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底辺冒険者vs闇ギルド⑥


 冒険者の力を覚醒させるためだけの魔道具だと思っていた神魔水晶。

 しかし、その欠片を体に直接埋め込むことで、適正のない者でも強制的に能力を覚醒させることができるらしい。

 闇ギルドの人間はそうして力を得た。

 その魔力源である神魔水晶を体から切り離すことができれば、全てのスキルが解除され、このゴーレム型のアジトからも脱出できるってわけか。


「エル。こいつの神魔水晶を取り外すことはできるか?」


「やってみる!」


 手の空いているエルがシャルローゼの腹部にある神魔水晶を抜き取ろうとするが、水晶はしっかりと皮膚に癒着しているようでビクともしない。


「ダメだ〜全然とれない〜ッ!」


『そんなことしても無駄だよ』


 俺たちの様子を見ていた黒マント集団の一人が声を発する。マントのせいで顔は窺い知れないが、他の黒マントが怯えたり慌てている中で、そいつだけは冷静さを保っていた。記憶をくすぐられるような、男とも女ともつかない不思議な声音で、雰囲気もどこか他の奴らとは異なる気がする。


『その水晶は"ドクター"の手術によって埋め込まれた物なんだ』


「ドクター、だと?」


『そうそう。ドクターはこうやって普通の人間からキミたちのような能力者へと変えてあげてるんだよ』


 黒マントは余裕のある声で語る。

 なるほど。そのドクターとやらが神魔水晶を体に埋め込んで『偽の冒険者』を生み出したのか。


『その水晶の欠片はボスが元々持っていた微弱な魔力と体内で結合している。簡単には取り出せないよ』


「どうすれば取り出せる?」


 俺は手元に抱きかかえたシャルローゼに気を配りなから問う。


『その少女――じゃなかった、ボスか水晶か、どちらか一方の魔力を完全に消滅させればその結合を断ち切ることができるよ。私のオススメはボスの方だね』


 黒マントの冷たい声音に真っ先に反応したのはランだった。


「なッ! 人間の魔力を完全に消滅させるって……殺すしかないということじゃないですかッ!」


『そのとおり。神魔水晶は無限の魔力の源。自然に魔力が空になることはない。それこそ、水晶自体が変質しないとね。……つまり、魔力の結合を断ち切るには所有者の命を奪うしかないってコト』


「そんな……。それではあなたたちはいずれ……」


 ――いずれ冒険者たちに殺される。

 ランはそう言いたかったのだろう。しかし、唇を噛み締めたまま言葉を詰まらせる。

 だが、黒マントにはその沈黙だけで十分に意味は伝わっていた。


『ここにいる者たちは全員、それを承知で手術を受けて神魔水晶をその身に宿したのさ。死ぬまで戦い続ける覚悟を持っているんだよ。真に平等な世界を作り上げるために』


 黒マントは無感情で続ける。


『そのために格差の象徴たる冒険者を皆殺しにする。彼女らしいと言えば彼女らしい考え方だよね』


 マントの影からフフッと笑い声が聞こえたような気がした。

 彼女? シャルローゼのことか? それともシャルローゼの言っていたボスのボスってやつか?

 俺が思考を巡らせている間に、黒マントが再び口を開く。


『さあどうする? このままだとジリ貧だよ? ボスを殺すか、キミたちが殺されるか……どっちがいい?』


「ユーヤ……」


 エルが不安そうな目で俺の表情をうかがう。

 わかってるって。今考えてる。

 俺はいつもの悪知恵をフル動員させて解決策を探る。

 シャルローゼを殺すのは簡単だ。スキルが使えなければただの金髪幼女だしな。

 だけど、俺に人を殺す勇気なんてない。それはエルたちも同じだろう。

 何か他に方法は。


 その時、ふと黒マントの言葉が脳裏によぎった。


 ――神魔水晶は無限の魔力の源。自然に魔力が空になることはない。それこそ、()()()()()()()()()()()()


「そうか、その手があったか……!」


 俺は確信めいた呟きを漏らす。


「ユーヤさん、なにか良い案を思いついたんですね!」


 アリシアが顔を輝かせる。俺はそれに対し、自信満々に頷き答えてやる。


「ああ。とっておきの方法が1つあった」


 偽物の冒険者を殺さずに倒す方法がある。

 それも、偽物を作り出す『フェイカー』の俺にしかできない、それでいて至極簡単な方法が1つだけ存在したのだ。

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