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rainy days  作者: haruki
episode1 - Cmaj7 -
15/18

14.「完全にオフ。色んな意味でオフ。」

 その日も凉はきれっきれだった。

「あのさ、何で私は猫になれないんだろうか。」

「凉、何言ってんの?」

 水樹にも流石に理解できなかった。

「いや、だからさ猫目線で曲を書きたいんだけどさ、どうにか猫になれないかなと。」

「目線はいいけどさ。ほら、僕ら人間じゃん?」

「だから?」

 理屈じゃなかった。

「分かった。凉、VR使って猫になれるゲーム探してみる。」

「その発想はなかった・・・天才かよ・・・。」

 実際今の時代ならば少し考えれば出てきそうな案ではあるが、天才で異端であるが故に、普通の考えに至らないのが凉なのだ。

 ピンポーンと、インターホンが来客を知らせる。

「三ヶ尻でーす!!!いますかーーーー!!!!」

 防音なはずのドアを貫通するほどによく通る声だった。

「花火ちゃんなら私が出るよ。」と珍しく凉が立ち上がった。

数分後、二人が小さい段ボールを一つずつ持って殺風景なリビングに来た。

「えっと・・・三ヶ尻さん、これは?」

「あ、これは実家から大量にジャガイモ送られてきたのでお裾分けです。」

「すごい嬉しいけど、こんなに食べれるかなぁ・・・。」

「それに関しては私に案がある。」

 もう、自信たっぷりなのが手に取るようにわかる表情で凉が言う。

「今から我が家で、『レコーディング頑張ったね雨水凉、お疲れ様ジャガイモパーティ』を開催します。」

「お前、三人でパーティって。」

「すみません、私もいます。」

 気付いた時には黒川が背後にいた。

「・・・。」

「あの・・・笠原さん?」

「・・・。」

「笠原さーん?あの、雨水さん、笠原さんが反応してくれないんですけど。」

「黒ちゃん、水樹目を開けたまま気を失ってる。」

「え・・・また、顔ですか?。」

「うん。紛れもない黒ちゃんの顔が水樹を凍らせたんだ。もう、それはユニークスキルだね。もしかして黒ちゃんスタンドとか使えるクチ?」

「いや、どこのディ〇ですか。」

 声優なだけあって、黒川はこの手のネタについてこれる。

「まぁ、水樹はほっといて」

「ほっとくなや!!!!!!!!」

 ぜぇぜぇと肩で息をしながら水樹が復活早々突っ込む。

「今回は早かったね。」

「流石に段々と怖さには慣れてきたよ。人間は適応生物だからね。」

「そうね。まぁ、水樹のことは置いておいて、何作ろうか。」

「あ、私今みんなが話している間に食べたいものまとめてみました。」

 三ヶ尻がさっとスマートフォンのメモ帳を全員に見えるように差し出す。メモの中身はフライドポテト、キッシュ、じゃがバター、カレー、ジャーマンポテト、肉じゃが、ポテトサラダと記入されていた。

「おお、パーティっぽい!」と凉がぴょんぴょん跳ねて喜ぶ。

 凉が跳ねている最中に、水樹のほぼ新品のスマートフォンに斉藤から着信があったが、水樹はフルシカトだった。実のところ、水樹も『レコーディング頑張ったね雨水凉、お疲れ様ジャガイモバーティ』はまんざらでもなかったのだ。本音は『本当によく張ったね笠原水樹、お疲れ様パーティー朝までビール編』を期待していたのは言うまでもない。

 「じゃあ、キッチン借りますね。」と立ち上がった三ヶ尻に凉が立ち塞がり、どや顔で言う。

「おっと、ここからは我々のターン。もとい、全部私達のターンだよ。水樹!」

「ふう…やり…ますか…。」

 気づけば不敵な笑みを浮かべ凉の隣にいる水樹。

「お二人って料理出来るんですか?っていうか何故水樹さんもそんなにノリノリなんですか?」

「水樹の実家は小料理屋で小さい頃から英才教育(仮)を受けていたからね。そして私に関しては完全に趣味だよ!!!だから、ここは私たちに任せて二人はテ◯リスでもして待ってて!!!」

「不摂生な食生活だとばかり勝手に思っていたので、色々と不安ですが二人のただならぬどや顔により、謎の説得力が…。」

「やっぱオーラってやつ出ちゃうよね。」

「いや、そこまで出てないですけど。」

 謎の気迫なら出ていた。

 その後、程無くして制作以上にシンクロした二人の手際のよさにより、テーブルにじゃがいも料理達が並べられた。四人でテーブルを囲う。ちなみにこの日は全員ノンアルコールである。

「まあ、うちも賑やかになったね。」

 ぽつりと凉が洩らす。ずっと二人だった部屋に一緒に食事をする相手が二人も増えたのだ。

「まぁ、正直三ヶ尻さんも、黒川さんも、柔らかいタイプの性格で良かったよ。」

「そうそう。あり得ないくらいズカズカ話しかけてくるうちの事務所の新入社員みたいなのだったらどんな手を使っても退職してやったのにね。」

「何でお前が退職する側なんだよ!」

「まぁ、小さいことは寝る前に考える位にして、今は今日の主役の私を誉めちぎることに集中してよ。ほら、猫みたいに可愛いとかさ。」

「あぁ、その話題まだ生きてたんだ。」

 その時、黒川の携帯が鳴る。画面を見て「えぇ!?」とその低い声でリアクションを取り真剣な顔で三人に告げた。

「妻が妊娠しました。」

「父が全身脱毛を決意したそうです。」

「「「…。」」」


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