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戦場は白麟姫のしらべ  作者: 三茶 久
第1章 星合、鈴の音とともに
14/25

黒の虚像(2)

 夏絶が列の先頭を陣取ると、周囲の兵たちが顔を見合っては左右へと移動する。

 他の部隊との間にしっかりと溝が出来てしまったようだが、夏絶は気にするどころか、ふん、と息を吐くだけだった。


「そうだ。私に近づくな――死にたくなければな」


 まるで味方を斬ることも躊躇わないと言わんばかりに、夏絶は冷たく言い放つ。

 確かに夏絶の得物は人が扱えるとは思えぬ長剣。荒々しいその剣技も、周囲がすべて敵であるからこそ、真価を発揮できると言える。


 前を見据える夏絶の顔が厳しくなった。

 ずらりと、歩兵が横に並ぶ最前線。基準線を隔てて向こう側もまた、似た陣をとっているのがわかる。それが、徐々に近づいてくるのが目視できる。舞い上がる砂埃は、戦の開始を意味していた。



「向こうから仕掛けてきたか――」


 空を土色にするがごとき勢い。千夜がぎゅっと杖を握りしめる隣で、夏絶もまた、長剣を構えていた。


「癪だが、その挑発に乗ってやろう。おい――そこの貴様」

北深(ほくしん)と申します。王子」

「北深か。せいぜい私の邪魔はせぬ事だな」


 北深。前線部隊を任されている将の名を耳にして、千夜は瞬く。

 北、という姓を聞いたことがない。ということは、まず間違いなく彼は姓を持たぬ者。すなわち、家を持たぬ平民なのだろう。


 艶やかな黒髪。そして柔らかな物腰は平民のそれとは到底思えない。

 尊大な夏絶の態度に腹を立てるわけでもなく、彼を言う立場を素直に受け入れているのは、北深がそれなりに冷静で穏やかな人柄だからだろう。

 立ち振る舞いだけでその教養深さがうかがえるのは、さすがは前線を任された蔡将軍直属の将とも言える。


「王子の援護は致しますよ。ただし、あなた様は我が部隊の一部。単騎で飛び出るのは控えていただこう。――白麟姫もいらっしゃる。万一のことがあってはいけない」


 逆にしっかりと釘を刺されてしまい、夏絶は目を細めた。

 それを横目に、北深は己が剣を天へと掲げる。同時に、高らかに声を上げた。


「皆、いくぞ! イザリオンを迎え撃つ……!」





 イザリオン帝国軍にとっては、一見、黒忌が戦を仕掛けたように見えるだろう。

 睨み合いの続いた両陣営。その均衡が崩れたと同時に、イザリオン陣営に迫る部隊がひとつ。

 前線を走る北深の部隊で、頭一つ飛び抜けたその先頭。風雅な風貌に似合わぬ長剣を構えた彼の存在を知らぬ者などいなかった。


「黒の禍!」

「――黒の禍が出た! 来るぞ!」


 イザリオン帝国の言語。この場で千夜にだけは――もしかしたら夏絶もかもしれないが――おおよそ、彼らが何を叫んでいるのか理解できる。彼の国の言語を理解できる者など、専門の職以外では、王族の中で数えられるほどしかいない。

 千夜の場合は、半ば強引に叩き込まれたからこそ。“黒の禍”という意の通り名をしっかりと聞き取り、千夜は静かに相手を睨み付けた。


 ざわめきと同時に、敵陣営は一斉に武器を構える。

 その距離を詰めると嫌でもわかる。嘉国のそれよりはるかに丈夫な鎧を着込んだ兵士たち。歩みは遅いが、生半可な剣は通用しないだろう。


 本来ならば怯むはずの場面だが、夏絶は慣れた様子で、ただ目を細めるだけだった。



「散らす! 白麟、お前は少し待て! ――沙紗(しゃしゃ)!」


 命令しながらも夏絶は止まるつもりはないらしい。

 夏絶の代わりに、紫みがかった三つ編みの娘――沙紗が、千夜の進軍を手で制する。

 もちろん戦場は彼らの領域。千夜とて邪魔するつもりはない。


 だから、歩調を緩めて、杖を構えた。前線からは少し遠い。

 もう少し前に出たいところだが――と、足踏みしていると、千夜の周囲を護るように兵が取り囲んだ。どうやら北深も、自らの兵を千夜に付けてくれたらしい。



「……まったく。しょうがない王子だ」


 そうして苦笑しながら、北深は千夜の隣に並ぶ。先ほども前に出るなと言われていたはずなのに、すでに夏絶は血気盛んに飛び出してしまっていた。


「相変わらず、人間業とは思えない」


 もう少し夏絶が冷静になるべきなのは、千夜とて同意する。

 しかし、彼の圧倒的な強さを見ていると、一概に単騎で攻めるなと言えなくなりそうで、口を噤んだ。彼は単騎で完成してしまっている。

 彼が周囲と足並みを揃える必要などないことは一目瞭然。むしろ、歩みを揃えさせる方が、彼の邪魔になるのではと思えてしまうほど。それほどまでに、黒忌である夏絶は、戦場において特別な存在だった。



