37話 久しぶりの学校 直哉視点
太陽が強く光っている。光に含まれる熱が容赦なく人々を襲う。
雑踏の中に紛れて少年はその熱に耐えながら歩く。
いつもと変わらぬ事なのに活気がないと感じるのは突然現れた化け物によって、多くの人が恐怖を植え付けられてからなのだろう。
漠然とした感想を持ちながら少年は目的地に向かって足を進める。
「はぁ~。今日からまた学校か……」
少年――日高直哉は久しぶりの訪れた自分が通う高校に足を運ぶ。
ある日、エドナと呼ばれる化け物とエドナによって産み出されたキメラが現れ、人間を襲い始めてから二週間が経つ。
直哉の通う高校の校舎は襲撃の被害を全く受けていないため、休校となっていたが、今日から授業を再開する事になった。
たった二週間だと思うのに、それが長く感じるのは自分を取り巻く環境が異常なせいなのだろう。
エドナを討伐するためにやって来た技術の神・ヴァルカンと彼が創った神創人間のクロトとアレク。
戦闘中の不慮の事故で瀕死の重傷の治療した影響で彼らの動力源である神気というものが自分の中にあるらしく、そのために政府の保護を受けている。
「他の奴らもう来てっかな?」
教室に向かいながら、ふとクラスメートたちの顔が頭に浮かぶ。キメラの襲撃以来、神気の問題もあって、誰一人会う事が出来なかった。
みんなどうしているのか、クラスの全員とまた会えるのだろうか、そんな事を考えているうちに教室の前に到着した。
(まぁ、いくら考えてもしょうがねぇな)
思考を中断し、扉に触れる。
「よーっす」
いつもの調子で教室に入る。
見てみるとクラスメートの大半がすでに教室にいた。教室にいる全員が直哉を見たため、無意識に身構えてしまった。
いつもなら適当な挨拶で済むはずなのに、予想もしてなかった反応をされるとこちらもどうしていいのか分からなくなる。
「直哉、生きてたんだな!」
困惑している直哉に一人の男子生徒が近寄ってくる。
「お、おう。久しぶりだな、崇斗。なんかみんなちょっとピリピリしてね?」
「いや~、あの化け物が来てから誰か喰われたんじゃないかってみんな不安なんだよ」
「あー、そういう事ね」
友達である北園崇斗の言葉でクラスメートの反応に納得した。
エドナやキメラの犠牲者は大勢いる。その中に自分の家族や友達が含まれている可能性もあり、襲撃から最初の登校日で誰かが来ないのかもしれないと考えてしまうのは当然なのだろう。
「てか、生きてんなら連絡くらいしろよな」
「悪い。逃げてる時にスマホ落としちまってな。しっかし、意外とみんな無事なんだな」
崇斗と話している間にまだ来ていないクラスメートが登校してくる。エドナ襲撃が嘘だったのではないかと錯覚してしまうほどに。
けれど、それは現実だという事を自分の取り巻く環境が劇的に変化した直哉は知っている。これまで過ごしたいた日常は失ってしまったと。
時計の針が八時三十分を指し、担任の教師が教室に入ってくる。それを合図に自分の席に戻る。
「皆さん、お久しぶりです。クラス全員が無事で安心しました」
教室を見渡し、安堵した表情を担任が見せる。彼が言った事は誰もが思っている事だろう。クラスの誰一人欠ける事なく、再会できたのは本当に運が良かったのだろう。
直哉以外は。
「先生、俺たちが心配でこんなに早く来たんですか?」
一人の男子生徒が手を挙げ、軽い調子で尋ねる。
「それもありますが、今日は転校生がこのクラスに来る事になりましたので、早く来ました」
担任の言葉にクラスの大勢が反応し、すぐに教室中が沸き上がる。
「先生! 転校生って可愛い女子ですか!?」
「盛り上がっている男子には申し訳ないけど、転校生は外国から来た男子です」
転校生は男子と聞いてクラスの男子はテンションが下がり、逆に女子は外国から来たという言葉もあってテンションが上がる。
「静かに。じゃあ、入ってきてもらいましょう。どうぞ」
そう言って担任は扉に向かって手招きをする。
一呼吸遅れて一人の少年が教室に入る。
騒然としていた教室がその少年の存在によって静寂へと変わる。
高身長の金髪でモデルのような整った顔立ち。教卓へと歩くその姿すらも上品で育ちの良い雰囲気を醸し出している。
まるで絵に描いたような外国の美少年が目の前にいる。女子だけでなく、男子ですら彼の姿に目を惹かれ言葉を失ったのだ。
「初めまして。アレク・マーストニーと申します。今日からよろしくお願いします」
透き通る碧眼でクラス中を見渡し、はっきりとした口調で転校生――神創人間の一人、アレクが告げる。




