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底辺冒険者vs闇ギルド⑨


「いや、マジも何も、お前ギルドが発行している冒険者の募集要項読んだ? あれにちゃんと『15歳以上でないと能力は開花しません』って書いてあるだろうが」


 そうなのだ。なぜかわからないが、神魔水晶は大人……つまりこの国でいう15歳になった人間にのみ職業の選定を行う。15歳未満の人間が水晶に触れても反応しない。


「うそ、だろ……」


 シャルローゼは糸の切れた人形のようにその場で膝をついてガックリ項垂れる。


「儀式を受ける時に年齢を聞かれなかったのか?」


「あ、ああ、聞かれたけど……。私、年を聞かれるのが子供扱いされてる感じがして嫌だったから、ちゃんと『(気持ちは)大人です!』って答えたぞ?」


「『答えたぞ?』じゃねえ! 何まどろっこしい言い方してんだ!」


「だ、だって……早く冒険者になりたかったんだもん!」


「はぁ……信じらんねぇ……」


 勘違いで闇ギルドのボスにまで登りつめたってことかよ……。

 ある意味、選ばれし者だな。


「けど、これでもうお前の戦う意味はなくなったんじゃないのか?」


「う、うん……。でも……」


 シャルローゼは歯切れ悪く不安げな顔をチラつかせる。

 その気持ちはよくわかった。

 3年後――シャルローゼが15歳になった時、彼女は果たして冒険者になれるのか。それは誰にもわからない。それこそ神魔水晶次第である。

 きっと彼女もそのことを考えているのだろう。

 だから俺は未来の冒険者に対して、優しい言葉を投げかけてやることにした。


「シャルローゼ。冒険者って仕事はな――ぜんっぜん割に合わないクソな職業だぞ」


「へ?」


「運良く冒険者になれても職業の優劣が激しいから、俺みたいな底辺職冒険者は常日頃からその日暮らしのギリギリ生活を送っている。冒険者を目指すのもいいが、その時はちゃんと他の逃げ道も用意しておけよ。じゃないと俺みたいな八方塞がりの人生をおくるはめになるからな」


「ぼ、冒険者も大変なんだなぁ……」


 シャルローゼの目から急速に希望の光が失われていく。

 こうやって夢と希望を打ち砕いておいて現実と目をむき合わせた方が彼女のためだろう。

 いやー、人助けしたぜ!


「さてと。誤解も解けたわけだし、あとはお前の体から神魔水晶を取り出すだけだな」


「そんなことできるのか? ドクターは絶対に取り外せないって言ってたぞ?」


「それはお前の体に結合しているのが神魔水晶だった場合だろ」


「どういう意味だ?」


「俺の職業は『フェイカー』。物に変化したり、物を変化させたり……まあ色々と小細工ができる職業なんだ。ほら、お前もさっき味わっただろ? 俺のスキル」


「忘れるわけないだろ! うぷっ……思い出したら吐き気が……」


 どうやらシャルローゼにも泥団子のトラウマを植え付けてしまったらしい。まあ、悪事を働いた罰として受け入れてもらうしかないな。


「で、だ。俺のスキルを使って、お前の体内に埋め込まれた神魔水晶の材質を変化させる。そうすれば、俺のスキルの効果が働いている間は神魔水晶との結合を断ち切れるってわけだ」


「な、なるほど……」


「じゃあ腹を出せ。すぐ終わらせる」


「う、うん……」


 シャルローゼは素直に剥き出しの腹部をこちらに向けた。

 神魔水晶は周囲の皮膚を侵食する寄生生物のように深く根を張っているようだった。

 俺は神魔水晶に触れて意識を集中させる。


「それじゃあ、やるぞ」


「待って……」


「ん? なんだ?」


「最後に一つだけ……いいか?」


 シャルローゼはもじもじと体をよじりながら俺の表情をうかがうように視線を向ける。


「なんだ?」


「あのさ、もし私が冒険者になれたら……さ。ユーヤみたいな底辺冒険者を助けられるくらい強い冒険者になるよ!」


「そこは俺のパーティーに入れてくれっていうところだろ」


「いやだよ。泥団子を詰め込むようなやつと一緒に冒険なんて」


 そう言って、彼女は舌をペロッと出した。

 俺はその年相応の少女の笑顔を見届け、水晶に触れた手に意識を集中させる。

 その刹那、少しの違和感を覚える。なぜだかわからないが心臓の一部に鈍い重みを感じた。それは今手に触れている水晶から伝わってくるようで……。

 いや、今はそんなことはどうでもいい。

 俺はひとつ深呼吸を置いてから、スキルを詠唱した。


「<<偽装(イミテーション)>>――」


 水晶の透明な輝きが褪せていく。手のひらサイズの神魔水晶の欠片はあっという間に路傍の石と同じ灰色へと変色した。

 すると、さっきまで神魔水晶だったものは、木にすがる虫が絶命したときのように、何の抵抗もなくシャルローゼの体から自然と切り離された。


「あ、とれた」


 シャルローゼが呆気にとられた様子で呟く。

 なんとも締まりのない終幕である。まあ底辺冒険者らしい冴えない終わり方で内心ホッとしていた。

 こういう時、物語の主人公だと、敵と死闘を繰り広げたのち、アジトが崩壊して九死に一生を得る展開が待ち受けているのだろうが。そんなことは一切おこらず――


 ゴゴゴゴゴゴゴ…………


「シャルローゼ。なんか広間全体がゴゴゴゴって鳴り始めたんだけど。……お前なんかやった?」


「はぁ? 私はもうこの通り、スキルの使えないただの一般人だぞ? もうゴーレムを操る力なんてない」


「そうか。一応聞いておくけど、お前が能力を使えなくなったらここのゴーレムとか……俺たちが今中にいる巨大ゴーレムとかはどうなる?」


「そりゃあ、もともとは私の魔力?で土を固めてゴーレムたちを作ったんだから、私の魔力が消えたらみんな一緒に崩れるに決まってるじゃん」


「みんな一緒に、崩れる……」


「そう。みんな一緒に」


 ゴゴゴゴゴゴゴ…………


「「やばいじゃん!!」」


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