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キラーハウス狂騒曲  作者: 日暮晶
25/74

第24話 黒原虹華のプロット相談 ヘッド編

プロット相談編突入。

ちょこちょこサービスなシーンが入ったり入らなかったりしてます。


 ――話の流れというか自業自得というか、自分の役割もすっかり忘れて「全員の推しキャラを詰め込もう」という案を提唱した結果、私の仕事量がとんでもないことになった。

 ……やっべえ、マジでどうしよう……ロクに話を作ったこともない私がなんでこんなことに……。

 と。

 嘆いていたのも昨日までの話――仕事は仕事、やると決めたらやるしかない。

 啖呵を切る――と言うほどズバッと言っちゃったわけではないけれど、少なくとも、あの時の言葉はまごうことなき私の本音で……だったら、それを裏切るような真似は出来ないだろう。

 吐いた言葉に二言があってはならないのは、武士でなくても同じこと――ひねくれ者の私にも、その程度の誠実さは備わっている。最後の誠実さと言ってもいいかもしれない。

「――そんなんだから男らしさの師匠とか言われちまうんじゃねえのか? 黒原は」

「うっさいですよ。今これ読んでるんですからちょっと黙っててください、ヘッド」

 例の会議から一日が経ち。

 私は、今日もキラーハウスの集会所へやってきていた。だからここにいるのは、私とヘッドの二人っきり――と説明したら、霧もついてきた。ニヤニヤさせてくれるなぁ、霧ってば。

高校生の身である私としては夏休みも残り少なくなってきたけど、ついでに宿題も地味にヤバいけど、今はそれどころではないのである。

 今日ここへ来た目的は、二つ――一つはここに置かれている『ブラッディ・フール』の既刊十一巻を読み込むため。もう一つは、少しでもヘッドと物語の骨組……プロットを作るためだ。

「しかし昨日の今日でいきなりプロット立てにかかるとは」

「すっごい早いよね。虹華、そんなに気合入ってるの? はいお茶」

 ヘッドの言葉に続けて、霧がちゃぶ台にコップを置く。ありがと、と言ってから、私は質問に返した。

「まあ、取り掛かるなら早めがいいかなって思ったのと……あと、何回も言うけど、私初心者だからね? 何も知らない状態で一人で話をつくるなんて無理だから、まずはそこらへん、経験あるヘッドと一緒に作っておこうと思って」

 私はストーリー監修として、これからメンバーそれぞれと、極力個別に話をしていこうと思っている。どんな話にしてみたいかなどの各々の希望を訊ねるためだ。

その前にノウハウや感覚をいくらか学んでおけば、これから先の話もスムーズに進みそうだから、ヘッドを最初の相談相手に選んだのだ。向こうにもバイトやらなにやらあるので、話を出来るうちにしたかったというのもある。

「なるほどなー。俺はまず物語組んで、そっからネームも作ることにしてるけど」

「ネーム?」

「漫画の下書きみたいなやつ。構図とか、話の流れとか、そこである程度作ってみて、ここはこうした方がいいとか、ここは直そうとかの参考にするアレよ」

 首を傾げた霧に私が注釈を入れる。バク○ンを読んでないのかこいつは。というか、サークルに所属しているだけで、霧はガチでなんの作業にも関わっていないらしい……まあ、前に話を聞いた感じだと、主に洗濯だの掃除だの、そういう面でサークルを支えていたらしいから、仕方がないと言えば仕方がないのだろうけど。

 ……私だって、用語を知ってるだけで実際にどんな感じなのかとか、全然知らないしね。

「まあ要するに、まずは話を組み上げないと先には進まないってことですね」

「そうなっちまうな」

「じゃあ、お話ですけどどんな方向性にします? サラサをヒロインにするとなると……」

「乳を強調した話にしたいな」

「ド直球か」

 思わずこちらも直球を投げ返してしまう。

「ん? なんかまずいか? プロットの話だろ?」

「……ええ、そうですね、プロットの話ですね」

 すげえなこの人、女子が相手でも平然と乳とか言えるんだな。別にいいんだけどさ、そのぐらいで照れるような性格はこっちもしてないし。『ブラッディ・フール』におけるサラサの役割が性格がよく、可愛い巨乳ヒロインであることを考えれば、乳を強調した話にするのは間違っていない。分かりやすいヒキにもなる……。

 しかし乳……乳か……。

 ……………………そういえば。

 ちょうどいいサンプルが、そこにいたな……。

「……な、なに? 虹華」

 私の視線を感じ取ったのか、霧が少し不安げに訊ねてくる。

 今日の霧はスポーティーなタンクトップ。健康的な二の腕の肌色が見る者の目を掴んで離さない。

 そして二の腕を辿っていけば、自然と盛り上がった胸元の双丘に目が行くわけだ――同年代の中でも、トップクラスに育ったそれに。薄着故にその破壊力はシャレになっていない。しかも気づいているのかいないのか、肩からブラの紐も覗いてるし。…………。

「ふむ……ねえ、霧」

「は、はい?」

「揉ませて」

「はぁっ!?」

 ぎょっとした霧が、胸を腕で隠しながら後退する。私はすっくと立ち上がり、そんな霧を追い詰める。

「ちょ、なんなのその手の動き! 怖いんだけど! 手ェわきわきさせてこっち来ないで!」

「そうもいかないの。その奇跡の果実に触れることが出来れば、あるいは素晴らしい話が浮かぶかもしれないから。いいじゃない、そう減るもんじゃなし」

「減るよ! すり減るよ! 主にあたしの精神が!」

「初めてってわけでもないんだから、そんなカマトトぶってないで……」

 ――閃いた!

