしれないが、その全てが是であり否。メインヒロインがメインヒロインである理由。それはただ一つ」

 一拍置いて、決め台詞のように言い放つ。

「――メインヒロインが、メインヒロインだからだ!」

「はぁ……で、結局何が言いたかったんですか?」

「俺の意見が全部聞き流された!?」

 ――九月半ばの土曜日、キラーハウスの集会所。

 本日は中峯さん推し、『ブラッディ・フール』のメインヒロインである茜をメインに据えた話のプロット会議だ。ある程度話を組んだので持ってきたのだが、どうにもしっくりこない。

なのでプロットを渡して中峯さんに相談してみたら、突然メインヒロイン論が始まったのである。

「いや、話読み終わったから何か『ここが違うと思う』とかの意見が出るかと思ったんですけど、ちょっと想定外の方向からの意見だったので何が言いたかったのかなと」

「おおう、黒原さん結構ザクザクくるね……!」

「あははー、わたし虹ちゃんに一票だなー」

 さらさらとイラストを描いていたときわさんが、手を止めて私に同意してくれる。

「と、ときわまで……」

「いやだってさー、メインヒロインメインヒロイン連呼されても何が何やらって感じだよ? じゅんたくん」

「っていうかメインヒロインっていちいち口にするのも長ったらしいですね。ここは勢いよく、メインヒロインのことをメロンと称することにしましょう」

「メロン!?」

「それいいねー。虹ちゃん冴えてるー! で、じゅんたくん。メロンがなんだって?」

「メロンがメロンである理由は、メロンがメロンだから、でしたっけ? 全然理由になってない気がしますけど」

「メロンが女王っぽいのはその通りだけどねー。でもおいしいところだけ持っていくのはいかがなものかとわたしは思うよー」

「ほんとですよねー。メロンの美味しいところだけもっていくとか許されないですよ、そんなことする奴らは極刑です」

 そうやって私たちがメロメロメロメロメロメロメロメロ言っていると、中峯さんが慌てて手を振りだす。

「ちょちょ、ちょっと待って! メロンが俺の中でゲシュタルト崩壊起こすからちょっと待って! あと最後のメロンは果物のメロンになってないか!?」

「気のせいですよ気のせい。しかしメロンというのもなかなかややこしいですね」

「言いだしっぺが何か言い出したぞ!?」

「じゃあ間を取ってメロインって呼べばいいんじゃないかなー?」

「メロイン!? ……いやでも、メロンよりはましか……?」

「で、メロインがメロインがである理由、それはメロインがロメインだからと言っていましたが」

「もう間違えてる! ロメインはレタスだよ!?」

「おっとこれは失礼。メロインがロメインである理由、それはロメインがレタスだからだと言っていましたが」

「違う! 何がっていうかもう何もかもが違う!」

「虹ちゃん虹ちゃん、メインヒロインをレタスと称する以上は、サブヒロインのことはトマト、ブロッコリー、コーンと呼ぶべきじゃないかな」

「さすがときわさんです、その置き換えにはセンスを感じます」

「呼ぶべきじゃないと思うかな俺は!? サラダ作ってんじゃないんだぞ!?」

 ていうか、と中滝さんが頭を抱える。

「脱線! し過ぎだろう!」

 確かにちょっとふざけすぎたかなー、とは思わないでもないけれど……そもそもを考えると、ねえ?

「まぁ脱線したのは中峯さんがメロメロ連発してたからですが」

「メインヒロイン! メロメロ言ってたのはそっち二人だからね!?」

「どっちでもいいけど、それで、じゅんたくん的にはさっきは何が言いたかったのー?」

「このプロットには、メインヒロインとしての可愛さが足りない」

「初めからそう言ってくれれば一分で済んだことなのに、なんでややこしい言い回しをしたんですか」

「サラダ談義に発展させた黒原さんには言われたくないけどね」

 ハハハと黒い笑みを浮かべあったところで、全員が一度お茶を飲み、空気を落ち着ける。……ふぅ。

 ……さて。

「で、メインヒロインとしての可愛さってなんですか?」

「うーん……改めて訊ねられると結構困るな。しいていうなら……正妻感?」

「ハーレムの中で正妻感出すとか、一歩間違えたら刃傷沙汰ですけどね」

「いやほら、どっちかって言うとメインの茜本人じゃなくて、周りのサブヒロインが認める的な意味でさ」

「あー……まぁそれなら少し分かります」

 だとしたら……そうだな。

「……この主人公って、力があるからか割と一人でなんでも解決しに行っちゃうじゃないですか。最新刊でその辺いろんなキャラからちょっと突っ込まれてましたけど」

「だね」

「だから、普段は割とサブヒロインたちを助けてばかりの主人公が、逆に茜には支えられるって言う流れならどうです?」

「おお、それよさそうだね。その方向で考えてみてくれる?」

「ラジャー」

 話がなんとなくまとまったところで、沈黙を守っていたときわさんが口を開いた。

「じゅんたくん、サラダ食べたい」

「どうした急に」

「いやー、トマトやらレタスやら連呼してたらなんだか食べたくなっちゃってさー」

「しょうがないな……まぁメロンじゃないだけマシか、了解。でもロメインレタスなんかこの辺に売ってんのかな……?」

 呟きながら出ていく中峯さん。

 十数分後、帰ってきた中峯さんが持つ袋には、色とりどりの野菜が。

 ――それから、さらに十数分後。

「もしゃもしゃ」

「しゃくしゃく」

「ぱりぱり」

「おいーっす……って、お前ら何食ってんだ? ……なんでサラダ?」

 バイトが終わったのか、やってきたヘッドが一心不乱に野菜を頬張る姿を見て不審そうに尋ねてきたので、私たちは一斉に答えた。

「「「『キラーハウス』謹製、ヒロインサラダ」」」

「意味が分からん!」

 本日のプロット会議の結論 → 野菜うめぇ。



個人的には結構好きな話です。

ボケとツッコミがちゃんと役割分担していたのがよかったのかもしれない。

あとサラダ食べたくなってきました。

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