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05話  喪失

 少女は一度生きる事を諦めた。

 一緒にいた少年が逃げる途中、化け物に喰われていた事に気付いてから。


 護ろうとしたものを容赦なく奪っていく慈悲のないこの惨状から生き残ったとしてもその先には孤独なのではないのか、希望はないのではないかと不安を覚えたから。

 死ねばこの苦しみから逃れられるのではないかと思ったから。


 自分の肩を掴んだ化け物に対して、こいつに喰われるのか、それ以外何も感じなかった。自分の人生がここで終わる。

 そう確信した時、それは現れた。


 少女の耳に届く二つの銃声と聞き慣れない呻き声。続けて、掴まれていた肩が解放される。

 振り向くと自分を喰おうとした化け物が倒れている。


 何が起こったのか理解しきれていない少女は周囲を見渡す。


 すると、空にアニメや漫画などに出てくる人型ロボットのような姿をした存在がいた。


 全身が灰色の装甲に包まれているそれはただ静かに少女――小山優理(こやまゆうり)を見ていた。この存在は自分に何かを訴えかけている、根拠はないが彼女はそう感じた。

 それは優理に背を向けて飛び去ってしまった。


 残された優理の耳に複数の足音が届くが、優理は逃げようとはしなかった。足音の正体を確認するよりも今起きている事を頭の中で整理する事を優先したため動くという選択を放棄したからでもある。


「なあ、あんた! 今飛んでった奴がこの化け物を倒したのか!?」


 どうやら、足音の正体は逃げていた人たちのようだ。

 最初に駆けつけてきた男が尋ねる。優理は小さく頷くとその場にいた全員から歓声が上がる。


「これで、俺たちはもうあの化け物たちに喰われる事は無くなったんだな!」

「あれは救世主様よ! きっと奴らをすべて倒してくれるわ!」


 その歓声の中で優理だけが他の人と異なる表情をしていた。


(今更、何で現れるの……。いるなら最初から助けてよ!)


 内側から生まれてくる感情はその存在に対する理不尽な八つ当たりである事に彼女は理解できなかった。それがどこから現れたのか分からないが、あの化け物が現れた段階でその存在がいたなら多くの人が犠牲になる事はなかった。

 どこにもぶつける事のできない想いを抱えながら優理は空を見上げる。

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