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底辺冒険者のロマン溢れるパーティー改革①

 太陽の光が真上から燦々と降り注ぐ。

 雲1つ見当たらない青空と穏やかに吹く風が心地よい。


「よし。全員揃ったな」


 人もまばらなギルドハウス前の中央広場。

 その中心を飾る、勇者ライオネル像の前でメンバーの点呼をとる。


「皆を集めたのは言うまでもない」


 俺はそう言いながら、1列に並ばせたパーティーメンバー――エル、アリシア、ランを順に流し見る。


「わかるな、エル?」


 言うまでもない……とは言ったものの、正直不安なのでこの中で1番心配なエルに聞いておく。

 万が一パーティー間で意思の疎通ができていなければ、リーダーのこ権に関わる――


「もちろんわかってるよ! アリシアちゃんとランちゃんの歓迎パ――」


「メンバー集めだ」


 今のはノーカン。

 エルに話を振った俺の凡ミスだ。


「ちょ、ちょっとユーヤ! 最後まで言わせ――モガッ!?」


 鬱蒼しく詰め寄るエルの口を食べかけのパンで塞ぐ。

 口に詰められたのが食べ物だとわかると、エルはおしゃぶりを咥えた赤子のようにおとなしくなった。

 食い意地だけは立派だな、ほんと。


「ラン。なぜメンバー集めをこのタイミングで行うかわかるか?」


 幸先悪く躓いたが、気を取り直して今度はランに聞いてみる。

 話を振られたランはしばらく考えこんだあと、


「戦力は多いに越したことはないからでしょうか……?」


 と、自信無さげに答えた。


「半分正解だ。だが、戦力は多ければいいというものではない」


「…………?」


 疑問符を浮かべるランに、俺はたっぷりの哀愁を込めて口を開く。


「先の戦いでお前たちの目に余る役立たずっぷりを見せつけられ、俺は気づいた……」


 そう……



「このパーティーには、まともなやつが俺以外いないということにッ!!」


 広場に響く大声。

 それと同時に、噴水をつついていた鳥たちが一斉に飛び立つ。

 その鳥と同じく驚いたままの3人に、俺は睨みを利かせつつ続けた。


「ハチミツ狩りの一件、忘れたとは言わせない。エルは敵前逃亡、アリシアは何もしてないのに戦闘不能、ランは敵に攻撃するどころか自分に攻撃する始末! ハチ1匹満足に倒せないパーティーなんて聞いたことがないぞ!」


「う……ごめんなさい……」


 泣きそうな顔をフードで隠すアリシア。


「それを言われると立つ瀬がありません……」


 申し訳なさそうに顔を逸らすラン。


「モグォ……」


 パンが詰められた口から奇妙なうめき声を出すエル。


「本当はすぐにでもパーティーを解散させたいところだが、そうもいかないのが現状だ。アリシアは能力自体は優秀だし、ランも肉体派という面でまだ使いようはあるからな。今回だけは多目に見よう」


