底辺冒険者のロマン溢れるパーティー改革②
「ていうかそもそも、わたしたちのパーティーってただでさえ弱いのに巨乳縛りなんてしてる余裕あるの?」
エルが真顔で話題を切り替える。
「いきなり正論を言うんじゃない。冒険者なんだから常にロマンを抱け」
「パーティのバランスを考えるなら男1人女3人の状態をいち早く解消したいところですね。ユーヤが不埒なことを考えているのがわかりましたし」
ランも加わる。
アリシアは……
「へへ……。おっぱいおっぱい……」
天国へと旅立ったようだ。
「勇者ライオネルのパーティーだって男1人に女4人だっただろうが! 男女比なんて関係ない!」
俺がそう言うと、急にランが真面目な顔になる。
「それがそうとも言えないのです」
「どういうことだ?」
「師匠からよく旅の土産話を聞かせてもらっていたのですが……」
「師匠というのは、魔王討伐を成した勇者パーティーの1人、メイメイのことか」
不退転・メイメイ――”数々の武勇伝を持つ勇者パーティー生粋の武闘派。
普段の戦力外っぷりを見ているから忘れがちだが、ランはあのメイメイの弟子ということになる。
「はい。そのメイメイ師匠が仰っていたのは、勇者ライオネルを巡って、他のメンバー内で色恋沙汰から刃傷沙汰に発展したという何とも血生臭い話で……」
身を震わせて語るランからは、その恋の戦争がどれだけ激しい戦いであったかを想起させる。
あの伝説の勇者パーティーと言えど、やはり人間なのだなぁ。
まさかそんな裏話があったとは。
「色恋沙汰……か」
ということは、アヤメもライオネルのことが好きだったのだろうか。
あんな宙ぶらりんな奴が恋する乙女に変身するとは到底思えない。
「勇者パーティーの裏話はあとで聞かせてもらうとして、まぁその程度の障害なら何の心配もいらないだろう」
「というと?」
首を傾げるランを横目に、俺はエルに1つの質問をする。
「エル。俺と付き合うことになったらお前はどうする?」
「外に出歩かなくなるかな。あと友達がいなくなる」
悩む間もなく即答。
天真爛漫なエルのものとは思えない無表情と異常な声のトーンの低さから、それが冗談でないことが伺える。
「な? 言った通りだろ?」
ランの方に向き直る。
「そんな自慢げに言われましても……。それはそれでチームワークに支障が出そうな気がするのですが……」
1番に長い付き合いであるエルがこうなのだから、色恋沙汰などにはならないだろう。残念なことに。
「あ、あの〜……」
その時、ランに抱きとめられていたアリシアがおずおずと顔を出した。
いつの間にやらこちらの世界に戻ってきていたらしい。
「前衛後衛の面から考えても、前衛はランさん1人なので、バランスが悪いと思います……」
「なるほど」
確かにアリシアの言うとおりだ。
ということはこのメンバーだとやはりエルが――
「じゃあやっぱりユーヤのせいでバランスが悪くなってるじゃん!」
「なんでだ!?」
エルがビシッと指を指してくる。
アリシアにならまだしも、同じ底辺冒険者のエルに言われるのは心外だ。
「だってユーヤ、前衛か後衛かわかんないんだもん!」
「ばっかお前、俺はどう考えても後衛だろうが。能力的に!」
俺のフェイカーの能力は戦闘向きじゃないのだから当然後衛に決まっている。
「ではユーヤは後衛で何ができるんですか?」
ズイッと顔を近づけるラン。
それに続いて、エルとアリシアも顔を凄ませながら近づく。
し、失礼な。俺ができることなんて……
「後方で……」
「「後方で?」」
「いち早く逃げて応援を――」
「はい。じゃあユーヤの代わりを探すってことで」
「「はーい」」
エルがポンと手を叩くと、アリシアとランが快く返事をした。
アリシアまで!?
「ま、待てお前ら!! 今のは冒険者ジョークだって! 冒険者ジョーク!!」
おどける俺を無視して3人が歩き出す。
「アリシアちゃんはどんな仲間が良い?」
「そうですね。人を胸の大きさで判断しない人が良いです」
「ですね。大体、胸のバランスを考えるというならユーヤが1番足手まといですし」
「「たしかに!」」
わざとらしく笑いながら3人仲良く歩いていく。
俺を置き去りにしたまま、とうとうギルドハウスの中に入っていってしまった。
広場の真ん中でライオネル像とともに立ち尽くす。
「まあとりあえず……」
自分の薄い胸板に手を当てる。
「腕立て伏せから始めるか……」
俺は無乳脱却を心に決め、慌てて3人の後を追いかけるのだった。