 斬るより払うに近い。剣を振るその勢いで、人の山を吹き飛ばす。刃こぼれひとつおこさぬ彼の剣は、どんな名匠が打っているのかと目を疑う。


 そもそも、彼の動きが人間とは思えない。

 いくら千夜の舞術で能力を向上させたとはいえ、普通の人間は彼のようには動けない。

 強化された己の身体に、頭がついていかないのだ。少なくとも、そのちぐはぐな身体に、慣れるまでの時間を要するはず。


 しかし夏絶は違った。

 一気に敵を切り払うのが今までも当たり前だったのだろう。彼の意識と身体に、誤差がない。冷静に敵の動きを読み取っては、嫌な切り返し方を見せている。


「本当に、でたらめな強さだな」

「彼の方は、黒忌、ですから」


 千夜の呟きに、北深がぽつりと答える。その瞳はどこか遠くを見ているようだった。


「……かつての雷王様も、そうでした」

「見たことが?」

「少し」


 北深はそう言って、くしゃりと苦笑いを浮かべた。

 千夜とて、立場上、雷王の剣技も何度か見たことがある。他の王族とは明らかに違う、神に愛されたとしか言いようのない、突出した身体能力。

 その愛された結果が忌子の呪いなのだとしたら笑えないが、人とも思えぬ身体能力はやはり特別なものなのだろう。


「だが、王子は、将としてはまだまだだ」

「それは」

「周囲に目を向けられるようになれば、よい将となるでしょう。しかし、彼の才能がそれを邪魔している。――あとは、周囲の弱い心も、なんとかせねばなるまいが」

「え?」

「……いや」


 憂いを帯びた顔をくしゃりと笑みに変えて、北深は前を見据える。

 前方では、変わらず夏絶の部隊が奮闘していた。しかし、彼の部隊はやはり、他の皆と溶け込んでないように思う。

 明らかに夏絶の周囲だけ層が薄い。

 戦場でまで、まるで腫れもの扱い。足並みが揃わないのは、確かに夏絶ひとりが悪いわけではなさそうだった。



「遅れはとれないな。我々も参加しましょう。姫は、少し後ろからどうぞ。私は王子の周囲を確保しましょう」

「……北深、世話になる」

「いいえ。あなた様の兄君が我々の部隊に納まらぬことは百も承知。ならば、我々もその力を引き立てるまで」


 まるでそれが己の役割と言わんばかりに、北深は手をかざした。

 北深は戦を分かって(・・・・)いる。だから、夏絶の様子に苛立つこともなく、すっと部隊全体に指揮を出す。夏絶を中心に左右の遅れていた歩兵が前に出て、じりじりと戦線を押し上げ始めた。


