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底辺冒険者は闇ギルドに売られる③



『『『は――?』』』



 地響きとともに砂煙が広場まで押し寄せる。

 事態がうまく呑み込めない民衆は、跡形もなくなった民家をただ見つめていた。

 いったい何が――


『また来るぞ!?』


 民衆の中から悲鳴に、ハッと我に返る。

 西門の方をすぐさま見上げると、ゴーレムの頭上近くからまたも巨大な岩石が、今度は俺たちのいる中央広場目がけて飛んできた。

 まずい! あんなのがここに落ちてきたら全滅するぞ!?


「おぉ! これはチームの、そして民衆の危機!! 私の出番のようですね!! とうッ!!」


 そう言って、ランが自分の荷物の中からおもむろに武器を取り出したかと思うと、大岩目がけて突っ込んでいった。


「チームワークッッッ!!」


 そして、よくわからない掛け声とともに棍を振るうと、空中で大岩を見事に砕いた。

 パラパラと落ちる岩石の破片とともにランは着地を決めると、


「お怪我はありませんか、皆さん」


 意気揚々と辺りを見回した。

 仲間を危機から救った自分を称えるように、清々しいほどのやりきった顔をしている。


「ああ。俺の頭にお前の武器がぶっ刺さっているのを除けば、けが人はいないな」


 俺は頭の上でしなっている棍を抜きながら、ランを睨みつけた。


「ぬわぁ!? す、すみませんユーヤ! 手が滑ってしまいました!!」


 胸を張って自慢げにしていたランが慌ててすり寄ってくる。

 岩を砕いたまではいいが、振り切った棍がすっぽ抜けるのはどうにかしてほしいものだ。

 そして、予定調和のように俺に直撃するのもやめていただきたい。

 今度からランには”チームワーク禁止令”を設けるしかなさそうだ。


『おいなんなんだよ、いったい!? 急に空から岩が降ってきたぞ!?』

『違うわ! あの西門から飛んできてるのよ! 私見たわ!!』

『そうだそうだ! あのゴーレムの頭らへんから飛んできたように見えたぞ!!』


 ゴーレムによる急撃でパニック状態に陥る民衆。

 ゴーレムの頭をよく見ると、そこには人間サイズのゴーレムが数体立っていた。

 今の投石はあのゴーレムたちによるものか!


「ゆ、ユーヤ! 逃げようよぉ~! こ、殺されちゃうよ~!!」


 エルが涙目になって俺をゆすってくる。

 襲撃の目的は分からないが、これではっきりした。

 あの巨大ゴーレムは、やはり俺たちの敵だ!!


「落ち着くのじゃ、皆の衆!!」


 ファブリスの声はもはや届かない。

 民衆が作り出した波はすぐに大きなものとなり、津波のように右へ左へと押し寄せる。


 しかし、突発的に発生したその大波は、1人の声によって、まるで氷結したかの如く静まった。



『うるさいうるさいうるさぁぁぁーーーいッッッ!!!!』



 キーンという音割れを交じえ、拡声器を伝った大きな声が西門の方から響く。

 耳の中を切り裂くような金切り声に、民衆は思わず耳を塞いだ。

 風がしびれるような爆音に、誰一人として動けない。


『ぐわぁ! うるせぇ!?』

『ゴーレムが……しゃべった!!?』


 違う、これは……。

 ゴーレムの頭上で何者かが声をあげている!


 民衆の動揺が収まらぬ中、再びゴーレムの頭上から拡声器が鳴り響く。


『アトラス王国のみんしゅーよ! よーく聞け!! わたしはこの地域を治める、やみギルド”のしゅりょー? ドンだ! いや、ボスだッ!!』


 どっちでもいい気がするが。

 というか、今闇ギルドって言ったか!?


『お前たちがこーげきされた理由はわかるな? それは――』


 どこか舌足らずな声の主は大きく息を吸う。


『わたしを怒らせたことだーーッッ!!』


 そして、音割れ放題に怒鳴り散らした。

 耳を塞いで耐える民衆。

 更に声の主が続ける。


『お前たちがわたしのけーかくを邪魔したせいで、この前の会議でボスのボスに怒られちゃったじゃないか!! ムキィーッ!!』


 拡声器越しでもわかるくらいに地団駄を踏んでいる。

 計画とは何のことかわからないが、とにかく相手は相当怒っているようだ。


『だからわたしは決めた!!』


 声の主は一旦息を整えると、


『やみギルド”バタフライテロル”は、お前たちにせんせんふこくする!!』


 と、声高らかに言い放った。


 宣戦布告。

 その言葉に民衆の動揺が広がる。


『宣戦布告? え、あの声の子が?』

『もしかして、あのゴーレムも超手の込んだイタズラなんじゃねえのか?』

『いや、もしかしたら人質という可能性も……』


 しかしその動揺は、ゴーレムの攻撃によるものでも、闇ギルドからの宣戦布告よるものでもないようだった。


 そう、何よりも民衆を驚かせていたのは、


『ぜったいぜったいぜったい! ゆるしてやらないんだからなーッ!!!!』


 その声の主が、闇ギルドという語句からは全く連想できないような……幼げな少女のものだったことだ。


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