「……いえ、そうね、確かにその通りだったわ」

「あ、わ、分かってくれた?」

 霧がほっとしたのを見計らって、瞬間、私は口を開く。

「じゃあヘッド、ちょっと霧の胸揉んでみてください」

「ぶはっ!?」

 霧が盛大に噎せた。やだ、いい反応。ちょっとぞくぞくしてきた。これはいい話のタネになりそうだなぁ。

「な、な、な、何を言い出すのよあんたは虹華ぁぁぁああああっ!?」

 私の胸倉掴んでぐわんぐわん揺らしてくる霧に、悟りきった口調で私は告げる。

「いやね、確かにパイタッチするのが女である私というのはさすがのあんたにも抵抗があるってのは分かってる」

「いやもうその時点で違う! タッチがどうのっていう問題じゃない!」

「だって私が触ろうとして慌てたってことは、触ってほしい人がいるのかなって」

「そそそそういうことじゃなくて!」

 明らかに狼狽する霧に、私はにやりと笑って、いやらしいイントネーションで尋ねた。

「ほう、じゃあ何がどういう問題なわけなのかなぁ?」

「そっ、それは……!」

「おいおい、その辺にしとけよ……まったく、黒原ももうちょっと冗談を選んどけよ」

 呆れたようにヘッドがこちらへ近づいてくる――どうやらさっきの発言も、冗談と受け取ったらしい。半分本気なんだけどなぁ……と、と、と、あれ?

 さっき霧に揺さぶられたダメージが、今更回ってきたらしい。ぐらん、と強めの立ち眩みのようにバランスを崩し――突っ込んだ先は、近づいてきたヘッド。

「え、と、と――おわっ!?」

「えっ――きゃっ!?」

 ヘッドがとっさに私を支えようとしたが、少し間に合わずに一緒にバランスを崩す。そしてヘッドが倒れ込んだ先には霧がいて――さながらドミノ倒しのように、バタバタと私たちは倒れ込んでしまった。私はヘッドを下敷きにしてしまったようで、特に痛みは感じない。

「あだだ……すいませんヘッド。霧もごめんね、大丈夫――」

 頭を振って、立ち上がり、その光景を見て、絶句。

「……いっつつ……あぁ、まあ、俺は大丈夫だ。つか、俺よりも下にいる霧の方が心ぱ――」

 むにゅっ。

 仮に擬音をつけるとするなら、それ以外にはないだろう状況だった。

 どうやら倒れ込んだ拍子に、ヘッドの手が霧の胸を鷲掴みにしてしまったらしい――例えるなら、結城○トのように……と言おうと思ったけど、彼ならなぜかタンクトップどころかブラも剥いで生を鷲掴みだったろうなぁ。

 とはいえ、衝撃の事件には違いなく、誰もが思わず沈黙する。しかしそれも長くは続かない――状況を理解した霧が、ぶわっ、と顔を赤くして。

「……っ、なぁぁぁああああああああああああああああっ!」

 アパートを揺るがしかねないド級の悲鳴で、沈黙を引き裂いた――それからはまさに一瞬だった。ヘッドの下を抜け出し、脱兎のごとく私たちの視界から走り去る。真っ赤な顔が尾を引く様は、まるで赤い彗星のようだった。

 しばしの沈黙が過ぎて、私はぽつりと口にする。

「あら可愛い反応。あのリアクションはそのまま使わせてもらおうかな」

「親友をネタにするとはお前もなかなか鬼畜だな」

「あ、それとも恥ずかしいのをぐっとこらえて、笑って許すって方がサラサっぽいですかね?」

「どっちかというとそっちのがサラサ感あるけど、お前親友のフォローに行かなくていいのか?」

「今私が行ったら間違いなく追撃してしまうので」

「一体何をするつもりなんだよ……」

 ヘッドにしては珍しく、呆れたように口にして、頬を掻こうと手を持ち上げる。霧の乳を揉んでた右手を。

「…………」

 不意にその手を止めて、下げる。目は泳ぎ、顔は天井を見て、あーだのうーだの言って落ち着きがない。……おやおや。

「ヘッド、感想は?」

「……お前は本当に腹黒だな」

 心底嫌そうに私に返して、彼にしては珍しく小さな声で言う。

「……すっげえ柔らかかった」

「ふむ、揉んだのは初めてで?」

「なんでそこまで話さなきゃならねえんだよ」

「まあ初めてなんだろうなって感じはしますけど」

「喧嘩売ってんのかお前は。お前だって別に経験ねえだろうが」

「ええまあ、腹は黒いらしいですが綺麗な体ですよ?」

「ええー……、お前そういう返し普通にするのな」

「アラサーならともかく、私らの年だと経験ある奴のが少ないと思いますよ」

同年代でシてるだのシてないだの気にするのは、いわゆる『リア充』グループだけじゃないだろうか。処女ビッチとかは、そういうところで発生する。元から湿り切ってる私たちみたいなのは論外だ。例外もいなくはないだろうけど。

「というわけで貴重な男子側の反応はいただきましたけど、こればっかりは使えそうにないですね。『ブラッディ・フール』の主人公ならその手のハプニングは割とよくあるので……そうですね、五巻あたりの後の話と仮定して、貧乳メインヒロイン・茜のを触った時と比較してしまうみたいな場面を入れるのもありじゃないですか?」

「お前は容赦ねえな」

 頼もしいけどよ、とヘッドは困ったように頭を掻いた。

 

 こうして、最初のプロット会議兼、私のプロット製作勉強会はまずまず滞りなく進んだ。

 だがネタにした代償に、霧が三日ほど口をきいてくれなくなったのだけれど……それはまた、別の話。


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