 鼓舞された兵たちが、連なり、一気に前に出る。

 北深の指示が後押しし、夏絶の開けた穴に、部隊の者が続く。もちろん他の嘉国兵たちも。


 風が嘉国側に吹き始める。数の差はあれ、勢いだけなら今の夏絶が作り出している。これに乗じない手はない。




「……すごい」


 さすがは蔡将軍の将というべきか。

 夏絶の圧倒的な力はもうとっくに認めてはいるが、一方の北深は、冷静に戦場を見渡して、兵の偏りを調整していた。己が戦いながら簡単にできることではない。

 蔡将軍が信頼するだけのことはある。と瞬いていると、沙紗が厳しく目を細めた。


舞術(まじない)の効果はどれくらい保ちますか?」


 沙紗もそろそろ頃合いと見たのだろう。他の者に聞こえぬようにと、千夜に耳打ちをする。


「残念ながら」


 千夜はわからない、と正直に告げた。

 千夜の髪色の変化で言うと、過去の経験から、もう少しの時間なら保つことはわかっている。

 しかし、普段とは場所も環境も違う。千夜も己の力を直接戦で使用したことなど、前回が初めてだ。何度か試さないことには、明確な予測など出来はしない。


「先日の戦は、予想より効果が短かったように感じたから。黒日だったからかもしれないが」


 自分のことすらわからない。それが少しもどかしい。

 くしゃりと苦笑して見せて、それでも千夜は前を見た。分からなくとも、自分がいるのは戦場だ。失敗することなど許されない。

 千夜に出来ることは、途切れることなく皆に力を分け与えること。そのためだけに、こんな戦場のど真ん中に出てきたのだ。


「行こう。皆が移動する――」

「はい、では参りましょう」



 千夜はぎゅうと杖を握りしめて、前を目指す。シャラン、シャララン、と遊環を鳴らしたところで、皆の視線を感じた。


「白麟姫!」

「姫様!」


 千夜の存在に、周囲の兵が一斉に沸き立つ。そんな彼らに笑みを浮かべ、千夜は声高らかに宣言した。


「皆、行くぞ!」

「応!」


 千夜に直接武器を振るう力はない。後方に隠れて、檄を飛ばすことしか出来ようもない。

 それでも、これは千夜にしか出来ぬこと。



 前線を押し上げると同時に、相手も後ろに退きはじめているようだった。

 潮が引くように、ざっと前線が移動する。その動きの奇妙さに、千夜は目を細めた。


「敵兵が、下がってる?」

「陽動でしょうか」

「こんなに簡単に、退くものなのか?」


 不審に思いながらも、千夜は前に進む。基準線までと言う北深の指示で、皆も真っ直ぐ東へ進む。

 すると前を行く夏絶が一度だけ振り返り、声を上げた。



「白麟。基準線を越える(・・・・・・・)! 気を付けろ!」


 そうして夏絶は、一気に跳んだ。彼に続くように、彼の部隊の者たちも。


 そして、彼らの後ろを追う千夜も、いよいよ目にした。

 央蛇の中央。涛蛇山脈を東西に斬り割くような大地の裂け目。幅は五尺(=約一二〇センチメートル)ほど。

 底の見えぬ深い深い溝が、戦場を真っ二つに裂いている。


(これが、基準線――)


 その大きな亀裂。これは昔、地の底を蛇が走ったと言われしものだった。

 大蛇が地の底を裂き、周囲の大地は隆起した。それが大地の裂け目と言われる基準線と、涛蛇山脈の起こりだと。

 大陸を東西に切断し、陸地での行き来を不可能にした。――ここ、央蛇以外では。

 央蛇の中央部でようやく、人が跳び越えられる幅に縮まるのだが、山中では、とても渡れるような距離ではなくなるらしい。どこまで調査されたものなのか、事実は分かるべくもないけれども。



「白麟様! 跳びます!」

「ああ!」


 沙紗の合図で、白麟も地面を蹴る。

 ふわり、と自分の身体が宙に浮いた瞬間、底なき裂け目の奥底から強い風が吹き上げてきた。

 熱砂の荒野とは思えない底冷えのする冷たさにぶるりと鳥肌が立つ。

 しかしそれもわずかなこと。無事にその大きな裂け目を跳び越えては、再び大地に足をつけた。


 大人なら跳べない距離ではないが、それでも何かの拍子に落ちると思うとぞっとする。

 底が見えぬあの場所に落ちて、助かるとも思えない。

 戦場は死と隣り合わせというのは当たり前のことだが、あのような、自然の生み出した罠にかかって命を落とす可能性もあることを思い知らされる。




 敵兵も、基準線の東側で待ち構えているようだった。左翼、右翼が大きく反り、嘉国軍を両翼で挟み込むような形をとる。

 しかし当然北深も先読みしていたらしい。彼の配下の兵たちが、簡単に包囲させてたまるかと奮闘する。

 逆に言うと、北深以外の部隊は、未だ戦場で遅れをとっているわけだが。


「王子! それ以上の深追いはなりません! 今は基準線を確保すればいい」

「私に指図をするな!」


 一部隊だけが突出する形は良くない。もとより、嘉国軍は敵陣を攻めるつもりなど毛頭無い。防衛の構えをとらんと、北深は全部隊に指示を出す。


 夏絶も口では抗うものの、それ以上前には進もうとはしなかった。発する言葉よりは冷静でいられたらしい。

 しかし、それも僅かな合間のこと。




「夏絶様!」


 悲鳴に似た沙紗の声に反応して、夏絶は剣を振った。

 ガシンっ、という鈍い音に反射して、千夜も目を見開く。


 圧倒的な力を見せつけていた夏絶の長剣。受け止められる者などいないと思っていたのに。目の前に立つイザリオン帝国軍のひとりが、それを易々と受け止めた。

 鈍色の鎧を身に纏い、漆黒の色した短い髪を逆立てた男。イザリオン帝国軍の騎士のひとりが、夏絶と互角に渡り合っている。


「……来たか。ジャック・シュヴァディエ」

「久しいな、黒の禍」


 イザリオンの言語で言葉を交わしあい、二人はぎり、とにらみ合う。

 長剣と大剣。重すぎるそれらの武器をぶつけ合う二人の空間に入っていけない。


 人とは思えぬ夏絶の剣に、互角に渡り合える騎士がいるなど思ってもみなかった。

 黒い髪に黒曜石の二人。同じ色彩なのに、二人の風貌はまったく似ていない。

 浅黒い肌に、ごつごつとしたジャックの顔は、荒々しさに満ちている。無骨な鎧は、他の騎士とは違い家紋のひとつもなく、他の兵たちも遠巻きに彼を見ているようだった。



(まるで、畏怖の対象)