「モゴモゴ?(ねぇねぇ、わたしは?)」


「だがこのままではまともにクエストをこなせないのも事実。……そこで今回はバランス重視でメンバーを勧誘する」


「バランス……ですか?」


「そうだ。ただ単に優秀なメンバーを集めるのではなく、パーティーの弱点をカバーする適確な補強が必要だと考えている」


 単純な強さというよりも、この個性豊か過ぎるメンバーを諌めるだけのマトモな感性を持った冒険者が欲しいところだ。


「なるほど。ユーヤの考えも一理ありますね」


 ランが納得したような頷きを見せる。


「ですが、どういったように仲間を募るのでしょうか? ひとくちに冒険者といっても数多くいますし、手当たり次第というのも非効率な気がしますが……」


「そこはぬかりない。今回俺は、新メンバーを募るにあたって3つの判断基準を設けた」


 そう言って、俺は3本の指を立てた。

 立てられた指に皆の視線が集まる。


「その判断基準というのは……①公私ともにマトモであること、②ある程度冒険者としての能力を持っていること、そして――」



「――③胸が大きいこと、だ」



 一瞬の静けさが場を覆う。

 俺が条件を言い終えても、メンバーからの反応は無い。

 きっと、俺が存外まともな条件を提示したから呆気に取られているのだろう。


「ごめんユーヤ。最後がよく分からなかったんだけど、その、胸って……ナニ?」


 パンを飲み込んたエルが聞き返してくる。

 まったく、物分りの悪い奴め。


「アホのお前のためにわかりやすく言い変えてやろう。胸とはつまり――おっぱいのことだ」


「いやそこはわかってるんだけど!?」


「では何がわからないというんだ?」


「おっぱいの大きさとパーティーのバランスに何の関係があるのかってこと!」


 ブンブンと両手を振って暴れるエル。


「ハッ。そんなもの……」


 俺はエル、アリシア、ランの順にそれぞれの胸部を流し見ながら言う。


「美乳、微乳、美乳ときたら次は巨乳だろう。バランス的に」


 巨乳のメンバーがいないというのは由々しき事態だ。

 あのいけ好かないレオンのパーティーにはものすごいのがいるしな。

 対抗心も燃えるというものだ。


「どこのバランス気にしてるの!?」


 エルが顔を赤くして、マントで体を覆い隠す。


「同じ言葉を3つ並べているはずなのに、アリシアを見る目だけ異様に残念そうなのは何故ですか……」


 ランが呆れた視線を送ってくる。


「え、残念そうだったか……?」


 紳士らしく平等に扱ったつもりだったのだが。

 やはり深層意識はごまかせなかったらしい。

 発育の良いエルとランに挟まれていると、どうしてもアリシアの平らな胸部だけが悪目立ちしてしまうのだ。


「ひ、ひどいです……」


 ランに言われて気づいたのか、俺のあからさまな態度の違いに、アリシアが自分の胸に手を当てながらしょんぼりと頭を垂らす。

 顔がフードの下にすっぽりと隠れてしまった。

 う、なんだか急に罪悪感が。


「ア、アリシア……? 今のは半分冗談で……」


 何とか取り繕おうと試みる。


「じゃあ、もう半分はなんですか……?」


「もう半分? …………ハハ」


 考えてなかった。


「うぅ……」


 アリシアの顔がますますフードの中に潜り込む。


「違うんだアリシア! お前は微乳だが美乳でもある……いや、美乳だが微乳? ……どっちだ!?」


「どっちでもいいでしょ」


 しどろもどろな俺の慰めに、エルのツッコミが横から入るが、気にせず続ける。


「つ、つまりだな! アリシアは乳においてはむしろ最強格なんだ!」


「さいきょう、かく……?」


 アリシアが頭を少し持ち上げ、フードの中から小動物のような視線を上目遣いで送ってくる。


「そ、そう、最強格! 例えるなら美乳は火竜サラマンダー、微乳は水竜リヴァイアサンってとこかな、うん! この最強の2体が合体したということは、アリシアがまさに無敵のおっぱいを持っているという証明であり……」


 俺が口から出任せで何とかアリシアを丸め込もうとしていたさなか、エルが頭に疑問符を浮かべながら口を挟んできた。


「ん? でもそれって火と水で打ち消しあうから、結局なんにも無くなっちゃうんじゃ……」


「おいそこ! 余計なことを言うな!」


「う、うぅ……やっぱり私って……無……」


 フードの中で咽ぶアリシア。

 まずい! 余計にアリシアを悲しませる結果に!?

 フォ、フォローしなければ!



「無ではないぞ! 微はある! 微は!!」



「微…………ぐすっ」


 泣き出してしまった。


「ユーヤ! エル! なに追い打ちかけてるのですか! まったくもう!」


 そう言って、俺たちのやり取りを見ていたランが放心しかけのアリシアを優しく抱き締める。

 身長差がある分、アリシアの顔はランの豊満な胸部に吸い込まれるように収まった。


「気にしなくていいですよ、アリシア。女の価値は何も胸の大きさだけで決まるものではないですから」


「あ、柔らかーい。アハハ、アハハハハ……」


 自分には無い膨らみの感想を半笑いで述べるアリシア。

 ランの慰めはその耳には届いていないようだった。


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