 鳴弦の街で見た、夏絶のように。触れれば斬れる抜き身の刃のように、ぎらぎらとした彼の目は、千夜とて萎縮してしまいそうだった。

 圧倒的な力を持っていたはずの夏絶が、初めてまともに戦う様子を見て、胸がつぶれる心地すらする。


(わたし……彼の圧倒的な力に、どこか、安心してたのかもしれない)


 しかし、ここは、戦場。

 誰も、命の保証なんて、もてない。



 ざらり、と胸によぎった不安を払いきれない。ぎゅう、と杖を掴んでは、千夜は周囲の様子を見渡した。

 まるでジャックの相手は夏絶に任せたと言わんばかりに、周囲に人垣が出来ている。誰も横やりなど入れる様子もなく、手助けもする様子もない。

 それも当然のことだ。なぜなら、夏絶と互角の相手に、他に誰が立ち向かえるだろうか。



 せめて周囲の憂いを断とうと北深が動く。しかし、北深が視線をぐるりと移動させたとき、咄嗟に彼の表情が変わった。

 西に目を向けては、目を見開く。それにつられて、千夜もまた、同じ方向に目を向けた。


 そして、千夜は気がついた。

 自分たちの後方――なにやら、自陣が騒がしくないだろうか。


「一体、何が――」


 何か、嫌な予感がする。

 千夜の声に遅れて、銅鑼の音が千夜の耳に届いた。その数は、二。

 突然の後退命令に頭が真っ白になり、北深の指示を仰ぐ。彼もまた何が起きたのか理解できずにいたようだが、その命令に従わないわけにもいかない。一体何事だと吐き捨てるように言ったものの、すぐに皆に指示を出す。


「後退する! 皆、退け!」


 北深の命令に、皆が戸惑いながらも反転する。

 西の方からただよう、ただ事ではない空気――しかし、何が起こっているのかここまで伝わってこない。それがまた不安になり、千夜は今度は夏絶の方に目を向ける。


 皆が撤退を始めたというのに、夏絶はそんな余裕なさそうだった。

 ジャックから目を逸らしてはならぬと、その長剣を握りしめる。


「――高夏絶! 退却だ!」


 千夜の声も、届きはしなかった。

 目の前のジャックの攻勢に、押し負けぬようにとただただ集中している。そして、ジャックを止める役目は夏絶以外の何者にも交代することなどできない。


 冷たい汗が流れる。このままでは、夏絶は戦場に取り残される。いくら夏絶が一騎当千のつわものとて、しのぎきるには限界がある。

 しかし、誰も彼の退却を助けようとする者など、いなかった。

 それも仕方のないことといえばそれまでだ。彼もまた、この部隊の他の者に目を向けることはしなかったし、周囲の兵たちも、夏絶をどう扱ったものかと考えあぐねているだけだったから。

 夏絶の部隊は、他の者たちとまったく溶け込めてなどいない。

 たまたまそこに居合わせた、災害。味方ゆえ、彼らを傷つけはしないものの、同じ人としては見ることが出来ないのだろう。



 夏絶の部隊がどうにか奮闘する。

 しかし、明らかに周囲の味方兵の数が減り、多勢に無勢となっている。


「王子!」


 撤退をしようと北深が声を荒げるが、夏絶はそれすら聞き入れるわけにはいかなさそうだった。背を向けたら、斬られる。それが夏絶には分かっているのだろう。

 息が荒くなり、集中しようと、夏絶は更に腰を落とす。


「高夏絶! 戦うのか!?」


 目の前のジャックを何とかせぬ限りは、撤退など、出来はしないのだろう。それに気がついたとき、千夜ははっとした。

 二人の勝負には、誰も手出しは出来ないはずだった。下手に手を出すのは、邪魔にしかなりえないのだから。


(でも……そうか。わたしが。わたししか――)


 だからこそ、千夜は杖を構える。


「高夏絶、わたしが援護する!」


 正直、いまだ夏絶という存在を、素直に見ることなど、出来ない。立場上危険だというのに、千夜に近づく彼を、正面から拒否することも出来ない。

 それでも、戦場では、千夜は――。


「高夏絶! 君の戦いを蔡将軍にみせてやれ!」


 ――全面的に、夏絶を支援すると決めていたのだから。



 だから千夜は踊る。

 その身を晒して、武器すら持たずに、ただひとり、戦場には不釣り合いな舞を踊る。

 杖を振って白紋(びゃくもん)を描いては、光を生み出す。

 どうか、無事で。どうか、護ってくれ。国だけでない、己の身を。それだけ考えて身体を動かす。

 悲鳴と怒号の阿鼻叫喚の中、彼の耳に鈴の音を届けるのだ。

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